デイサービス休止でフレイルが悪化!対策は生活リズムと体を動かす習慣!
大阪経済大学の人間科学部・高井逸史教授が、デイサービスなどの通所介護サービスを利用する高齢者570人を対象に、2020年5月10日~31日にかけて実施した「緊急事態宣言後におけるデイサービス利用者の健康に関する調査」の結果と、第2波に向けた予防についてアドバイスを発表なさいました。この結果とアドバイスを紹介します。(https://www.u-presscenter.jp/article/post-43986.html)
この調査は、地域包括ケアやフレイル予防の研究を行う高井逸史教授が、大阪府介護支援専門協議会堺ブロックの協力を得て電話アンケートで行いました。4月7日に大阪府で発令された「緊急事態宣言」の時期も通所サービスを継続した利用者「通う群」と、休業等により通所サービスを控えている「控える群」に分け、通所サービスを受けない場合の身体及び認知機能に及ぼす影響を分析しています。
なお、厚生労働省の調査では、高齢者のデイサービスを行う全国の介護事業所のうち858事業所の休業が報告されています。(2020年4月20日報告分)
【要介護者の家族の声】
・感染リスクを考えてデイサービスの利用を控えたが、ここまで認知症の進行などフレイルが悪化すると思わなかった。
・今回は介護できたものの第2波が到来した際は仕事を辞めないと介護できない。
【主な調査結果】
1)介護度の低い「要支援」:
「通う群」 24.5%
「控える群」32.8%
要介護度が高い「介護2」以上の場合は、「通う群」の割合が「控える群」より多かった。
要介護度が高い「介護2」以上の場合は、「通う群」の割合が「控える群」より多かった。
2)家族背景が独居の場合:
「通う群」 39.0%
「控える群」25.0%
3)家族の協力体制が「期待できる」場合:
「控える群」 28.7%
「通う群」 17.2%
ここまでの項目から、家族の介護が期待できる環境で比較的元気な方ほどデイサービスの利用を控えたことが分かります。
4)通所サービスを控えた平均日数: 38.5日
控えた人の内訳: 「すべて控えた」 84.4%
「部分的に控えた」 14.8%
5)緊急事態宣言前と「生活の充実感」を比べると、
「控える群」の場合:「減った」 16.4%
「少し減った」 21.7%
(合計 38.1%)
「通う群」の場合: 「減った」 1.8%)
「少し減った」 9.2%
(合計 11.0%)
6)緊急事態宣言前と「転倒に対する不安」を比べたとき、
「控える群」の場合:「増えた」 13.9%
「少し増えた」 21.7%
(合計 35.6%)
「通う群」の場合: 「増えた」 0.3%
「少し増えた」 5.5%
(合計 5.8%)
7)緊急事態宣言前と「物忘れ」を比べたとき、
「控える群」の場合: 「増えた」 4.1%
「少し増えた」 15.2%
(合計 19.3%)
「通う群」の場合: 「増えた」 0%
「通う群」の場合: 「増えた」 0%
「少し増えた」 1.8%
(合計 1.8%)
この5~7の項目から、デイサービス利用を控えた方で精神的充実感と体力の衰えを感じている方が約4割弱、認知機能に衰えを感じている方が約2割弱いらっしゃることが分かります。
8)「家族の介護負担」は、緊急事態宣言前と比べると
「控えた群」の場合:「増えた」 16.0%
「少し増えた」 20.5%
(合計 36.5%)
「通う群」の場合: 「増えた」 0%
「少し増えた」 4.0%
(合計 4.0%)
このように、4割弱のデイサービス利用を控えた方が体力的・精神的な衰えを感じていらっしゃるので、ご家族の負担も4割弱の方が増えたと感じていらっしゃいます。だからこそ、最初に掲げたご家族の声の切実さが伝わります。
・感染リスクを考えてデイサービスの利用を控えたが、ここまで認知症の進行などフレイルが悪化すると思わなかった。
・今回は介護できたものの第2波が到来した際は仕事を辞めないと介護できない。
・今回は介護できたものの第2波が到来した際は仕事を辞めないと介護できない。
平均38.5日デイサービス利用を控えた結果がこのようになるとは、専門家の皆様も予想できなかったようです。
【施設担当者の声】
・通所サービスを継続して利用している人はコロナの影響をあまり受けていないことに驚いた。
・認知症の悪化や家族の介護負担の増加は想定内だったが、転倒に対する不安や生活の充実感がここまで悪化すると思わなかった。
・休業要請や緊急事態宣言が解除され、介護度が悪化し介護度の区分申請が増加した。介護度の重度化予防を講じるには、事業所だけでは限界がある。行政をはじめ、自治会、民生委員など地域の協力も必要。
【高井教授による第2波、第3波を想定した今後の対策について、要介護者の家族や通所サービス施設向けのアドバイス】
(1)生活リズムを整える
通所サービスを利用していた曜日、送迎に行く同じ時間帯に自宅に訪問し、介護スタッフが直接ご本人と会話する、または家族が訪問する。決まった曜日・時間に会うことで、生活リズムを整える。
(2)自宅で身体を動かす習慣を身につける
体を動かす習慣を身につけるため、施設が自宅で簡単にできる体操のリーフレットを配布し、訪問の際に実施できているか確認する。認知機能に問題がなければ、毎日決まった時間に放送されているNHKラジオ体操番組を見ながら体操する。ご家族の支援が得られるなら、決まった曜日・時間にYoutubeをテレビに繋き、見ながら体操する。
体を動かす習慣を身につけるため、施設が自宅で簡単にできる体操のリーフレットを配布し、訪問の際に実施できているか確認する。認知機能に問題がなければ、毎日決まった時間に放送されているNHKラジオ体操番組を見ながら体操する。ご家族の支援が得られるなら、決まった曜日・時間にYoutubeをテレビに繋き、見ながら体操する。
高井教授のアドバイスが参考になれば幸いです。あなたのご両親の体力や精神的充実感が損なわれないよう祈ります。
以上