認知症不安を抱えていらっしゃるあなたに勧める本『認知症の人が「さっきも言ったでしょ」と言われて怒る理由』
わたくしの父は、アルツハイマー型認知症でした。祖母も父の兄妹も認知症でした。そのため、認知症を発病する不安を抱えています。このような背景から、この本に出合った時は、迷わず手に取りました。この厳しいけれど、光明も与えてくださる本をご紹介します。
『認知症の人が「さっきも言ったでしょ」と言われて怒る理由 - 5000人を診てわかったほんとうの話』木之下 徹(きのした・とおる)著、2020年8月刊、講談社、定価880円(税別)、ISBN978-4-06-521080-2
この本は、講談社プラスアルファ新書という新書判で、文字も大きめで218ページ。手頃で読みやすいです。けれど、耳触りのよい、安心させてくれる話ばかりではありません。
『私は、認知症の本当の姿を見ることは、認知症の本人、周りの人たちが前向きに生きる上で大切なことだと思っています。(中略)いまは自分の近しい人の心配をしているあなたも、近い将来認知症になるかもしれません。そうなったときに、ご自身の人生を絶望の淵に追いやらず、あきらめずに自分の人生の主体者として生き抜いていただくためのヒントを書きました。(後略)』(5ページより引用)
という木之下徹先生の想いが込められた本だからです。
内容は、5章に分かれています。第1章『認知症予防の真実』、第2章『認知症の”診断”の真実』、第3章『認知症という”症状”の真実』、第4章『認知症の”治療”の真実』、第5章『「認知症と生きる」真実』です。
木之下先生の仰る真実は、2001年から東京で認知症専門の訪問診療を約15年なさっていた体験に基づいていらっしゃいます。認知症で外来通院が出来ない方々、劣悪な環境の方も含め、およそ1000人ほどのご自宅に定期的に訪問なさって、木之下先生が理解したことが綴られています。
さらに、2014年からは介護老人保健施設に隣接したクリニックを開設し、ワンストップで認知症診断を行っていらっしゃるそうで、こちらでも約3500人を超える方々を診察し、合計5000人に及ぶ方々の診療に携わっていらっしゃいます。
では、これらの豊富な臨床経験から得られた真実とは何なのでしょうか?
読んでいて「脳トレ」が予防に効果がないと断言されてショックでした。『医学的には「認知症の予防法なんてない」と捉えるしかありません。』(33ページより引用)と断言されて、さらにショック。
ところが、第2章の最後にはこう書かれています。
『私は認知症になってから人生が好転したという人にも会ってきました。認知症になってから「仲間」と思える人に出会い、それは素晴らしいことだと手紙に記した人もいます。また、自らの認知症の体験をもとに認知症の人の心の支援をする活動を始めた人にも出会いました。こういう体験ができれば素晴らしいことだと思いませんか。』
認知症になっても素晴らしいってどういうことでしょうか?
認知症になっても自分の人生の主体者として生き抜いていくって、どういうことでしょうか?
この答えを知りたいと思われたあなたに、この本をお勧めします。電車の中で読んでいたら、最初は納得できなくて、2回目には感銘を受けました。私のように認知症不安を抱えていらっしゃるあなたへ、特にお勧めします。 以上