高齢の熱中症の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が数日間の蓄積によることが判明!

高齢の熱中症搬送者の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が1日のみではなく、数日間の蓄積によることが判明!

高齢の熱中症搬送者の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が1日のみではなく、数日間の蓄積によることが判明!(pasja1000によるPixabayからの画像)

名古屋工業大学は、救命救急搬送者数を予測する技術を名古屋市消防局と共同研究なさっています。この研究チームは、プレスリリース「高齢者はなぜ自宅から熱中症で搬送されるのか? ~計算科学と熱中症搬送者統計データの融合による科学的な裏付けに向けて~」を7月13日に発表なさいました。この要旨を分かりやすくご紹介します。

1.高齢者(65歳以上)の熱中症の特徴

  • 発汗などの体温調節機能が低下し、重症化率が高い
  • 64歳以下の成人は屋外での発症が73%だが、高齢者は屋内での発症が52%と半分以上を占める

そこで、研究チームは高齢者が屋内で熱中症に至るまでの過程を科学的に考察しています。名古屋市消防局が取得した熱中症と考えられる搬送者ビッグデータと、研究グループが開発した人体温熱シミュレーション技術を融合させ、高齢者が熱中症を発症するメカニズムについて、横浜国立大学の協力を得て分析なさったそうです。

2.搬送時体温と年齢の関係からビッグデータを分析

  • 熱中症の発症は、65歳以上で急増
  • 屋内・屋外にかかわらず、年齢とともに体温は上昇
  • 65歳以上では、搬送者の約42%が体温38℃以上に上昇   
    高齢の熱中症搬送者の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が1日のみではなく、数日間の蓄積によることが判明!

    高齢の熱中症搬送者の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が1日のみではなく、数日間の蓄積によることが判明!(ayameさんによる写真ACからの画像)

3.搬送時の体温と搬送時間との関係から分析(対象:65歳以上)

 屋外の場合:午前9時から午後5時の間に発症

 屋内の場合:幅広い時間帯で発症

  • 日中に熱せられた建材からの熱による、長時間の影響
  • 睡眠中に脱水症をおこした可能性

ご指摘のように、家の中に熱気がこもる気がします。それにしても、睡眠中の脱水症は怖いです。寝ている間に熱中症になるなんて、初めて知りました。

4.名古屋市で2019年と2020年に救急搬送された方の内訳(屋内の熱中症)

  • 0~64歳             267人 
  • 0~64歳で搬送時体温37度以上  113人
  • 65~74歳             235人
  • 65~74歳で搬送時体温37度以上  132人
  • 75歳以上            596人
  • 75歳以上で搬送時体温37度以上  427人

特に75歳以上の方々の体温調節機能の低下に注目し、研究チームは体温調節機能を段階的に下げた65歳モデルと75歳モデルを作成。健常な成人と65歳モデルと75歳モデルに救急搬送データ採取の期間と同じ名古屋市の気象データを使用し、それぞれの身体内部の体温の時間変化を解析しました。

高齢の熱中症搬送者の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が1日のみではなく、数日間の蓄積によることが判明!

高齢の熱中症搬送者の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が1日のみではなく、数日間の蓄積によることが判明!(Esther MerbtによるPixabayからの画像)

5.深部体温の時間変化グラフのポイント

  • 高齢者は発汗量の減少により、体温の変動が大きい
  • 真夏の屋内において、身体内部の体温は38℃以下なのに対し、実際の搬送時には体温が38°C以上に上昇した患者が42%

6.屋内から救急搬送された高齢者データと条件設定データとの比較

  • 標準的発汗を設定したデータより、発汗しない設定データの方が、実際の救急搬送時に測定された体温と一致
  • つまり、高齢者は暑さの知覚を含む体温調節機能が著しく低下している可能性が高い
  • 脱水症の可能性が高い

発汗は、健常な体温調節機能と仮定した場合には、搬送当日の気象条件から汗の量は最大でも500g程度、体重の1%未満に過ぎないそうです。

にもかかわらず、救急搬送時38度以上の体温になるには脱水症状が数日間続いた影響の可能性が考えられます。

高齢の熱中症搬送者の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が1日のみではなく、数日間の蓄積によることが判明!

高齢の熱中症搬送者の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が1日のみではなく、数日間の蓄積によることが判明!(もんでんさんによる写真ACからの画像)

7.研究チームのまとめ

  • 高齢者は暑さを感じる機能が著しく低下している可能性が高い
  • のどが渇いていなくても、数日間にわたって少しずつ脱水症状が続き、脱水症に至る可能性が高い
  • 高齢者は本人が自覚していない可能性があるため、周りからの呼びかけが重要

8.名古屋市消防局が推奨する熱中症予防対策

  • こまめに水分を補給する「喉が渇く前に飲みましょう。」
  • エアコン・扇風機と使用する「室温28℃を目安にエアコンをつけましょう。」
  • シャワーやタオルで身体を冷やす「こまめに冷やしてリフレッシュしましょう。」
  • 運動を控える「暑い日は決して無理をしないようにしましょう。」
  • 涼しい服装にする「通気性の良い服を着ましょう。」
  • 部屋の風通しを良くする「家の中の向き合う窓を開けましょう。」

論文の紹介は以上です。コロナも怖いですが、熱中症予防も心がけたいと思います。そして、コロナにも熱中症にも奮闘し続けてくださっている医療従事者の皆様に心から感謝します。

高齢の熱中症搬送者の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が1日のみではなく、数日間の蓄積によることが判明!

高齢の熱中症搬送者の3割以上が、体温調節機能が著しく低下し、脱水症状が1日のみではなく、数日間の蓄積によることが判明!(utroja0による写真ACからの画像)

謝辞:名古屋工業大学先端医用物理・情報工学研究センター センター長 平田晃正教授、小寺紗千子特任准教授、高田旭登氏(工学専攻電気・機械工学系プログラム大学院生)、名古屋市消防局、横浜国立大学の研究に関わったすべての研究者のみならず、ご協力なさった全ての皆様に感謝するとともに、この研究と救命救急の向上・発展を祈念します。

☆名古屋工業大学大学院工学研究科電気・機械工学専攻 http://elemech.web.nitech.ac.jp/

☆名古屋工業大学先端医用物理・情報工学研究センター https://bpit.web.nitech.ac.jp/

☆2021/7/13 【プレスリリース】 高齢者はなぜ自宅から熱中症で搬送されるのか? ~計算科学と熱中症搬送者統計データの融合による科学的な裏付けに向けて~ https://bpit.web.nitech.ac.jp/news/1899/

☆高齢者はなぜ自宅から熱中症で搬送されるのか?(PDF) https://bpit.web.nitech.ac.jp/wp-content/uploads/2021/07/2021.7.13_press_2up.pdf

以上

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