介護離職や自宅から施設介護へと選択を迫られる、在宅介護の限界点をご存じですか?
全国の市区町村等で実施された「在宅介護実態調査」(令和2年7月19日~8月5日)のデータを集計・分析した「概要版」があります。このデータを調べると、症状の重症化につれて増してくる不安感や負担感があり、介護離職や在宅介護から施設介護への切り替えを迫られる限界点が見えてきます。介護の重荷に押し潰される前に改善方法を探すことができるよう、あなたに限界点をお知らせします。
1. 介護者が、在宅介護継続で不安を感じる介護上位5位
① 認知症状への対応 27.5%
② 夜間の排泄介助 21.2%
③ 外出の付き添い、送迎等 21.1%
④ 入浴・洗身 17.9%
⑤ 日中の排泄介助 16.5%
これらが問題点となります。もしも現在は問題と感じていない場合でも、介護度が重症化するにつれ、捉え方が違ってきます。下の介護度別をご覧ください。また施設介護の場合でも、外出の付き添いや送迎は発生します。私の場合は、父を有料老人ホームに預けましたが有料老人ホームへの訪問リハビリを認めてもらえなかったので、週1回リハビリテーション科への受診に付き添いました。
2. 介護度別の、介護者が不安を感じる介護上位5位
① 認知症状への対応に不安を感じる割合
*要支援1・2 16.2%
*要介護1・2 39.0%
*要介護3以上 35.8%
②夜間の排泄介助に不安を感じる割合
*要支援1・2 14.8%
*要介護1・2 25.3%
*要介護3以上 35.2%
③外出の付き添い、送迎等に不安を感じる割合
*要支援1・2 30.2%
*要介護1・2 24.8%
*要介護3以上 18.1%
④入浴・洗身に不安を感じる割合
*要支援1・2 20.8%
*要介護1・2 22.3%
*要介護3以上 18.2%
⑤日中の排泄介助に不安を感じる割合
*要支援1・2 9.8%
*要介護1・2 19.8%
*要介護3以上 29.1%
要介護3は、「 日常生活動作に全体な介助が必要で、立ち上がりや歩行には杖・歩行器・車いすを使用している状態。認知機能が低下し、見守りも必要になる。」です。介護度が低い「要支援1・2」であれば、不安感も低いかもしれません。が、症状が重くなるにつれ不安感は増大します。介護度が進むと、認知症状への対応と排泄介助が過酷だと数値の増加が示しています。
介護度は、突然、ガタンと進みます。たとえば私の父は大腿骨骨折で、「要支援1」から「要介護3」に急降下しました。どうか現在の介護度が低くても、急降下に備えてください。
3. 訪問系サービス利用頻度別、介護者が不安を感じる介護上位5位
① 認知症状への対応に不安を感じる割合
*訪問系サービス利用なし 40.2%
*訪問系サービス利用14回以内 28.9%
*訪問系サービス利用15回以上 28.6%
②夜間の排泄介助に不安を感じる割合
*訪問系サービス利用なし 37.8%
*訪問系サービス利用14回以内 31.7%
*訪問系サービス利用15回以上 29.9%
③外出の付き添い、送迎等に不安を感じる割合
*訪問系サービス利用なし 18.6%
*訪問系サービス利用14回以内 18.6%
*訪問系サービス利用15回以上 14.9%
④入浴・洗身に不安を感じる割合
*訪問系サービス利用なし 19.1%
*訪問系サービス利用14回以内 18.6%
*訪問系サービス利用15回以上 13.6%
⑤日中の排泄介助に不安を感じる割合
*訪問系サービス利用なし 30.5%
*訪問系サービス利用14回以内 27.5%
*訪問系サービス利用15回以上 25.9%
訪問系サービスとは、訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護を総称しています。また、利用回数は1か月あたりの利用回数です。
排泄介助への不安感はあまり変わりませんが、認知症状への対応の不安感はあきらかに減少しています。訪問系サービスの利用は、介護者の心の安定も支援してくださるのかもしれません。
4. フルタイム勤務で就業継続の見込み別、介護者が不安を感じる介護上位5位
①認知症状への対応に不安を感じる割合
*問題なく、仕事を続けていける人 24.1%
*問題はあるが、何とか仕事を続けていける人 40.2%
*仕事を続けるのは、やや難しい人 47.3%
*仕事を続けるのは、かなり難しい人 44.8%
②夜間の排泄介助に不安を感じる割合
*問題なく、仕事を続けていける人 14.6%
*問題はあるが、何とか仕事を続けていける人 27.6%
*仕事を続けるのは、やや難しい人 33.4%
*仕事を続けるのは、かなり難しい人 36.2%
③外出の付き添い、送迎等に不安を感じる割合
*問題なく、仕事を続けていける人 20.8%
*問題はあるが、何とか仕事を続けていける人 25.5%
*仕事を続けるのは、やや難しい人 23.1%
*仕事を続けるのは、かなり難しい人 23.9%
④入浴・洗身に不安を感じる割合
*問題なく、仕事を続けていける人 15.6%
*問題はあるが、何とか仕事を続けていける人 22.9%
*仕事を続けるのは、やや難しい人 26.1%
*仕事を続けるのは、かなり難しい人 23.2%
⑤日中の排泄介助に不安を感じる割合
*問題なく、仕事を続けていける人 12.4%
*問題はあるが、何とか仕事を続けていける人 22.2%
*仕事を続けるのは、やや難しい人 29.2%
*仕事を続けるのは、かなり難しい人 32.5%
上の数字から浮かび上がる姿は、特に排泄介助の負担が過重になると、介護離職を選ぶか、あるいは施設に介護を委託するかの二択に迫られる様子です。早めに排泄介助を支援していただける方法を探してください。
5. 介護度別、在宅介護の継続に必要と感じる支援やサービス5位
①移送サービス(介護・福祉タクシー等)
*要支援1・2 20.6%
*要介護1・2 21.7%
*要介護3以上 26.3%
②外出同行(通院、買い物など)
*要支援1・2 20.8%
*要介護1・2 22.4%
*要介護3以上 18.2%
③見守り、声かけ
*要支援1・2 11.7%
*要介護1・2 17.6%
*要介護3以上 16.4%
④掃除・洗濯
*要支援1・2 16.9%
*要介護1・2 15.0%
*要介護3以上 11.4%
⑤配食
*要支援1・2 12.5%
*要介護1・2 15.3%
*要介護3以上 12.4%
介護度によって必要な支援やサービスは多少異なりますが、移送サービスや外出同行が在宅介護の継続に役立つとわかります。これらの支援やサービスを利用できるようになれば、あなたの力になるでしょう。
6. 1か月あたりの訪問系サービスの利用回数
0回 70.4%
1~4回 10.3%
5~14回 12.8%
15~24回 3.2%
25~31回 1.1%
32~49回 1.1%
50回以上 1.0%
7. 家族等による介護の頻度
ない 14.7%
週1日以下 7.3%
週1~2日 9.9%
週3~4日 5.4%
ほぼ毎日 60.0%
無回答 2.7%
60%の方が介護に毎日携わっていらっしゃるのに、訪問系サービスを利用していない方が70.4%です。介護度によって利用できるサービスは異なりますが、在宅介護を続けるのか?あるいは施設に介護に委託するか?の極限まで届かない前に、もっと訪問系サービスの利用を検討なさってはいかがでしょうか?
以上が、「全国の在宅介護実態調査データの集計・分析結果の概要」から抜き出してお知らせしたい内容です。介護なさるあなたも、介護をうけるご家族も、より生きやすくて明るい毎日が過ごせるよう祈ります。
☆厚生労働省 「在宅介護実態調査の活用について」https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000154928.html
☆<第8期>全国の在宅介護実態調査データの集計・分析へのリンクについて(令和3年2月12日追加掲載)(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)https://www.murc.jp/sp/1509/houkatsu/houkatsu_06.html
☆先輩方の実体験や意見が貴重な入門書『「家族介護」のきほんー経験者の声に学ぶ、介護の「困り事」「不安」への対処法』https://kizuna-iyashi.com/2022/09/09/homemade-179
以上