アルコールは腸内の細菌叢の多様性を減少させるが、毎日330mLのビールは腸の健康を良好にします!
NOVA Medical School(Lisboa)の研究チームは、22 人の健康な男性が4 週間毎日330 mLのノンアルコールビールまたはビールを飲んだ後の体の変化を調べました。結果、体重と体脂肪量は増加せず腸内細菌叢が良好になり、腸のバリア機能が活性化する傾向を発見!これを紹介します。
1.ホップから抽出された化学物質がアルツハイマー病の発症を防ぐ可能性
NOVA Medical School(Lisboa)の研究チームがビールと体との関係を調査する前に、ホップの花から抽出された化学物質が、実験用の皿の中で、アルツハイマー病に関連するアミロイド ベータ タンパク質の凝集を阻害できることが報告されています。
Cristina Airoldi,PhD.らは、一般的な4種類のホップの抽出物を作成。研究チームは、この抽出物に抗酸化特性があり、アミロイドベータタンパク質が人間の神経細胞に凝集するのを防ぐことができることを発見しました。つまり、ホップ化合物はアルツハイマー病の予防に役立つ可能性があります。
2.ビールとノンアルコールビールが体に与える影響の調査方法
そこで予備的な小規模調査として、アルコールあり(5.2%) とアルコールなし(0.0%)のビールが、健康な男性の心筋代謝等のマーカーと腸内細菌叢の組成に及ぼす影響を調べました。
対象:18~65歳の健康な男性ボランティア(平均年齢35歳)
条件:
*研究期間中は身体活動レベルを変えず、飲酒を含む食事習慣を維持。
*ラベルなしのアルコール0.0%のビール330 mLあるいはアルコール5.2%のビール330 mLを毎日消費。
*研究の開始時と終了時に、採血・体組成評価・糞便サンプルと毎週アンケートを提出。
3.結果
*ノンアルコールビールまたはビール330 mLを毎日4 週間飲んでも、体重と体脂肪量は増加しなかった。
*血清や心血管代謝マーカーは変化しなかったので、ビール330 mLの飲酒なら血管や心臓に悪影響は及ぼさない可能性が高い。
*肝臓、腎臓、または骨の損傷マーカーは、ビールまたはノンアルコールビールに関係なく、4 週間毎日のビール摂取後に減少した。つまり、ビール330 mLの飲酒なら肝臓、腎臓、または骨に悪影響は及ぼさない可能性が高い。
*ノンアルコールビールグループもビールグループも、腸内細菌叢の多様性が増加し、腸の健康が改善。
*ノンアルコールビールまたはビールを飲むと、体重、体脂肪量、および血清や心血管代謝マーカーを大幅に変化させることなく、腸の健康が改善される。
*アルコール摂取は細菌の多様性を減少させるが、ビールの消費は腸内細菌の多様性を増加させる。
4.65歳以上シニア世代と女性の適度な飲酒量は、1日1杯(アルコール10g)以下!
上記の小規模な研究でビールは健康に良い可能性が発見されましたが、アルコールには害があります。アルコール性肝硬変もアルコール性肝疾患の死亡数も増加しています。
☆適度な飲酒がもたらす利点
*心臓病の発症と死亡のリスクを減らす
*虚血性脳卒中のリスクを軽減する可能性があります(脳への動脈が狭窄または閉塞し、血流が大幅に減少する場合)
*糖尿病のリスクを減らす可能性 (参照:「Alcohol use: Weighing risks and benefits」(MAYO CLINIC))
では、適度な飲酒量はどのくらいでしょうか?(参照:冊子「正しいお酒との付き合い方」(厚生労働科学研究 研究代表者 樋口進))
*男性は、1日純アルコール量20g(2ドリンク)以下
*女性と65歳以上のシニア世代は肝臓障害などを引き起こしやすいので、1日純アルコール量10g(1ドリンク)以下
純アルコール量を求める計算方法はこれです。
酒の量(mL) × 度数または% × アルコールの比重0.8 = 純アルコール量(g)
例えば、度数5%のビール500mlに含まれるアルコール量は?
500 × 0.05 × 0.8 = 20g
そうです、500mlで5%のビールを1本飲むと、20gのアルコールを摂取したことになります。女性とシニアのあなたには、1日の適度な飲酒量を超えています。
たったこれだけしか飲めないの?と思ったあなたへ、過剰飲酒がもたらす深刻な健康リスクを紹介します。
☆過剰飲酒がもたらす深刻な健康リスク
*乳がん、口、のど、食道、肝臓のがんなどの特定のがん
*膵炎
*すでに心血管疾患がある場合の突然死
*心不全につながる心筋損傷(アルコール性心筋症)
*脳卒中
*高血圧
*肝疾患
*自殺
*事故による重傷または死亡
*胎児の脳損傷およびその他の問題
*アルコール離脱症候群 (参照:「Alcohol use: Weighing risks and benefits」(MAYO CLINIC))
5月はビールも美味しい季節です。どうか適量を守って、アルツハイマー病の発症を防ぐ可能性があり、腸を健康にして心臓病や脳卒中や糖尿病のリスクを下げてくれるビールの恵みを頂きましょう!
参照論文等:
☆「Beer hops compounds could help protect against Alzheimer’s disease」(the American Chemical Society) https://www.acs.org/pressroom/newsreleases/2022/november/beer-hops-compounds-could-help-protect-against-alzheimers.html
☆「Impact of Beer and Nonalcoholic Beer Consumption on the Gut Microbiota: A Randomized, Double-Blind, Controlled Trial」(the American Chemical Society) https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.jafc.2c00587#
☆「Lager beer, whether it contains alcohol or not, could help men’s gut microbes」(the American Chemical Society) https://www.acs.org/pressroom/presspacs/2022/acs-presspac-june-15-2022/lager-beer-whether-it-contains-alcohol-or-not-could-help-mens-gut-microbes.html
☆「Alcohol use: Weighing risks and benefits」(MAYO CLINIC) https://www.mayoclinic.org/healthy-lifestyle/nutrition-and-healthy-eating/in-depth/alcohol/art-20044551
☆冊子「正しいお酒との付き合い方」(厚生労働科学研究 わが国における飲酒の実態把握およびアルコールに関連する生活習慣病とその対策に関する総合的研究 研究代表者 樋口進)chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://kurihama.hosp.go.jp/research/pdf/kaijo_1.pdf
以上