初期の認知症や軽度認知障害の方々が言葉にできない想いをご紹介します!

初期の認知症や軽度認知障害の方々が言葉にできない想いをご紹介します!

初期の認知症や軽度認知障害の方々が言葉にできない想いをご紹介します!(AdelinaZwによるPixabayからの画像)

大阪大学の橋本衛先生方の研究グループは、約100人の初期アルツハイマー型認知症、もしくは軽度認知障害(MCI)の患者さんを対象に、臨床心理士が面接を行ってご本人の心情を調査しました。この調査から作成されたパンフレット「初期の認知症の人の“想い”」から、患者さんご自身が自分の変化を受け入れられず、戸惑っている本音の一部を紹介します。

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初期の認知症や軽度認知障害の方々が言葉にできない想いをご紹介します!(Somchai SumnowによるPixabayからの画像)

1.患者さんの揺れる気持ち
■50代男性

「物忘れをする」と指摘する周りの人達が間違っていると思う。一方で、忘れっぽくなっていると思ってしまう自分もいる。病気だと思ったり、年相応だと思ったりする。グレーな気分。イライラするのは薬の副作用なのか、(後略)

■60代女性

子供から勧められたこともあるが、私が良くなるなら“嬉しいでしょ”と思って受診した。前に比べると記憶力が落ちたと感じる。いろいろ考えるようにしているがダメですね。「認知症になったら橋の上から飛び降りたい」と思っていたが、夫や子供が「大丈夫」と言ってくれて心の支えになっている。(後略)

■70代男性

(前略)子供も言いたいことを我慢しているようだから、自分もそうしている。地元の病院にお薬手帳を見せるのが嫌、ばれたくない。友達が多かったが、自分の病気について話をするとなると変に思われるのではないかと思い、特定の人としか交流していない。

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初期の認知症や軽度認知障害の方々が言葉にできない想いをご紹介します!(Leonhard NiederwimmerによるPixabayからの画像)

■60代女性

(前略)物忘れを自覚できるようになってきたけれど、以前は、「聞いていない」「そんなこと言っていない」と疑っていた。家族の「また私に言わせるの」という態度に腹が立つが、自分が悪いからね~。
忘れることに対して開き直るようになった。認知症になったら施設に入れて欲しい。娘には迷惑をかけたくない。

■70代男性
自分が病気だと意識するようになって前よりも良くなったと思う。何か言われると悔しくて怒ってしまうが、怒ったあとに後悔する。これまでできていたことがなぜできないかと思う。
家族には迷惑をかけたくない、かけるなら死にたい。(中略)
わからないことは尋ねればよいと妻は言うが、自分からは尋ねたくない。

■70代女性

昔は7つ8つの事を考えてできていたのに、電子レンジの扱いがわからなくなった。自分の行動が遅くなったと感じるできない自分に腹が立つ、そして夫に当たってしまう。認知症に入っているのかもしれないが、人には言いたくない。(後略)

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初期の認知症や軽度認知障害の方々が言葉にできない想いをご紹介します!(Fonthip WardによるPixabayからの画像)

■70代男性

妻から物忘れを指摘されると悔しい言い方が「バカみたい」な言い方で腹が立つ。自分からイライラすることはないが、怒られるとイライラする。(後略)

■60代男性

いつも言われていることができていない。それで「なんでできないの」と怒られる。妻からはプライドが高いと言われる。妻は厳しく全く褒めない。でも小さいことでも褒めて欲しい。認知症になるのではないかと、今は 50%ぐらい心配している。(後略)

上で紹介したそれぞれの“想い”は、著作権に配慮して全体の1/4弱です。パンフレット「初期の認知症の人の“想い”には16人の初期の認知症や軽度認知障害(MCI)の患者さんの”想い”が集められています。これを読むと、子どもの立場からは見落としがちな、素直な本音が胸に刺さります。

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初期の認知症や軽度認知障害の方々が言葉にできない想いをご紹介します!(Dimitris VetsikasによるPixabayからの画像)

『ご本人もまた自分の変化を受け入れきれずに、とても戸惑われていることがわかりました。このような患者さんの“想い”をご家族様に知っていただきたいと考えパンフレットを作成しました。』

と橋本衛先生は記していらっしゃいます。このアドレスから是非、パンフレットをご覧ください。https://www.bpsd-web.com/html/document1-02.html#contents

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初期の認知症や軽度認知障害の方々が言葉にできない想いをご紹介します!(romaneauによるPixabayからの画像)

2.ウェブサイト「~笑顔で穏やかな生活を支える~認知症の方へのポジティブケア」を紹介します

上で紹介したパンフレットはウェブサイト~笑顔で穏やかな生活を支える~認知症の方へのポジティブケアで公開されている資料の1つです。

あなたもご存じのように認知症の行動・心理症状(BPSD)は、脳の損傷が原因であらわれる中核症状とは違い、予防や治療が可能な場合が多い症状です。

認知症の行動・心理症状(BPSD)の予防や治療に役立つ資材を作成し、公開しているのが、このウェブサイト「~笑顔で穏やかな生活を支える~認知症の方へのポジティブケアhttps://www.bpsd-web.com/index.htmlです。

行動・心理症状(BPSD)の予防を主眼としているので、何が行動・心理症状(BPSD)なのか分からない私たちに情報を提供してくれます。

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初期の認知症や軽度認知障害の方々が言葉にできない想いをご紹介します!(IrodoriによるPixabayからの画像)

実際にのぞいてみましょう。ウェブサイトのトップページの右上「家族介護者向け資材」と書かれたオレンジ色のボタンをクリックすると、私たち向けのページです。縦軸が認知症の進行程度を表し、下に進むにつれて病状が進行した段階となります。

段階は4つに分かれています。

「第1段階 BPSDの予防を考えるー 認知症診断時に大切な事

「第2段階 BPSDに対する適切な対応で治療を考えるー BPSDに対する適切な対応法

「第3段階 薬物治療」ー 薬物治療の開始について

「第4段階 専門病院での薬物治療」

『本指針では、BPSDの予防を考える」ことを重視しており、それは「認知症診断時」から開始して欲しいと思っています。』とウェブサイトにも書いてあります。あのパンフレットも「第1段階 BPSDの予防を考える」の中の公開資料の1つです。もっと詳しく知りたい方は、このウェブサイトをご覧ください。https://www.bpsd-web.com/html/family.html#contents

次回6月7日のブログでは、數井 裕光先生がケアの専門家の経験や考えをグラフにまとめた「BPSDを軽減させるために、どのような介護サービスが有効か」を分かりやすく紹介します。(https://www.bpsd-web.com/html/document1-06.html#contents)

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初期の認知症や軽度認知障害の方々が言葉にできない想いをご紹介します!(Hlqbi MakosintovichasetrovによるPixabayからの画像)

謝辞:橋本衛先生、研究代表者數井 裕光先生、山口 晴保先生をはじめ、認知症のポジティブケアの研究に従事なさっていらっしゃる全ての皆様とご協力くださった患者さんに感謝するとともに、認知症の患者さんとご家族がより良い時間を過ごせますよう、すべての医療・介護従事者の皆さまの益々のご活躍・ご発展を祈念します。

★本ウェブサイト「~笑顔で穏やかな生活を支える~認知症の方へのポジティブケア」は、日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業の以下の研究の支援を受けて、開発・運営されています。

「認知症者等へのニーズ調査に基づいた『予防からはじまる原因疾患別のBPSD包括的・実践的治療指針』の作成と検証研究」研究代表者 數井 裕光

「BPSDの解決につなげる各種評価法と、BPSDの包括的予防・治療指針の開発~笑顔で穏やかな生活を支えるポジティブケア」研究代表者 山口 晴保

「血液バイオマーカーと神経画像検査によるBPSDの生物学的基盤の解明、および認知症者の層別化に基づいたBPSD ケア・介入手法の開発研究」研究代表者 數井 裕光

パンフレット「初期の認知症の人の“想い”https://www.bpsd-web.com/html/document1-02.html#contents

ウェブサイト「~笑顔で穏やかな生活を支える~認知症の方へのポジティブケアhttps://www.bpsd-web.com/index.html

以上

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