残業過多でフルタイム勤務の娘と75歳の母の2人暮らしで介護保険の家事ヘルパーは頼めますか?(前編)
Tさんからご質問を頂きました。内容は、「東京23区内で母と2人らし。私はフルタイムで残業も多いため、日中はほぼ1人暮らしの母のために風呂掃除と買い物や料理のヘルパーを頼みたい。どうしたら良いですか?」とのこと。この場合の家事援助ヘルパーさんの探し方を前編・後編に分けてご紹介します!
1.介護保険を利用するには、要介護認定を受けることが必要です
Tさんのお母様はお元気で不自由もなかったため、要介護認定をうけていなかったそうです。ところが、昨年の秋にお墓参りで転んでしまい、Tさん母娘は歩行器と家事援助ヘルパーさんを考えました。
①第一歩は、要介護認定の申請:介護保険を利用するために、要介護度の判定を受けることが必要です。
☆申請を行う場所:役所の高齢者福祉窓口
☆申請について相談したい場合:市区町村にある地域包括支援センター
調査員とかかりつけ医による診断が必要となる「要介護度」とは、どの程度の介護を必要とするかを7段階の数値で表したものです。この要介護認定が下りると、公的な介護保険サービスを利用できます。
ちなみに、厚生労働省のホームページ(*1)に「申請から認定の通知までは原則30日以内に行ないます」と記してあります。
けれど、かかりつけ医の書類作成などに時間がかかって延びる場合もあります。地域によっては、2~3か月かかる場合もあるそうです。
要介護認定が下りてから、介護サービス計画書(ケアプラン)を作成していただき、やっとサービス開始となるので、時間がかかります。早めの申請をお勧めします。
なお詳しい申請方法は、厚生労働省の介護保険の解説「サービス利用までの流れ」(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html)をお読みください。
②介護サービス計画書(ケアプラン)の作成:要介護認定が下りれば自宅で暮らしながら、調理や掃除などの生活援助、入浴や移動などの身体介護を受けられるほか、必要であれば施設へ入居もできます。
施設入居ともなると高額な費用がかかりますが、介護保険サービスは1〜3割の自己負担で受けられます。
例えば、軽度の要支援2の認定が下りた場合、介護保険から給付される1ヶ月あたりの上限額(支給限度額)は月額10万5,310円です。
支給限度額内でサービスを利用する場合は、費用の1割(一定以上所得者の場合は2割または3割)を負担します。超過した分のサービス費用は全額自己負担です。
限度額内でサービスを組み合わせると、この程度利用できます。
*ホームヘルプサービス(週2回程度)
*デイサービス(週1回程度)
*福祉用具のレンタル(歩行器や入浴用品など)
補足:
介護保険の調理や掃除などの生活援助の場合、「同居家族分の買い物や共用部分の清掃は原則保険給付の対象外」です。この原則から、びっくりするようなご指摘を受けるかもしれません。けれど、ケアマネジャーさんにも現場のヘルパーさんにも罪はないです。
令和6年度に介護報酬が改定され、自宅に来て下さり生活援助や身体介護を担当する「訪問介護費」は減額されました。時給が減れば人手不足となり、訪問介護のヘルパーさんは薄給で激務です。どうか苦情や抗議は、厚生労働省にお願いします。
③介護保険では、同居家族がいる場合は生活援助サービスを原則として利用できません!
ところが、せっかく申請を行い、約1か月待って要介護認定が下りても、家事援助サービスを受けられない場合もあります。同居家族が居る場合です。介護保険を作った時の原則が、日常的な家事活動は同居家族が担うべきとみなしていたためです。
でも、原則には例外もあります。千葉県船橋市ではホームページにこう明記しています。(*2)
「同居家族のいる場合の生活援助サービスの取扱いについて」
介護保険における訪問介護による生活援助(家事代行)については、原則、同居の家族等がいる場合は利用できません。しかし、次のような場合には、利用者の個別の状況を踏まえた適切なケアマネジメントにより、サービスを利用できる場合があります。
●同居家族等が障害や疾病等の理由により、家事を行うことが困難な場合。
●同居家族等も高齢であり、家事を行うことが困難な場合。
●同居家族等が未成年者であり、利用者への支援が日常生活上の大きな負担になる場合。
●同居家族等が就業・学業等により日中不在にするため、その間に必要な支援が行えない場合。
●同居家族等との家族関係に極めて深刻な問題があり、援助が期待できない場合。
上記以外でも、やむを得ない事情がある場合は、同居の家族等の有無に関わらず生活援助が利用できることがあります。担当の介護支援専門員(ケアマネジャー)にご相談ください。
また最近では、『同居家族がいることのみを判断基準として、機械的にサービスに対する介護給付の支給の可否を行わないよう留意すること』との通達が厚生労働省から出ているそうです。
同居している全ての場合に認められるとは思えません。それでも同居家族がいて生活援助を頼みたい場合は、まずはケアマネジャーか地域包括支援センターに相談なさってください。
2.介護保険外のホームヘルパーには2種類あります
Tさんの場合は、残念ながら介護保険の訪問介護による生活援助(家事代行)は受けられませんでした。
けれどご安心ください。介護保険外でも生活援助サービスが、2種類あります。
①公的機関等が運営する住民参加型 ・有償家事援助サービス
②民間のサービス
では、①の住民参加型・有償家事援助サービスの探し方から説明します。
3.市区町村の社会福祉協議会が運営しているサービスを探す
①の住民参加型・有償家事援助サービスの中で、最初にお勧めしたいのは市区町村の社会福祉協議会が運営しているサービスです。
社会福祉協議会(*3)とは、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした、営利を目的としない民間組織です。
社会福祉協議会は、それぞれの都道府県・市区町村で地域に暮らす人々と、民生委員・児童委員、社会福祉施設・社会福祉法人等の社会福祉関係者、保健・医療・教育など関係機関の参加・協力のもと、地域の方々が住み慣れたまちで安心して生活することのできる「福祉のまちづくり」の実現のために、さまざまな活動をおこなっています。
ですから、社会福祉協議会が運営するサービスなら頼もしくて安心です。その探し方は以下の通りです。
1.お住いの市区町村等の社会福祉協議会のホームページを検索。
2.ホームページ内で「高齢者」「利用サービス」「生活サポート」などのキーワードで検索。
3.たとえば荒川区の社会福祉協議会の場合には「生活のサポート」として3つの事業名が表示されます。この中から高齢者への家事援助サービスをおこなう事業をさがします。
荒川区の「にこにこサポート」(*4)にはこう書かれています。
にこにこサポートは、『地域の支えあい活動』です。支えられる人も支える人も地域に住んでいる方です。
高齢や障がい、病気やけが、産前産後の体調不良等により日常生活のサポートが必要な方を対象に、地域の方々が協力して家事や介助 ・ 見守りなどお手伝いする住民参加型の会員制有償在宅福祉サービスです。ご利用できる条件は、荒川区内の方で、日常生活を営むのに支障があり、援助を必要とする①~⑦の条件に該当する方
①65歳以上の高齢者
②心身に障がいのある方
③難病患者や病弱な方
④ひとり親家庭の方(原則としてこどもが義務教育終了まで)
⑤病気やケガ等で緊急一時的に援助が必要な方
⑥産前産後の体調不良から援助が必要な妊産婦の方
⑦その他、社会福祉協議会が必要と認めた方年度会費1世帯2,000円(社会福祉協議会の会員となって頂きます)
☆生活サポート(掃除、洗濯、買物、食事の支度など)
時間あたり 750~850円
☆介助 ・ 見守りサポート(通院介助、外出の付き添い、車椅子介助など)
時間あたり 850~950円
☆健康文化サポート(趣味や娯楽でのお相手やお手伝いなど)
時間あたり 850~950円
☆留守宅サポート(入退院時の留守宅での衣類の整理、必要な物のお届けなど)
時間あたり 750~850円
☆宅配夕食サービス あんしん(安否の確認)とともに、栄養バランスのとれた食事を配達します。
700円/1食荒川区社会福祉協議会
在宅福祉サービス課 在宅福祉係
にこにこサポート
TEL:03-3891-5180
FAX:03-3891-5290
住所:東京都荒川区南千住1-13-20(荒川区社会福祉協議会内)
葛飾区の社会福祉協議会にも家事援助サービス(*5)がありました。
「しあわせサービス ~下町人情届けます~」
住み慣れた葛飾で安心して暮らし続けることができるようにするための助け合いの制度です。葛飾の福祉をより良くしていきたいという熱意のある区民の方々の参加と協力によって行う会員制のサービスです。日常生活でお困りになった時に、利用会員として登録をしていただき、家事や簡単な付き添いなどをする協力会員(有償ボランティア)を派遣し、ご本人の自立した生活へ向けて援助を行うものです。
しあわせサービスをご利用いただける方(利用会員):
葛飾区内にお住まいの下記の方々です。*おおむね65歳以上の方
*障害のある方
*ひとり親家庭
*妊産婦
*在宅療養者 など主な援助活動内容:
家事援助を中心とした日常生活でのお手伝いです。利用金額等:
利用会員は、1時間あたり700円の費用がかかります。(1時間未満切り上げ)
利用会員・協力会員とも、年会費600円をいただきます。
利用料等は、郵便貯金口座から引き落としさせていただきます。会員登録の手続き:
利用会員 登録希望の方は、電話で日程を打合せの上、コーディネーターが訪問してお話をお伺いさせていただきます。葛飾区社会福祉協議会
福祉サービス係〒124-0006 東京都葛飾区堀切3-34-1
地域福祉・障害者センター(ウェルピアかつしか)3階
電話:03-5698-3216 / FAX:03-5698-2513
このような地域の助け合い事業が、あちこちの社会福祉協議会にあります。あなたがお住いの市区町村の社会福祉協議会のホームページで探してみてください。
ただし、お住いの地域にボランティアがいない場合は派遣できない等の場合もありますので、詳細をご確認ください。
介護保険の生活援助サービスを利用できなくても諦めないで、まずはお住いの社会福祉協議会のホームページを検索なさってください。
次回、1月31日の後編では以下の内容をご紹介します。
4.市区町村のシルバー人材センターで家事援助サービスを探す
5.民間の家事援助サービスを探す
6.介護保険以外のサービスで、代替する方法はいかがですか?
もしも介護保険サービスが利用できなくても諦めないで、頑張りすぎない介護を目指しましょう!
補注
*1:厚生労働省 介護保険の解説「サービス利用までの流れ」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/flow.html
*2:千葉県船橋市「同居家族のいる場合の生活援助サービスの取扱い」https://www.city.funabashi.lg.jp/kenkou/kaigo/004/p075471.html#:~:text=%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E7%9A%84%E3%81%AA%E8%80%83%E3%81%88%E6%96%B9,%E3%81%84%E3%82%8B%E5%A0%B4%E5%90%88%E3%81%AF%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
*3:社会福祉協議会ホームページ https://www.shakyo.or.jp/recruit/about/index.html
*4:「にこにこサポート」荒川区社会福祉協議会 https://www.arakawa-shakyo.or.jp/niconico_support/
*5:「しあわせサービス」葛飾区社会福祉協議会 https://www.katsushika-shakyo.com/service/problem/shiawase/
以上