養護・介護施設で暮らす家族を虐待から守るには?家族ができる4つの予防策【前編】

2月14日のブログ(*1)では、厚生労働省の調査から「介護施設や事業所で起きる虐待の傾向」を解説しました。
今回は、虐待を未然に防ぐために“家族ができること”を、前編・後編の2部作でまとめます。

1.定期的に施設へ通い、職員さんと信頼関係をつくる

養護・介護施設に入居・入所している家族への虐待を防ぐには、どうすれば良いですか?

(Gini George/Pixabay)

介護の現場では、真面目で思いやりのある職員さんが多く働いています。しかし一方で、
・慢性的な人手不足
・重たい身体介助
・認知症の方への対応
などから、心身に大きな負担がかかりやすいのも事実です。

中には、利用者さんから暴言・暴力・セクシャルハラスメントを受け、心がすり減ってしまうケースもあります。
こうした疲労やストレスが重なると、知識不足や感情の暴走をきっかけに虐待へつながる可能性があります。

だからこそ、家族ができる一番のポイントがこちらです。

●ポイント①:感謝と信頼をこまめに伝える

養護・介護施設に入居・入所している家族への虐待を防ぐには、どうすれば良いですか?

(Ольга Корчагина/Pixabay)

定期的に訪問し、
「いつもありがとうございます」
と笑顔で伝えてください。小さな言葉でも、職員さんの心の支えになります。

たとえば、
・夜中の不安からナースコールを連打してしまう
・暴言が出てしまう
・おもらしが続き、職員さんが走り回る
こんな場面が続くと、どんなプロでもつらくなります。

職員さんが「家族は信頼してくれている」と感じていれば、
虐待に踏み出す“心のハードル”を下げない効果があります。


2.家族の“いつもと違う様子”をこまめに確認する

養護・介護施設に入居・入所している家族への虐待を防ぐには、どうすれば良いですか?

(Юля Базлова/Pixabay)

●ポイント②:雑談しながら、日々の気分や様子をチェック

認知症の方は、言葉の意味は分からなくても、相手の感情は敏感に察知します。
「無視された」「意地悪された」と感じただけで、落ち込んだり、反対に怒りが強く出ることもあります。

そこで、さりげなく聞いてみましょう。

「おかあさん(おとうさん)、こわい思いしてない?」
「誰かに意地悪されていない?」

虐待を受けやすいのは、調査(*2)でも示されているように
“85歳以上で介護度が高く、気が弱い・我慢強い女性”です。
小さな変化も見逃さないようにしましょう。


3.「足湯」や「手湯」で、身体に不自然な痣がないか確かめる

養護・介護施設に入居・入所している家族への虐待を防ぐには、どうすれば良いですか?

(Etienne GONTIER/Pixabay)

施設では入浴介助の時に、原因不明の痣が見つかり虐待が発覚するケースがあります。

●ポイント③:足湯・手湯で優しく全身チェック

保湿クリームをつけながら、
・打撲の跡
・皮膚のつねられ痕
・ひっかき傷
などがないか自然に確認できます。

詳しいやり方はこちら:
・足湯:https://kizuna-iyashi.com/2023/01/06/homemade-196/
・手湯:https://www.prinature.jp/contents/handbath

手首は血管が集まっており、温めると体全体がリラックスします。
気持ちが和らげば、表情も明るくなります。


4.「介護記録」を見て、日常の様子を把握する

養護・介護施設に入居・入所している家族への虐待を防ぐには、どうすれば良いですか?

(Nicky/Pixabay)

●ポイント④:介護記録を閲覧して、毎日の変化を知る

介護記録には、
・食事量
・排泄の様子
・睡眠
・ケアの拒否や暴言
が記載されています。家族であれば閲覧できます。

次のような内容が続く場合は、職員さんの負担が非常に大きい可能性があります。

  • 暴言・暴力

  • 介護拒否

  • 食事の拒否

  • 失禁が多い

  • 常に見守りや介助が必要

負担が大きいほど、虐待リスクは高くなるため、家族ができる対策が必要です。


5.家族ができる具体的な虐待防止策

養護・介護施設に入居・入所している家族への虐待を防ぐには、どうすれば良いですか?(前編)

(Юля Базлова/Pixabay)

●ご提案する3つの対策

  1. 認知症治療薬の変更を主治医に相談する
    →興奮・怒り・不安が強い時は、薬で改善することがあります。

  2. 可能な範囲で施設に通い、食事介助や着替えを手伝う
    →「家族は丸投げしていない」という姿勢が職員さんに伝わります。

  3. 定期的に外出・外泊に連れ出す
    →「大切にされている利用者」と分かれば、職員さんの接し方はより丁寧になります。

介護は、心をすり減らす大変な仕事です。
多くの施設が人手不足の中、職員さんの努力によってご家族は安全に過ごせています。

だからこそ、
“任せっぱなしにしない姿勢”
が、ご家族を守るための最大の防御になります。


次回:虐待を疑う言動があった時の「具体的な解決策」

2月28日の後編(*3)では、
・「虐待の芽チェックリスト(入所施設版)」の活用方法
・ご本人が「叩かれた」「暴言を吐かれた」と訴えた時の対応
をわかりやすくお伝えします。

補注

*1:厚生労働省「令和元年度 高齢者虐待対応状況調査」
https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/000708459.pdf

*2:2月14日ブログ
「高齢者への虐待が増えていますが、介護施設でも注意は必要ですか?」
https://kizuna-iyashi.com/2025/02/14/homemade-310/

*3:公益財団法人 東京都福祉保健財団
「虐待防止チェックリスト集」
https://www.fukushizaidan.jp/105kenriyougo/link/

養護・介護施設に入居・入所している家族への虐待を防ぐには、どうすれば良いですか?(前編)

(Annette Meyer/Pixabay)

以上

 

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