トイレの失敗が増えてしまったら泌尿器科かウロギネを受診して、尿とりパッドや紙パンツを試してみませんか?(前編)
介護の三分の一は、排泄介助とその後片付けです。お食事や入浴は、民間の介護サービスに頼めますが、排泄ケアは待ったなし。夜間や外出時の排泄介助は泣きたくなります。だからこそ、専門医の診断と治療が必要です。前編はおしっこの基礎知識と専門医について説明し、後編は尿漏れの原因と治療法の説明。そして、スマホ撮影で簡単にサイズがわかる「大人用おむつカウンセリング」を紹介します。
1.65 歳以上なら、約4人に1人はオシッコの問題を抱えています
健康で正常であっても、加齢によって現れる症状・徴候があります。このうち、医師の診察や介護・看護を必要とする症状・徴候を、「老年症候群」と呼びます。(*1)この症状・徴候は50項目以上あります。
なかでもオシッコを漏らしてしまう尿失禁は、シニアの約400万人が抱える症状です。またシニアだけでなく、女性の4割を超える2000万人以上が悩んでいるといわれ、女性にとって深刻な問題です。
尿道の開閉をつかさどり、膀胱や内臓を支える骨盤底筋(*2)には長い年月を通して大きな負担がかかります。この骨盤底筋の衰えも失禁の原因の1つで、加齢とともに失禁しやすくなります。
つまり失禁は、年齢を重ねれば、誰にでも起こる代表的な老年症候群の1つです。
2.女性の排尿機能と老化による変化
オシッコは、腎臓でつくられ、尿管を通って、膀胱に蓄えられます。女性の尿道は3~4cmと短く、まっすぐです。老化により尿道の位置が変形したり、尿道の開閉をつかさどる骨盤底筋(*2)の機能低下が起こりやすくなります。
骨盤底筋とは、骨盤の底(下部)にある筋肉の総称で、骨盤の内側に収まっている内臓が下りないように下から支え、排尿、排便のコントロールを担っています。
特に女性は加齢や出産で骨盤底筋を痛めやすく、重い物を持つ仕事や便秘による排便時の強いいきみ、喘息や花粉症なども骨盤底筋を傷める原因となります。
そのため、咳やくしゃみなどお腹に圧力がかかった時の尿もれや、骨盤底筋がうまく動かないために尿道がギュッと閉まらず、トイレまで我慢がきかない尿もれが、起こりやすくなります。
3.男性の排尿機能と老化による変化
腎臓、尿管、膀胱の構造は、男性も同じです。しかし、男性の尿道は16~20cmと長く、しかも途中で2カ所も折れ曲がっています。骨盤底の筋肉群も男性は女性より強力ですが、男性は女性にはない前立腺が尿道のまわりを取り囲んでいます。
男性は、加齢に伴ってこの前立腺が肥大化する傾向があります。前立腺が肥大化すると尿道を圧迫して狭め、尿が出にくくなります。
また男性の場合は長い尿道がたるんで、折れ曲がった箇所に尿が残り、排尿後に無意識に垂れることもあります。
4.泌尿器科やウロギネ(女性排尿機能センター)を受診する
尿失禁や頻尿は自然な老化現象ですが、尿漏れの背後に重大な病気が潜んでいる場合もあります。あるいは、薬の副作用から起きる場合もあります。
尿失禁を原因で分けると、次の4種類になります。
1. 腹圧性尿失禁:おなかに急激な力が入った時に漏れる
2. 切迫性尿失禁:自分の意思にかかわらず膀胱が勝手に縮んで暴走し、我慢できずに漏れてしまう
3. 溢流(いつりゅう)性尿失禁:尿が出しにくいことが原因で、残尿が膀胱からあふれて、ダラダラと漏れてしまう
4. 機能性尿失禁:排尿機能には問題はなく、身体運動機能の低下や認知症など精神機能の低下によってトイレまで歩く時間が長くかかってしまい、間に合わず漏らしてしまう
同じ尿失禁でも原因が違えば、治療方法も異なります。薬が効く尿漏れがあれば、薬で悪化してしまう尿漏れもあります。
また尿取りパッドや紙パンツの性能は「吸収量〇〇cc/〇〇ml」で表示されます。家庭では、排尿量や排尿後に膀胱に残った尿量を調べることはできません。
抵抗感があると思いますが、男性なら泌尿器科を、女性ならウロギネ(女性排尿機能センター)を受診して、正確な原因と治療方法を知ることが重要です。
☆ウロギネ(女性排尿機能センター)とは?
ウロロジー(泌尿器科)とギネコロジー(婦人科)の言葉を合わせた造語です。 泌尿器科と婦人科の境界領域にある女性特有の病気・症状を専門とする科です。(*3)
子宮脱・膀胱脱・直腸瘤などの骨盤臓器脱や尿失禁、頻尿、夜間頻尿などの排尿のトラブル、便失禁や直腸脱などの排便のトラブル、さらに下腹部痛、膣の違和感などもウロギネコロジーの分野に含まれます。
2007年5月、亀田総合病院に本格的なウロギネセンターが開設されたことを契機に、ウロギネを開設する病院が増えています。
女性が尿漏れや頻尿で受診なさる場合は、是非お近くの病院にウロギネ(女性排尿機能センター)があるかどうか、検索なさってみてください。
5.泌尿器科やウロギネを受診するメリット
泌尿器科の病院では、だいたい、このような診察・検査が行われます。
①問診
②検査
*尿検査:尿路感染症の細菌の有無や膀胱炎に罹っていないかを調べます
*超音波検査:膀胱に腫瘍や結石がないか調べます
*残尿測定:排尿後、膀胱内に残っている尿量を測定します。
ccやml単位で測定してくださる尿量は、尿取りパッドや紙おむつ購入時に必要です。また腫瘍や結石、炎症を起こしていないか確認するためにも、男性なら泌尿器科を受診しましょう。
☆岐阜赤十字病院ウロギネセンター(*4)の診察内容
ウロギネの診察内容は、一例として、岐阜赤十字病院ウロギネセンターの診察内容をホームページから引用します。
①医師の診察:問診票・アンケートをもとに、今の症状や何に困っているかを伺います。
②内診・超音波検査:お産と同じ体位で内診を行います。外陰部の状態、骨盤底の状態、骨盤臓器脱の有無や程度、尿道のゆるみ、排尿の状態などがわかります。
③尿流測定:どれぐらい尿がためられるかを知るために膀胱に清潔な水を入れて検査用のトイレで排尿します。尿の勢いや、残尿もわかります。
泌尿器科ではわからない、女性特有の症状もウロギネ(女性排尿機能センター)なら診断がつきます。これが最大のメリットです。
☆泌尿器科・ウロギネ受診時の注意
※尿検査を行うので少し尿をためた状態で、受診なさってください。
※診察の際には必ずお薬手帳を持参なさってください。
総合感冒薬(風邪薬)・抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬・葛根湯・抗うつ薬・睡眠薬・パーキンソン病やてんかんなどの薬・不整脈治療薬・胃腸薬など多くの薬の副作用で排泄障害が引き起こされるので、詳細な薬の情報が必要です(*5)。
※骨盤臓器脱の症状がある場合は、なるべく症状が出た状態で受診することをお勧めします。
※ウロギネ(女性排尿機能センター)は、生理中でも受診できます。
前編はここまでです。
尿漏れは、ご本人も家族もショックで、慌てふためきます。度重なれば、恥ずかしさから気持ちが萎縮したり、汚れた下着を隠したがる気持ちも理解できます。
でも同時に、子どもとしては情けないような、うんざりした気分を上手く隠せません。同じ排泄ケアでも、赤ちゃんとは尿の量も臭いも違います。
だからこそ、正確な原因と正しい治療法を理解するために、男性なら泌尿器科、女性ならウロギネ(女性排尿機能センター)を受診しましょう。
5月23日の後編では、尿漏れ4種類の原因と治療法を説明し、スマホ撮影で簡単におむつサイズが分かるユニ・チャームの「大人用おむつカウンセリング」を紹介します。
補注
*2:「骨盤底筋とは、骨盤の底(下部)にある筋肉の総称で、骨盤内臓器を下から支え、排尿、排便のコントロールする役割を担っています。
骨盤底筋と姿勢は密接な関係があると言われています。姿勢保持に必要な筋肉は、腹筋や背筋などの体幹筋です。骨盤底筋は横隔膜、多裂筋、腹横筋などと共に、体幹の深層筋群で出来たインナーユニットを構成して、体の安定性や腹圧の調整に関与しています。」亀田メディカルセンター https://www.kameda.com/pr/urogyne_center/rehabilitation.html
*3:「ウロギネとは:ウロギネコロジー:Urogynecologyとは、ウロ(Urology泌尿器科)、ギネ(Gynecology 婦人科)からなる造語で、泌尿器科と産婦人科の境界領域にある病気を治療する診療科です。」亀田メディカルセンター ウロギネ・女性排尿機能センター https://www.kameda.com/pr/urogyne_center/
*4:「岐阜赤十字病院ウロギネセンター:岐阜赤十字病院ウロギネセンターでは、骨盤臓器脱(こつばんぞうきだつ)、女性の尿トラブル(頻尿・尿もれ・膀胱痛)の症状でお悩みの女性専用の専門外来です。
骨盤臓器脱や尿のトラブルは多くの女性が経験することです。
実際に当センターに年間で1000名近くの患者様が来院します。
そんな悩みを抱える女性の味方になり治療方法や解消方法を提案して女性のケアに努めています。」https://www.gifu-med.jrc.or.jp/urogynecology/
*5:「薬剤性排尿障害」いかど腎泌尿器科クリニック https://ik-clinic.jp/case/%E8%96%AC%E5%89%A4%E6%80%A7%E6%8E%92%E5%B0%BF%E9%9A%9C%E5%AE%B3/
以上