シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)

シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)

シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(acgorham90によるPixabayからの画像)

ユニ・チャーム排泄ケア研究所(*1)によれば、この20年で紙おむつが尿を吸収する機能は進化し、尿漏れが格段に減少したそうです。けれど、泥状の便や水のような便の漏れトラブルが急増しています。60代以降、男女とも便秘が増え、80代以降は、女性よりも男性の便秘が増加します。今回は排便のしくみとシニアの便秘や下痢を解説し、6月6日中編では便漏れの原因と治療法を紹介します。

シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)

シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(MichaelaによるPixabayからの画像)

1.排便のしくみ

わたしたちが毎日いただくご飯は、口から入った後さまざまな臓器を通って必要な栄養素が消化・吸収され、消化吸収されなかったものが、食事から約12~72時間後に、便として排出されます。

食べたものは、約25㎝の食道をすとんと落ちて、袋状に膨らんだの中に溜まります。強い酸性の胃液とよく混ぜられ、ドロドロに溶かされます。

次に十二指腸に移動して、消化液と混ざります。消化液の一つは胆汁で、胃酸を中和します。胃の裏側にある膵臓からは消化酵素が分泌され、ドロドロになった食べものは、ブドウ糖やアミノ酸などの栄養素に分解されます。

消化・吸収のために分泌される胃液胆汁膵液は、1日に約6リットルに達すると言われ、これに食べものの水分や唾液を加えると、合計約9リットルになります。

口で嚙み砕いた食べたものは、十二指腸まででドロドロの状態で目には見えない栄養素と消化液などが混じった9リットルの液体に変身します。

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シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(LudivineによるPixabayからの画像)

次に9リットルの液体は、細くて5~6mもある小腸を進みながら、栄養素などが約7リットルも体内に吸収されていきます。

小腸で吸収されなかった残り2リットルが、大腸に入ります。1.6~2mほどの長さの大腸では水分が吸収され、栄養素と水分が吸収された残りカスが便となって直腸の手前のS状結腸にためられていきます。

S状結腸にためられた便は、朝の目覚めや食事摂取などの刺激で生じる強力な蠕動(ぜんどう)運動によって一気に直腸に移動。

直腸の壁が便の移動を感じて神経を通じて脳に伝達し、「トイレに行きたい」という便意を感じさせ、排便します。

直腸にある便によって便意を感じたり、その便意を我慢するのに欠かせないのが神経の働きです。直腸肛門の感覚を脳に伝え、脳や脊髄から直腸肛門に指令を送る神経が、排便のプロセスにおいて重要な役割を果たしています。

つまり、この神経を通して「伝達」がうまく伝わらなかったり、指令が伝達されても筋肉が正常に機能しないと、便漏れが生じます。(*2)

シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)

シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(JackieLou DLによるPixabayからの画像)

2.シニアの便秘の種類と原因

順天堂医院は、便秘外来を開設して約30年になります。順天堂医院大学院の小林弘幸先生によると、便秘の患者さんが年々増えているそうです。 (*3)

便秘は以下のように分かれます。(*4)

機能性便秘:病気由来ではなく大腸の機能低下などが原因で引き起こされる

  • 弛緩性便秘:大腸が波打つように動いて便を送り出す働き(蠕動運動 ぜんどううんどう)が低下したため、大腸内の便の通過時間が長くなり、水分が多く吸収されすぎる。その結果、便が固くなり、排便困難が生じる。シニアや寝たきりの方にこのタイプの便秘が多い。
  • 直腸性便秘:排便が抑制されると、同時に直腸が拡張され、 直腸の内圧が上がらずに便意を感じにくくなる。そのため、結果的に便秘となる。 排便を我慢する方だけでなく、寝たきりの方など、便意を我慢する習慣を続けた結果起きることが多い。
  • 痙攣性便秘:大腸のひだが同じ場所でけいれんを繰り返すため、便を肛門へと押し出す運動が上手く出来なくなり、便が大腸のひだとひだの間にとどまって進めないために生じる。排便に際して腹痛を伴う。
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    シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(Kai ReschkeによるPixabayからの画像)

器質性便秘:胃や小腸、大腸、肛門などに何らかの疾患があることで起こり、重篤かつ緊急を要することもある。 原因としては大腸癌などの腫瘍性病変腸閉塞Crohn病(*5)に伴う狭窄周辺臓器の癌などによる腸管の圧迫も原因となる。

薬剤性便秘:薬による副作用でおこる。 抗うつ薬抗コリン薬(ぜん息や前立腺肥大、パーキンソン病などの薬)、咳止めなどは大腸のぜん動運動を抑えるので、副作用で便秘になる。

症候性便秘:全身疾患に伴うホルモン分泌異常や神経系の異常により腸管のぜん動運動が弱くなり、便秘になる。原因となる全身疾患は糖尿病甲状腺疾患脳血管障害パーキンソン病自律神経疾患膠原病など。

ただの便秘と思っていると、背後に大腸癌など重大な病気が隠れている場合もあります。便秘が続くときには大腸の検査が必要です。

体重減少や血便、貧血や、がんの罹患率が上昇する50代以上の方、血縁者に大腸癌患者さんがいらっしゃる方は要注意です。

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シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(HansによるPixabayからの画像)

3.シニアの下痢と注意が必要な症状

下痢とは「大便中の水分が増加した状態」です。健康な普通の便の水分量は通常は60~70%ですが、80~90%に増えるとやや軟らかい便(軟便)~泥状便となり、90%以上になると水様便と呼ばれます。

下痢は日常的に起こる症状です。2週間以内に治る下痢は「急性下痢」、4週間以上続く下痢を「慢性下痢」といいます。

水分補給に気を付けて安静にし、しばらく様子を見ていれば多くの場合は改善します。しかし、下記の場合には、内科か消化器科を受診することをお勧めします。

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シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(bk0291によるPixabayからの画像)

☆注意が必要な症状

●今までに経験したことがないような激しい下痢

●便に血が混ざっている(血便)
(肛門に近い大腸からの出血の場合、真っ赤な鮮血便となる(「血便」)。胃や十二指腸からの出血は、小腸・大腸を通過するので時間が経っており、タール状の黒色便になる(「下血」)。)(*6)

●下痢以外に、気持ち悪さ(悪心)や嘔吐発熱がある

●排便後に腹痛が続く

●同じものを食べた人も同時に下痢になった

症状が悪化している、改善する気配がない

脱水症状がある

ただし、心臓病糖尿病腎臓病など持病のある方は上記の症状がなくても、早めにかかりつけ医を受診してください。(*7)

シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)

シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(Sabine RuhlandによるPixabayからの画像)

4.「急性下痢」のおもな原因

「急性下痢」の原因としてよくみられるものは以下の通りです。

●食べ過ぎ、飲み過ぎ:脂っこい食品、お酒、香辛料、人工甘味料、サプリメント(食物繊維やマグネシウムなど)

●感染症/食中毒:細菌が作り出した毒素やウイルス、寄生虫の増殖により腸が刺激されて炎症を起こす、O-157・ノロウイルス・サルモネラ菌・病原性大腸菌など

●生活習慣:ストレス、お腹の冷え

●体質:アレルギー反応、乳糖不耐症

●薬の副作用:特に抗生物質、そのほかに降圧薬便秘薬痛み止め胃薬など

下痢が4週間以上続く場合、危険な病気の兆候、例えば大腸癌の可能性もあります。

60代以降は便秘も増えますが、下痢も増えます。お腹がゆるくなりやすい体質だと勝手に判断せず、内科または消化器科の受診をお勧めします。

シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)

シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(Aart BeijemanによるPixabayからの画像)

5.シニアの下痢は、脱水に注意!

下痢は、脱水状態になりやすいです。また、下痢は1度で終わることは珍しく、複数回繰り返すので、水分と電解質(とくにナトリウムとカリウム)が失われます。

シニアは体の水分量が低下するため脱水症状になりやすく、ご本人も喉の渇きに気が付きにくいです。介護をなさっている方は、下痢を繰り返している時は注意深く体調を観察してください。

皮膚や口の中が乾いていれば、脱水状態です。経口補水液やスポーツドリンクなどを利用して、少量ずつこまめに摂るよう勧めてください。

下痢をしている時に水分を摂ると、さらに下痢を繰り返すのではと心配する方もいらっしゃいますが、脱水症状から死に至ることさえあります。命を優先させるという意味でも水分摂取が必要です。

前編はここまでです。

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シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(DesiréeによるPixabayからの画像)

よくある便秘や下痢でも、重大な病気の徴候という場合もあります。また介護に携わる家族にとって、排泄ケアはなるべく避けたいケアです。だからこそ、重篤な病気を見逃さないためにも内科または消化器科を受診なさってください。6月6日中編では、便失禁について解説します。

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シニアがこっそり悩んでいる便秘・下痢・便漏れの原因と治療法、さらに便失禁の専門治療ができる病院を紹介!(前編)(young jae kimによるPixabayからの画像)

補注

*1:「はじめに:ユニ・チャーム排泄ケア研究所は、2005年から排便ケアに関する調査・研究に取組んできました。便秘、下痢、便失禁に悩まされる高齢者の苦痛と、便の処理に携わる介護職の物理的・精神的負担を知ることが、おむつを開発するメーカーにとって欠かすことのできない基礎研究であると考えたからです。」排泄ケア研究所 https://www.carenavi.jp/ja/jissen/ben_care/syukan/life.html

*2:「排便のしくみ」 消化管障害に関する情報サイト おなかのはなし.com   https://www.onakanohanashi.com/patient/400.html

*3:「順天堂健康塾第17回 たかが便秘、されど便秘」https://juntendopr.sakura.ne.jp/letter/320/book/#target/page_no=100

*4:「 症状別病気解説   弛緩性便秘」 恩賜財団済生会 https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/flaccid_constipation/

*5:「Crohn病(クローン病、指定難病96)とは:大腸及び小腸の粘膜に慢性の 炎症 または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を 炎症性 腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といい、狭義にはクローン病と潰瘍性大腸炎に分類されます。」難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/81

*6:「「血便・下血」とは、消化管からの出血が肛門より排出される状態のことです。消化管のどの部分から出血しているかにより、便の色や状態は異なります」症状から病気を知る おなかの健康ドットコム https://www.onaka-kenko.com/symptom/sy_05.html#:~:text=%E8%82%9B%E9%96%80%E3%81%AB%E8%BF%91%E3%81%84%E5%A4%A7%E8%85%B8%E3%81%8B%E3%82%89,%E3%80%8D%E3%81%A8%E5%91%BC%E3%81%B0%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%EF%BC%89%E3%80%82

*7:「下痢の正しい対処法 」わかりやすい病気の話シリーズ42 一般社団法人 日本臨床内科医会 https://www.japha.jp/doc/byoki/042.pdf

以上

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