介護のコミュニケーション負担を減らす7つの方法+女性・男性別の声かけ例付き
医療法人社団風林会リゼクリニックが、2021年に40~50代の男女1,100名(男性550名/女性550名)を対象に実施した【老後・介護に関する調査】によると、介護経験者にとって「コミュニケーション」は女性で最大の負担、男性でも上位に入る結果となりました。
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これは、介護が単なる身体的サポートではなく、精神的・感情的な負担を伴うことを示しています。
以下にコミュニケーション負担を減らし、あなたの助けとなる、科学的に裏付けのある方法を紹介します。
1. 共感で安心を作る
やり方
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被介護者の気持ちや意見をまず受け止める
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否定や「急いで」とせかすことは避ける
効果
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認知症や高齢者介護の研究でも、共感的対応により不安や混乱が軽減され、攻撃的行動の発生が減少することが報告されています
Kitwood, 1997, Dementia Reconsidered
実践例
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「どうしたい?」と選択肢を提示して意見を尊重
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「疲れたね、それは大変だね」と相手の感情を言語化して返す
2. 言葉以外でも伝える(非言語コミュニケーション)
やり方
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表情、視線、身体の向き、ジェスチャーなどを意識して伝える
効果
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言語理解が難しい高齢者でも、安心感や意図の理解が向上
実践例
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手を握る、肩に軽く触れる
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穏やかな表情で、ゆっくりした動作を意識する
3. ルーティン化で混乱を減らす
やり方
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日常の動作や声かけの順序を決め、毎日同じ動作や手順を繰り返す
効果
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高齢者や認知症の方はルーティンを好むので、「同じ動作の繰り返し」で混乱や質問が減る
実践例
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食事や入浴の順序を毎日同じにする
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声かけの言葉を統一する(例:「手を洗いましょうね」)
4. 道具や環境を活用する
やり方
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視覚・聴覚サポートやコミュニケーションツールを活用
効果
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言葉だけに頼らず、理解度を高めることができる
実践例
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写真や絵カードで「食べたいもの」「行きたい場所」を伝える
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大きな文字・色分けで指示や予定を見やすくする
5. 介護者のストレスケアも忘れずに
やり方
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介護者の心身の健康を維持することで、自然とコミュニケーションの質も向上
実践例
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介護日誌に感情や困ったことを書き出し、家族で共有
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デイサービスや訪問ヘルパーを利用して、介護者の休息時間を確保
効果
介護者の心理的負担が減ると、怒りや苛立ちによる衝突が減る
Schulz & Beach, 1999, JAMA
6. 定期的に振り返る
やり方
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週1回程度、うまくいったこと・困ったことを振り返る
効果
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改善策が見えやすく、無用なトラブルを防げる
実践例
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「今日はこう話したら反応がよかった」
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「こういう言い方だと嫌がられた」とスムーズに運ばなかった場合は、改善して次に活かす
7. シチュエーション別の声かけ例
排泄介助
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「大丈夫、ゆっくりでいいですよ」
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「トイレに行きますか?それともおむつにしますか?」
食事介助
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「今日はおかゆとパン、どちらが食べやすいですか?」
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「一口ずつで大丈夫ですよ。ゆっくりでいいです」
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「上手に食べられましたね!」
入浴介助
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「お湯の温度はちょうどいいです。手を握ってサポートします」
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「先に髪を洗いますか?それとも体からですか?」
時間・スケジュール管理
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「今日の予定表です。赤が食事、青が散歩です」
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「朝起きたら歯磨き→顔洗い→朝食」と毎日同じ順番にする
精神的・感情面のケア
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「不安なんですね。わかります」
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「今日はこれをやりたいですか?」
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「靴を自分で履けましたね、すごいです」
8. 性別の組み合わせによるポイント
女性介護者 × 女性被介護者
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共感が伝わりやすい一方、感情のぶつかり合いも起こりやすい
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「どちらの服を着ますか?」など具体的な選択肢提示が効果的
女性介護者 × 男性被介護者
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具体的な指示や行動中心の声かけが理解されやすい
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ユーモアや軽い冗談で緊張を和らげると良い
9. 介護者がストレスをためない工夫
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デイサービスや訪問ヘルパーで休息を確保
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感情や困ったことを日誌に書き出す
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軽い体操やストレッチで身体ケア
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介護者同士の交流や相談窓口を活用
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小さな成功体験に目を向けて、自分で自分を褒める
まとめ
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性別や状況に応じた声かけ・非言語・ルーティン化・道具の活用で、コミュニケーション負担を減らせる
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介護者自身の心身のケアが、円滑なコミュニケーションの土台となる
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小さな工夫を積み重ね、明るく安心できる日々を目指しましょう
4つの米国コミュニティで募集された66歳から96歳まで、平均年齢約80歳の男女5,201人を対象に、平均4.5年間の追跡調査が行われました(出典:JAMA, https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/192209)。
その結果、配偶者など身近な人を介護している方は、介護をしていない人に比べて4年以内に死亡するリスクが63%高いという結果が示されています。
それほどまでに、介護は心と体の両方に大きな負担をもたらすものなのです。
だからこそ、完璧を目指す必要はありません。
今日ご紹介した小さな工夫――「共感して聴く」「笑顔で触れ合う」「同じ手順を繰り返す」――これらをひとつずつ積み重ねることが、介護する人とされる人の両方に穏やかな時間をもたらします。
どうか、ご自身の体と心を大切にしながら、
日々の中で少しでも笑顔の時間を増やしていってください。
あなたとご家族が、ストレスの少ない、明るくあたたかな日々を過ごせますように。
以上














