老人性てんかんの症状とは?認知症と違う5つのサインと治療法

65歳を過ぎたら老人性てんかんに注意友人のご両親がバスツアーに参加中、お父様が突然、激しいイビキをかきながら眠り込んでしまったそうです。

バスを止めて救急車で病院へ直行。

下された診断は「老人性てんかん」でした。

「てんかんは子どもの病気」と思われがちですが、実は高齢者がもっとも発症しやすい年代なのです。

今回は、見落とされやすい「高齢者てんかん(老人性てんかん)」の特徴と治療法をわかりやすく解説します。

70代の100人に1人が発症する現実

欧米の大規模な調査によると、若い世代のてんかん患者さんは約200人に1人(0.5%)。

これに対し、60歳〜65歳を過ぎると100人に1人〜1.5人(1.0%〜1.5%)へと急増します。さらに80代を超えると、約2%(50人に1人)に達するというデータもあります。

日本てんかん学会のガイドラインでも、加齢に伴って患者数が増加することが公式に示されています。

老人性てんかんってどんな病気?

てんかんは、脳の神経細胞が一瞬、過剰に興奮して「激しい電気嵐」が起きることで生じる、慢性的な脳の病気です。

若者のてんかんと大きく違うのは、「原因」「症状の現れ方」にあります。

1. 主な原因(約3分の2が脳のキズ)

若年層は原因不明のことが多いですが、高齢者は過去の病気による「脳のキズ(後遺症)」が原因の大半を占めます。

  • 脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)

    いちばん多い原因です。「自覚がないほどの軽い脳梗塞」の跡が原因になることもあります。

  • 認知症(アルツハイマー病など)

    認知症が進行する過程で脳の神経が変化し、てんかんを合併することがあります。

  • 頭部外傷や脳腫瘍など

2. 症状の特徴(とにかく見落とされやすい!)

「てんかん=泡を吹いて激しく倒れる」というイメージが強いかもしれません。

しかし高齢者の場合、そうした激しいけいれんはあまり起こりません(冒頭の例のように、激しいイビキをかくケースもありますが、実は少数派です)。

むしろ、以下のような「地味でわかりにくい症状」が中心です。

  • 急に動きが止まり、ぼーっとする

  • 口や手をモグモグ・もぞもぞさせる

  • その間の記憶がすっぽり抜ける

  • 日によって状態が大きく変わる

周囲が「いつもと何か違う」という小さなサインに気づくことが、何よりも重要になります。

見落とさないための「5つのサイン」

認知症の症状はグラデーションのようにずっと続きますが、てんかんは「発作の時間だけ、カチッとスイッチが切り替わる」のが特徴です。

日常の中で、以下のような様子がないか注意深く観察してみてください。

  • 【サイン1】急に返事をしなくなり、一点を見つめてぼーっとする

    会話中や食事中に突然動きが止まります。声をかけても、目の前で手を振っても反応せず、これが1〜3分ほど続きます。

  • 【サイン2】口をモグモグ、手をモゾモゾさせる(自動症)

    ぼーっとしている間、生気のない顔で口をクチャクチャさせたり、服のボタンや裾を意味なくいじり続けたりします。

  • 【サイン3】さっき起きたことの記憶がすっぽり抜けている

    本人は「意識が途切れていた時間」の記憶がありません。数分前に話したことを全く覚えていないため、周囲からは「急に認知症が進んだ」ように見えます。

  • 【サイン4】数時間、ぼんやりや混乱が続く(発作後朦朧状態)

    1〜3分の発作が終わったあとも、脳の興奮の余韻で、数時間から半日ほど「なんだかいつもよりボーッとしている」「辻褄の合わないことを言う」という状態が続くことがあります。

  • 【サイン5】日や時間帯による「波」が激しい

    「朝はあんなにしっかりしていたのに、昼前に急におかしくなり、夕方には元に戻っている」という激しいギャップが生まれます。

💡 家族ができる最高のサポートは「動画を撮る」こと

もし「怪しいな」と思う行動があれば、スマホでその様子を撮影しておきましょう。お医者さんに見せるだけで、一発で正確な診断につながることがあります。

高齢者てんかんの治療方法

治療の基本は、脳の興奮を抑える「抗てんかん薬」による薬物療法です。高齢者の場合、手術が行われることは原則ありません。

治療には、高齢者ならではの重要なステップがあります。

① 適切な「抗てんかん薬」の選択

高齢者は持病(高血圧や糖尿病など)の薬を飲んでいることが多いため、他の薬とバッティングしにくい、新しいタイプの抗てんかん薬(レベチラセタム、ラコサミド、ラモトリギンなど)がよく選ばれます。

② 「少量」から飲み始める(Start Low)

高齢者は薬を分解・排泄する機能が落ちているため、若者の「半分から3分の1」ほどの、非常に少ない量から慎重にスタートして副作用を防ぎます。

③ ゆっくりと増やす(Go Slow)

数週間から数ヶ月かけて、発作が出なくなる量まで少しずつ薬を増やします。一気に増やすと、ふらつきや強い眠気などの副作用が出るため、焦りは禁物です。

④ 毎日、規則正しく続ける

発作がピタッと止まっても、治ったわけではなく「薬で抑えている状態」です。自己判断で薬をやめると大きな発作を誘発して危険なため、毎日決まった時間に飲み続けることが大切です。

治療の見通し:予後はとても良い!

最後に、介護をがんばるご家族へ安心のデータをお伝えします。

高齢者てんかんは「薬がとてもよく効きやすい」という嬉しい特徴があります。

若者のてんかんは複数の薬を組み合わせてもコントロールが難しいケースが一定数ありますが、高齢者の場合は約7割〜8割の人が、最初に選んだ1種類の薬(しかも少量)だけで、発作を完全にコントロールできるようになります。

適切な診断さえ受けられれば、これまで通りの穏やかな生活や、認知症と誤解されていた状態からの回復が十分に期待できる病気です。

「おかしいな」と思ったら専門医(脳神経内科や精神科、老年病科など)を受診し、適切な治療につなげていきましょう。

参考:てんかんinfo( https://www.tenkan.info/about/elderly/

以上

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