あなたを励ます本、『吃音を生きる』

あなたを励ます本、『吃音を生きる』

あなたを励ます本、『吃音を生きる』

人は皆、他者からオーケーを出してもらう必要はないし、自分の幸せは他の誰かに左右されるものでもない。他人の思惑を気にしないようになりたいと思いつつ、吃音ゆえに、私は自分を取り巻く世界に対して意識過剰になっていた。(後略)』

この文章は、吃音(きつおん)が始まった幼少期から、悩み、苦しみ、闘いながら、吃音を自分の一部として受け入れるまでの軌跡を描いた英国人女性の自伝の一節です。

『吃音を生きる - 言葉と向き合う私の旅路』 キャサリン・プレストン著、辻絵里訳、東京書籍、2014年刊

この本によると100人に1人の割合で、吃音の方がいらっしゃるそうですが、私にはなじみがなく、深刻で重い内容の本では?と身構えて読み始めました。が、杞憂でした。明るくて、ユーモラスで、彼女を見守るご両親や友人たちが魅力的で、夢中になります。

特に惹かれたのは、家出未遂のエピソード。小学校低学年の夏休みに、吃音の子どものための2週間セラピーをご両親が勧めます。スピーチセラピーを一切拒絶していた彼女は、激怒の末、パディントンのスーツケースに衣類を詰め込み、家出準備を始めます。鬼のような形相で怒り、荒れ狂う娘に対し控えめに、荷造りのお手伝いを申し出たり、家出後の空腹を心配して「サンドウィッチはどう?」と話しかけるお母様。重くなったスーツケースを2階から居間へ運びおろした彼女に、お母様は娘のお気に入りのテディベアをそっと渡します。これで、陥落。彼女も家出を中止します。

あなたを励ます本、『吃音を生きる』

Alexas_FotosによるPixabayからの画像

突然始まった吃音に対し、怒り、憤り、悪戦苦闘し、拒絶し、絶望し、懇願し、混乱状態で戦う彼女と、懸命に見守り、助けようとするご両親と友人たち。特にご両親の愛情がヒシヒシと伝わります。

吃音さえなければ、自分の人生はパーフェクトと思っていた彼女も、やがて世間体や世間一般の見方という呪縛から解放され、吃音を自分の一部として受け入れるようになります。この彼女の深くなっていく心が発する言葉の数々が、私の心に響きます。

『(前略)誰にとっても、成功や強さとは、欠点や弱さを持ちながらもありのままの自分でいることから生まれるものだと思うから。私たち1人1人にとっての成功とは、自分は今のままで十分だと信じることから生じてくる。(後略)』

『(前略)いろいろな意味で、私の吃音は私の最良の部分である。そのために強くなることができたし、これまで戦ってきた日々のあらゆる瞬間を味わうことができた。(後略)』

そして、エピローグを彼女はこう締めくくっています。

人と異なる声、人と違う生き方に正面から取り組んだ歳月を経て、私が学んだのは、最終的に私たちを美しい存在とするのは、私たちの持つ不完全さである。不完全さこそが、私たちを人間らしくし、ついには明確な存在にしてくれるのだ。

この本は、不完全だからこそ、もっと美しい人間になれると励ましてくれます。生きることが辛い時、闘い続けて疲れてしまった時、この本は、きっとあなたを励ましてくれます。

あなたを励ます本、『吃音を生きる』3

あなたを励ます本、『吃音を生きる』2  撮影:浅海禎子

 

 

 

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