女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』

女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』

女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』(Raffaele Zandonella NeccaによるPixabayからの画像 )

あなたの人間関係は良好ですか? もし何かひっかかりを抱えていたら、この本をあなたにお勧めします。母と娘の問題に限らず、女性が生きづらいのは、女性に従属や従順を求める日本の仕組みが元凶と教えてくれます。

『母と娘はなぜ対立するのか - 女性をとりまく家族と社会』阿古真理(あこ・まり)著、2019年9月発行、筑摩書房、ISBN978-4-480-86467-3

この本はB6版、254ページの小さな本ですが、とても深くて緻密です。長年、お母さまとの関係に悩んできた著者の阿古真理さんがご自身の体験を入り口に、生活のすみずみまで広がっている女性を縛り付ける日本の社会構造の問題点をあぶり出しています。母と娘の関係だけではなく、女性にも男性にも生きづらさを感じさせるのは、企業利益を優先させてきた「昭和フォーマット」が元凶だと。

女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』

女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』(beValorousによるPixabayからの画像 )

内容は3章に分かれます。最初の『母を知らない娘 娘がわからない母』の章では、最近流行の「毒親」ではなく、『母親ハラスメント=ママハラ』という考え方を示し、実例をあげて『ママハラ』を解説。そして、孤独な育児の中で傷ついていた母親たちと、過度な期待と呪縛に傷ついていた娘の関係の背後にあった問題を明らかにしてくださいます。

厳しいしつけの裏にある理由、「嫁」としての商品価値を高めるための学歴、母親たちの孤独な育児の問題、戦争に利用された母性愛、昭和の主婦の「ていねいな暮らし」の呪縛、「手に職をつけなさい」の呪縛・・・

阿古真理さんは、このように書いています。

『娘たちに仕事をしてほしいと言いながら、しかし、結婚して子どもを産み育てることを最優先すべきだと信じ込んでいる母親たちの要求は、アンビバレンツである。(中略)母の命令が絶対だった時代があるから、娘には母の無茶ぶりを聞き流すことは難しい。母にとっての「いい子」でありたい、認めてもらいたい。母を理想の女性と心のどこかで認めている娘は、適当にいなし反論しながら、しかし、専業主婦の母親のように家庭に手が回らない自分に引け目を感じてしまう。(中略)ミレニアル世代は、自分の母親が取り組まなかった家事の省力化と夫婦シェアを実現するため、闘わなければならない羽目に陥っている。』(81ページより引用)

女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』

女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』(JulietkjulietによるPixabayからの画像 )

次の『母娘をとりまく社会』では、戦後、郊外に住む核家族が企業社会に翻弄されて、母親はうっぷんを溜め、父親は孤独に苦しみ、娘の摂食障害や息子の引きこもりを生み出した、日本社会の仕組みを解明します。

1966年(昭和41年)にやっと、住友セメントが定めていた労働契約「結婚または満35歳に達した時は退職する」を公序良俗に反するとして東京地方裁判所がこの制度の無効を言い渡します。けれど、国連で女子差別撤廃条約が採択された1979年(昭和54年)、政府自民党は「日本型福祉社会」を発表。『女性に主婦として、つまり基本的に報酬抜きで家事・育児・介護を全部背負わせ、男性が仕事に専念できるようにすることが、日本的な福祉だと論じた。』そうです。(132ページより引用)

さらに1985年(昭和60年)、年金改革を断行。この時から、会社員か公務員の配偶者だけが、保険料を支払わなくても年金を受け取れる制度が始まりました。翌1986年には、労働者派遣法も施行。年金制度で男性を企業戦士として仕事に専念させ、労働者派遣法で人間を安く使えて簡単に辞めさせることができる制度が完成した訳です。

また、養育費の強制徴収制度がない日本では、離婚後に元夫から養育費が支払われている女性は約2割弱だそうです。さらに、家庭裁判所で普及している養育費の算定方法にも問題があるそうです。中立であるべき家裁が算定する養育費が非常に低額なため、離婚後の母と子は自動的に貧しくなるように設計されていると。離婚の自由さえ、女性には選べない仕組みがここにあります。

女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』

女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』(glacika56によるPixabayからの画像 )

『めんどくさい「女」も、ママハラをする女性も、日々をむなしく過ごす主婦やOLも、実は男性中心につくられ、女性をサポート役にするしくみに問題の原因があった。女性を分断しているのは、女性も自分の人生を生きる同じ人間であることを忘れ、自分たちを助けてほしい、ラクをさせる役に回ってほしい、と願う男たちがつくった社会である

 主体的に生きないようにしくまれた社会に、女性たちは暮らしている。ストレスがたまって嫌な「女」になる危険は女性なら誰にでもある。』(168ページより引用)と阿古真理さんは書いています。そして、嫌な「女」にならないための処方箋を知りたいと思われたら、ぜひご一読ください。

漫画やテレビドラマ、本、雑誌、当時のセンセーショナルな事件を例に、当時の社会風潮、そして昭和の家族がみなそれぞれに苦しんでいた様子が浮かび上がります。緻密に書き上げられたこの本は、手ごたえのある一冊です。

蛇足ですが、わたしもこの本を読んで初めて理解したことがあります。それは、転職を繰り返していた私の根底には、助手や補助職へと私を追いやる会社や組織と現状に胡坐をかいた男たちへの怒りと闘争心があったのだと、今頃になってやっと気が付きました。

女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』

女性が主体的に生きないよう仕組まれた日本社会が元凶だった『母と娘はなぜ対立するのか』(Hans BraxmeierによるPixabayからの画像 )

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