『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!(silviaritaによるPixabayからの画像)

この本は、傘寿(80歳のお祝い)を超えた脳神経外科医と脳神経内科医のお二人が、認知症の仕組みや症状、特に認知症の方が見ている風景や流れている時間の速さについて理解を深め、大らかさを広げるような介護がもっと行われることを願って書き上げられました。この素敵な本を紹介します。

『認知症の人が見る景色 - 正しい理解と寄り添う介護のために』中村重信(なかむら・しげのぶ)・梶川博(かじかわ・ひろし)共著、2021年4月発行、(株)幻冬舎ルネッサンス新社、定価1,400円+税、ISBN978-4-344-93366-8 

本のサイズは四六判(127×188mm)で、163ページ。内容は、第一部と第二部に分かれ、第一部では「認知症の人が見る景色 - 認知症と時間・場所」について三章に分けて説明されています。第二部は、「認知症についてもう少し考えてみよう」と題され、八章に渡って正しい理解のために認知症の定義からタイプ別の予防と治療について説かれています。

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!(Francesco NigroによるPixabayからの画像)

特に第一部は、「はじめに」でこう書かれています。

『(前略)認知症の人は、もの忘れに加えて、当人の暮らしを取り巻く環境や世界(景色)の見え方が、通常の人とは違うようです。認知症の人が見る景色がどんなものか、今まであまり考えられたことはありませんでした。

この本では、これまでに明らかになった認知症研究の成果や、認知症の人の生活を基に、当人が見ているであろう景色を描いてみたいと思います。

認知症の人が見る景色を理解して頂いたうえで、認知症の人に接したいものです。認知症の人の心に寄り添うことにより、結果としてよりよい介護に繋がるでしょう。』(15ページより引用) 

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!(Kim HeimbuchによるPixabayからの画像)

この本によれば、認知症の方々は過去を忘れ、未来に不安を感じていらっしゃるそうです。時や場所を理解する脳の働きが若い時のように働かないため、健常者と違った世界が見えています。そのため認知症の方は、見える景色が昔と違うので不安になり、暮らしにくくなり、万事に戸惑いがちになるそうです。(46ページより要約)

たとえば、アルツハイマー型認知症の方はリン酸化タウというタンパク質が溜まりすぎて神経細胞、特に場所を認識する脳の神経細胞を壊すため、自分の居る場所が分からなくなり、常に不安を感じているそうです。

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!(Gerd AltmannによるPixabayからの画像)

また、認知症で最初に症状が現れるのが時間感覚だそうですが、その理由はこうです。

『進行した認知症の脳波のリズムは緩やかで、脳の活動は不活発であることが伺えます。(中略)勝手時間(認知症の方が感じている時間感覚を指す造語)は認知症の種類により違いがあり、壊れる部位により時間信号化が遅くなったり、注意力や物覚えが衰えたりします

認知症の人のなかには意識障害やうつ状態になることもあります。そのような場合、脳の新陳代謝は遅くなり、時間はさらに速く経ちます。(後略)』(49ページより引用)

このように、仕組みや原因を理解できると、健常者の時間や習慣に合わないからと叱ったり、矯正しようと考えることが間違っているらしいと気が付きます。『認知症の人は衰えていく自分を意識下で感じ、時間を無駄にしたくない「あせり」を感じているのかもしれません。』(64ページより引用)と言われれば、健常者の都合を押し付けることが申し訳ないと感じます。

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!(JenniferPBCによるPixabayからの画像)

そして、この本には介護のヒントが隠れています。

たとえば、『(前略)「まだ、11時ですよ!さっき朝ごはんを済ましたばかりなのよ。しっかりしてよ!」と叱るんじゃなく「お昼は、玉子焼きとお味噌汁にしましょうね。用意をしますから、待っていて」と、さりげなく受け答えをしましょう(後略)』(79ページより引用)とか。

認知症の方の時間が早く進みすぎるから朝ごはんを済ませたばかりで、昼ご飯の催促をしたり、脳が若い時のようには働かないからご飯を食べたことを忘れるのは仕方ないです。もしもこの本のようにさりげない受け答えが出来たら、認知症の方も介護する方ももっとお互いに明るく楽しい時間を過ごせるのではないでしょうか?

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!(よるPixabayからの画像)

さらに第二部では、アルツハイマー型や血管性など種類別の認知症の予防と治療方法も詳しく解説されています。

いま介護に携わっていないあなたにも、この本をお勧めします。

☆『認知症の人が見る景色 - 正しい理解と寄り添う介護のために』https://www.gentosha-book.com/products/9784344933668/

☆中村重信 幻冬舎 Gold LIFE Online https://life.gentosha-go.com/list/author/%E4%B8%AD%E6%9D%91%20%E9%87%8D%E4%BF%A1

☆梶川博 翠清会梶川病院 会長あいさつ http://www.suiseikai.jp/%e9%81%8e%e5%8e%bb%e3%81%ae%e3%81%94%e6%8c%a8%e6%8b%b6/president_greeting.html

以上 

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!

『認知症の人が見る景色』は、時・所の常識を超えてお互いが楽しく暮らせる世界を創ろうと提案します!(Henriet HaanによるPixabayからの画像)

Follow me!