65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!

65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!

65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!(Alexas_FotosによるPixabayからの画像)

メタボとか、メタボ検診でお馴染みの内臓脂肪ですが、高血圧や2型糖尿病を発症するリスクを高めるだけではなく、認知症の発症リスクも高めるという論文が発表されました。弘前大学大学院医学研究科の中路重之特任教授と、花王ヘルス&ウェルネス研究所の研究グループによるこの研究を分かりやすくご紹介します。(花王のプレスリリースと論文のURLは最下段に明記しております)

1.内臓脂肪とは

内臓脂肪は、胃、腸などの臓器のまわりにつく脂肪のことです。体のエネルギーが不足した際に素早くエネルギーに変換される脂肪です。けれど、脂肪から生理活性作用のある物質「アディポカイン」が分泌され、内臓脂肪の蓄積量が多くなるにつれて「アディポカイン」分泌異常が起き、高血圧、脂質異常、高血糖などを生じ、メタボリックシンドロームと呼ばれる動脈硬化が進行しやすい状態を引き起こすリスクにつながります。さらに内臓脂肪は、認知症の危険因子の1つとしても報告されています。

ところが、5000人以上の日本人を対象とした最近の研究では、内臓脂肪の蓄積が軽度認知障害を予防することが示されました。(Visceral Fat Accumulation Is Associated with Mild Cognitive Impairment in Community-Dwelling Older Japanese Women) つまり、内臓脂肪と認知機能との関連はまだよく解明されていません。

65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!

65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!(Shutterbug75によるPixabayからの画像)

2.認知症について

認知症は、予防も治療もできないと考えられてきました。けれど、理論的には予防可能であるとも報告されています。認知症の予防において、軽度認知障害の段階での予防の重要性が高まっています。なぜなら、軽度認知障害の患者さんの約40%が5年以内に認知症を発症し、患者さんの15〜40%が健康な状態に戻ります

ですから、軽度認知障害の段階で発症を発見し、認知機能に影響を与える要因を取り除けば健康な状態に戻る可能性が高まります。

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65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!(RitaEによるPixabayからの画像)

3.認知症と脳の構造異常

加齢等によって血のめぐりが悪くなり、脳の深いところにある大脳白質に起こった虚血(器官が酸素不足になった状態)を大脳白質病変と言います。無症状であることが多いのですが、白質病変部分が多くなる(グレードが高くなる)と、認知機能が低下することが知られています。この大脳白質病変の他にも、認知症患者の脳にはさまざまな構造異常が発生することが報告されています。

そこで、内臓脂肪と脳の構造異常の関係を調べるために、脳萎縮、大脳白質病変、側脳室周囲病変、血管周囲腔拡大、脳出血についても調べました。

65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!

65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!(islandworksによるPixabayからの画像)

4.調査方法

今回の花王の調査では、青森県弘前市にお住まいで、2016~2017年に実施された「弘前市いきいき健診」に参加された方を対象に、内臓脂肪と認知機能の関係性について調べました。年齢は65歳以上に絞り、65~80歳の男性937人(平均年齢70.3歳)、女性1427人(平均年齢69.8歳)、合計2364人がこの研究に協力なさいました。

  • 内臓脂肪は内臓脂肪計を用いて測定し、得られた内臓脂肪量の中央値を基準に、内臓脂肪が多いグループと少ないグループに分けました。
  • 認知機能を評価するためにミニメンタルステート検査(MMSE)が、訓練を受け経験を積んだ臨床医によって実施されました。
  • 脳の構造は、核磁気共鳴画像法(MRI)を用いて、脳萎縮、白質病変、側脳室周囲病変、血管周囲腔拡大、脳出血について調べました。
    65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!

    65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!(IhtarによるPixabayからの画像)

5.結論

  • 内臓脂肪が多いグループは、少ないグループと比較して、認知障害の発生率が高くなる
  • 内臓脂肪が多いグループは、少ないグループと比較して、脳萎縮の発生率が高い
  • 内臓脂肪が多いグループは、少ないグループと比較して、大脳の白質病変および血管周囲腔拡大(脳と血管の間に老化等によって隙間ができて、そこに血液成分や髄液などの水分が貯留した状態)が多く発症している

つまり、65歳以上で内臓脂肪が多い人は、認知機能が低下しており、脳の構造異常も発生していることがわかりました。

では、内臓脂肪が多い方はどうすれば良いのでしょうか?答えは、内臓脂肪を減らすことです。

内臓脂肪を減らすことは、高血圧などの循環器疾患リスクを減らすだけでなく、認知症リスクを減らす可能性があります。内臓脂肪を落とすために、ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動の継続を目指しましょう。

65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!

65歳以上で内臓脂肪が多いと、認知症発症リスクが高くなることが判明!(jacquisosaによるPixabayからの画像)

謝辞:弘前大学大学院医学研究科の中路重之特任教授と花王株式会社ヘルス&ウェルネス研究所の共同研究に関わったすべての研究者のみならず、患者さんを含むボランティアの方々、ご協力なさった全ての皆様に感謝するとともに、この研究の進展・発展を祈念します。

☆Association between Visceral Fat and Brain Structural Changes or Cognitive Function https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8391376/

☆Visceral Fat Accumulation Is Associated with Mild Cognitive Impairment in Community-Dwelling Older Japanese Women https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32115619/

☆発表資料「65歳以上の人において、内臓脂肪と認知機能が関係していることを発見」https://www.kao.com/jp/corporate/news/rd/2021/20211125-001/

☆【プレスリリース】花王㈱、弘前大学の研究グループが、65歳以上の人において、内臓脂肪と認知機能が関係していることを発見しました。https://coi.hirosaki-u.ac.jp/2021/11/post-10988/

☆弘前大学大学院医学研究科 https://www.med.hirosaki-u.ac.jp/web/index.html

☆花王グループ研究開発 https://www.kao.com/jp/corporate/research-development/

以上

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