認知機能に関する3つの質問で、要介護認定になるリスクを予測できることが判明!
神戸大学が、約8万人の70歳代の神戸市民を対象とした生活状況についての質問票を用いて、認知機能に関連する3つの質問への回答で、要介護認定になるリスクを予測できると結論づけました。この論文を紹介します。
神戸市役所は 70 歳以上の市民を対象に、認知機能に関する 3 つの質問を含み、生活状況全般を調べる 25 項目の質問票「基本チェックリスト」を郵送する事業を定期的に行っています。
神戸大学の共同研究グループは、2015年に要介護認定を受けていない神戸市在住で70歳以上の高齢者8万人弱を対象に、「基本チェックリスト」の回答結果と2015~2019年に発生した要介護認定データを照合して、要介護認定発生との関連を調べました。その結果は、以下の通りです。
☆「基本チェックリスト」の郵送から4年後までの間に要介護認定になった高齢者は、回答しなかった人の方が多い。
「基本チェックリスト」に回答しなかった人 12.5%が要介護認定になった
「基本チェックリスト」に回答した人 8.4%が要介護認定になった
☆回答者のうち、認知機能に関する3問で好ましくない回答が多いほど、要介護認定の発生率が高い。
好ましくない回答数:0 発生率:5.0%
好ましくない回答数:1 発生率:8.4%
好ましくない回答数:2 発生率:15.7%
好ましくない回答数:3 発生率:30.2%
☆認知症を伴う要介護認定に限定した発生率も、認知機能に関する3問で好ましくない回答数の増加につれて上昇。
好ましくない回答数:0 発生率:3.4%
好ましくない回答数:1 発生率:6.5%
好ましくない回答数:2 発生率:13.7%
好ましくない回答数:3 発生率:27.9%
では、このように要介護状態を予測できる「認知機能に関する 3 つの質問」は、どのような内容でしょうか?
質問18:周りの人からいつも同じことを聞くなどの物忘れがあると言われますか?(好ましくない回答:はい)
質問19:自分で電話番号を調べて、電話をかけることをしていますか?(好ましくない回答:いいえ)
質問20:今日が何月何日か分からないときがありますか?(好ましくない回答:はい)
この質問であれば、家族が日頃の様子から判断することも出来ると思います。この質問の好ましくない回答に当てはまるようであれば、早めに診察を受けてはいかがでしょうか?
わが家の場合ですが、父の母も、父の姉も認知症でしたから、家族みんなで父の認知症発症を心配していました。けれど「もの忘れ外来」で、“年齢相応の忘れっぽさです”との診断にすっかり安心。数々の異変を見逃した上に、脳の運動機能部位が特に萎縮していたため、父が大腿骨を骨折。脳の画像診断で、アルツハイマー型認知症とやっと判明した時には、初期を過ぎていました。
現在は、「アリセプト®」の他にも「レミニール®」「イクセロンパッチ®・リバスタッチ®」「メマリー®」などもあり、エーザイ認知症新薬「レカネマブ」も承認が待たれます。家族の認知症を疑うことは、辛くて怖くて、目を逸らしたくなります。けれど、早期の治療と療養がご本人にとっても家族にとっても、より良い状況をもたらします。この「認知機能に関する 3 つの質問」をご活用ください。
謝辞:神戸大学、公益財団法人生物医学研究振興財団、神戸学院大学、WHO の共同研究プロジェクトに携わった研究者、ご協力なさった全ての皆様に感謝するとともに、この研究の進展・発展を祈念します。
☆「Implication of using cognitive function-related simple questions to stratify the risk of long-term care need: population-based prospective study in Kobe, Japan」Health Research Policy and Systems https://health-policy-systems.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12961-022-00920-4
☆「簡単な質問票で要介護リスクを推定―神戸市でのプロジェクトが学術誌に掲載」WHO健康開発総合研究センター https://extranet.who.int/kobe_centre/ja/news/BMCsupplement_Kobe_dementia
☆「【論文】神戸市の高齢者を対象とした、要介護状態発生のリスクの予測に関する前向きコホート研究の研究結果が、TRIの小島伸介を筆頭著者、菊池隆を共著者としてHealth Research Policy and Systemsに掲載されました」神戸医療産業都市推進機構 医療イノベーション推進センター(TRI)https://www.tri-kobe.org/news/detail/id=664
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