難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!(tung256によるPixabayからの画像)

「難聴」は、認知症の予防可能な12の危険因子の中で最大の危険因子です。そして、75歳以上では約半数が難聴に悩んでいます。この「難聴」と認知症の関連や補聴器使用の効果についての研究と、補聴器購入費を医療費控除できる手順を紹介します。(このブログでは、「難聴」も「聴覚障害」も加齢性難聴です)

1.難聴の高齢者は認知症になる可能性が高くなり、補聴器を使用すれば認知症になる可能性が下がる

ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームは、65 歳以上のメディケア受益者2,413 人を対象とし、自宅でのテストとインタビューを通じて参加者からデータを収集。解析の結果は、以下の通り。

中度または重度の難聴の高齢者は、認知症有病率が61%に達する

中度または重度の難聴の高齢者で補聴器使用の場合は、認知症有病率が32%低下した

☆難聴が、時間の経過とともに認知症のリスクを高める

☆難聴の治療により認知症リスクが低下する

「もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らが、難聴と認知機能低下との強い関連を見いだしました」より引用

「もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らが、難聴と認知機能低下との強い関連を見いだしました」より引用

2.難聴の高齢者は、認知機能低下を1.6倍多く併発し、時計を正しく描くテスト(*1)の正答率が聴覚障害に連動して低下

国立長寿医療研究センターの研究グループは、2018年に東京都板橋区と鹿児島県垂水市で実施された地域在住高齢者の健診データを対象として、聞こえについてのアンケート調査と認知機能との関連を解析。(対象者1602人、女性61.9%、平均年齢74.3歳)その結果は以下の通り。

「アルツハイマー病患者における時計描画の特徴 ―量的および質的評価による検討」より引用

「アルツハイマー病患者における時計描画の特徴 ―量的および質的評価による検討」より引用

☆聴覚障害は、時計を正しく描くテスト(*1)で評価する認知機能の中の「概念障害」「視空間認知障害」「前頭葉機能障害」などの低下と関連する。

補聴器非使用者(1,512人)では、時計を正しく描くテスト(*1)の正答率が聴覚障害に連動して低下した。

☆補聴器非使用者の3語想起テスト(*2)の正答率は、会話状況に関連し、聴覚障害に関連しなかった。

☆補聴器非使用者の中で、難聴者は時計を正しく描くテスト(*1)の正答率が低いが、3語想起テスト(*2)の正答率に差がない。

☆補聴器非使用者では、3語想起テスト(*2)の正答率が1 人~集団の会話状況に連動し、聴覚障害の程度によって変化しない。

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!(Peter HolmesによるPixabayからの画像)

時計を正しく描くテスト(*1)は、認知機能障害の全般的評価だけでなく、「概念障害」「視空間認知障害」「前頭葉機能障害」などを評価できるそうです。

また、3語想起テスト(*2)は認知機能の中の記憶、短期記憶(ワーキングメモリ)を評価します。

つまり、難聴=聴覚障害は、時計を正しく描くテスト(*1)が評価する認知機能の中の「概念障害」「視空間認知障害」「前頭葉機能障害」などに関連します。

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!(StockSnapによるPixabayからの画像)

3.対策は、聴覚検査と補聴器の導入

国⽴⻑寿医療研究センターのホームページでもこのように記載されています。

『研究の意義 難聴は認知症のリスクであり、補聴器を用いることで認知症の発症リスクを軽減できる可能性が示唆されています。

今回の新知見は、適切に補聴器を導入すれば、認知症の発症を軽減させうる可能性を示しています。

また、慶応義塾大学耳鼻咽喉科の小川郁先生は論文「認知症と加齢性難聴 ―認知症予防対策における補聴器の役割―」でこのようにまとめています。

難聴は認知症の危険因子であり,難聴への介入は認知症の予防法として最も有効であることが明らかになっている。従って,少なくとも軽度認知障害の時点で難聴がある場合はできるだけ早く補聴器の装用など対策を考える必要がある。

もしもあなたが45歳以上で、毎年受診している健診に聴覚検査がない場合は、年に1回の聴覚検査受診をお勧めします。

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!(Debora MonteiroによるPixabayからの画像)

4.高額だからとっても助かる補聴器購入費の医療費控除について

補聴器って、ハイテク医療機器なんですね。形状や機能の差により、補聴器1台(片耳分)でも3~50万円もの幅がありました。

さらに補聴器は、装着すればすぐに昔のような聞こえ方が蘇るわけではないそうです。補聴器をつけて上手に聞き取れるようになるために、数ヶ月も補聴器を装着して聞くトレーニングが必要らしいです。同時に、専門スタッフによる定期的な調整も不可欠。

つまり、補聴器販売店の高額価格には、補聴器購入後の補聴器の調整、トレーニングのサポート、クリーニングや定期的なメンテナンス費用も含まれているらしいです。

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!(thedanwによるPixabayからの画像)

そこで、高額だからこそ有難い「医療費控除」を受けるための手順をご紹介します。

1.まず補聴器相談医(*3)を受診し、必要な問診・検査を受ける。

2.補聴器相談医に「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」の必要な事項を記入していただき、受け取る。

3.補聴器販売店に行き、「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」を提出し、補聴器を試用の後、購入する。

4.「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」の写しと補聴器の領収書を販売店から受け取り、当該年度の確定申告における医療費控除対象として申請し、保存する。(税務署から求めがあった場合は、これを提出。)(委員会からのお知らせ 「補聴器購入者が医療費控除を受けるために」一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会ホームページより)

40代から聴覚の衰えは始まります!60代になると「軽度難聴」レベルの音域が増え、70歳を超えるとほとんどの音域で「軽度難聴」〜「中等度難聴」に低下します。75歳以上では約半数が難聴に悩んでいます。認知症になる前に、どうか補聴器の導入を検討なさってください。

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!

難聴の高齢者は、認知症有病率が61%!難聴でも補聴器使用で認知症有病率は32%に低下!(PX41-MediaによるPixabayからの画像)

(*1)時計を正しく描くテスト

「アルツハイマー病患者における時計描画の特徴 ―量的および質的評価による検討」chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/054020109.pdf

(*2)3語想起テスト

第3章 認知症の診断 4.認知機能検査 4.Mini-Mental State Examination(MMSE)https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/ninchisho-yobo-care/h30-3-4.html

(*3) 補聴器相談医とは、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会が委嘱した耳鼻咽喉科専門医。適切な補聴器医療を推進する。

「補聴器相談医名簿」https://www.jibika.or.jp/modules/certification/index.php?content_id=39

参考

☆「New Study Links Hearing Loss With Dementia in Older Adults」Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health  https://publichealth.jhu.edu/2023/new-study-links-hearing-loss-with-dementia-in-older-adults

☆「Hearing impairment is associated with cognitive function in community-dwelling older adults: A cross-sectional study」ScienceDirect https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0167494320302995

☆「もの忘れセンターの佐治直樹副センター長らが、難聴と認知機能低下との強い関連を見いだしました」国⽴研究開発法⼈国⽴⻑寿医療研究センター もの忘れセンター  https://www.ncgg.go.jp/hospital/monowasure/news/20201130.html

☆「難聴によって認知症のリスクが高くなる!?」一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 https://www.jibika.or.jp/owned/hwel/news/001/

☆「認知症と加齢性難聴 ―認知症予防対策における補聴器の役割―」慶應義塾大学耳鼻咽喉科 小川 郁 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology/64/1/64_37/_pdf 

以上

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