軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!普通に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!健常に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!普通に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)(Olga OginskayaによるPixabayからの画像)

アルツハイマー型認知症は、進行性の病気です。小康状態から突然、階段を踏み外すみたいに、急激に悪化します。発症してしまったら、進行を止める薬も、完治できる薬もまだありません。だからこそ認知症の手前、軽度認知障害(MCI)を発見できたら、素晴らしい幸運です。対策を講じれば、約16~41%の方が、年齢相当の普通の状態に戻れます!

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!健常に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!普通に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)(玲 闫によるPixabayからの画像)

4.普通に戻るための対策②:喫煙・飲酒・睡眠障害・難聴を放置するのは危険です!

① 喫煙していると、認知症の発症するリスクが高くなる

喫煙量が多く、喫煙期間が長いほど、「言葉の流暢性」や「記憶」などの認知機能が低下する危険があります。また、タバコは癌や心疾患のリスクも高めます。

ある調査では、禁煙を4年以上続けている人と喫煙歴のない人は、喫煙している人と比べて、認知症を発症するリスクが低いことが判明しています。

健康保険が使える禁煙外来・禁煙クリニック一覧のアドレスを下に貼り付けます。

☆禁煙治療に保険が使える医療機関情報最新版 (一般社団法人 日本禁煙学会作成) http://www.nosmoke55.jp/nicotine/clinic/

②「軽度認知障害(MCI)」の場合、健常者より少ないアルコール量192g以上で認知症の危険性が高まります!

長年飲酒を続けると、記憶と関連の深い海馬とよばれる脳の部位が萎縮します。

「軽度認知障害(MCI)」の方では、1週間に192g以上(アルコール度数7%のお酒500mL缶を約7本)のアルコールを摂取すると、認知症発症の危険性が高まります。

健常者よりも少ないアルコールで認知症発症の危険が高まるので、注意が必要です。

禁酒外来や節酒外来、アルコール依存症の相談ができる専門病院や保健所、精神保健福祉センターを検索できるアドレスを下に貼り付けます。

☆アルコール依存症治療ナビ.jp  専門医療機関・行政機関検索 http://alcoholic-navi.jp/search/

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軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!普通に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)(SilviaによるPixabayからの画像)

③不眠などの睡眠障害があると、認知症を発症するリスクが約1.2倍になります!

睡眠時間が5時間未満の場合と8時間以上の場合は、認知症を発症するリスクが高くなります。

また睡眠時無呼吸症候群の人は、認知症のリスクが約2.4倍になります。

なかなか寝付かれない、寝ても途中で目が覚めてしまう、朝早くに目が覚めてしまう等のの症状があるときは、最寄りの内科、心療内科、精神科への受診をお勧めします。

また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬(*5)は、認知症のリスクを高める可能性が報告されています。この薬を服用される場合は、かかりつけ医と相談することをおすすめします。

④耳が聞こえにくいと、認知症を発症するリスクが1.9倍になります

50歳以上で聴力が低下している人は、健常者よりも認知機能が低下していることが判明しています。

耳が聞こえにくいのに補聴器を使用していないと、認知機能が低下しやすいです。しかし、補聴器を適切に使用することで、認知機能の低下を遅らせられる可能性があります。

補聴器の使用と認知機能の関連を調べた研究では、補聴器の長期間の使用が認知機能の改善に役立つ可能性が報告されています。

難聴の原因を調べるには、耳の診察と聴覚検査が必要なので、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!健常に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!普通に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)(MySTAR ProductionによるPixabayからの画像)

5.普通に戻るための対策③:65歳以上では、定期的な運動が認知症を予防し、認知機能を向上させます!

①定期的な運動が、認知症を予防します

健常な65歳以上を対象とした研究では、運動習慣がない人は週2~3回以上の運動習慣がある人と比べて、認知症になるリスクが1.82倍高いことが報告されています。

ウォーキングよりハードな運動(早歩きなど)を週3回以上継続している人は、運動習慣のない人(週1日以下)に比べて50%も認知症になりにくいことがわかっています。

ハードな運動が難しい場合は、散歩程度の運動でも週3回以上続ければ、運動習慣のない人に比べて約33%も認知症になりにくいことがわかっています

②運動が認知機能を向上させます!

65歳以上で「軽度認知障害(MCI)」の患者さんを対象に、有酸素運動や身体活動の促進を検討した研究では、全般的認知機能だけでなく複数の課題を行える「実行機能」や「言語」、さらに「処理速度」などの認知機能の向上が認められました。

75歳以上では、認知機能の中でも、「実行機能」、「即時記憶(短期的な記憶力)」、「推理」に対して有酸素運動などの身体活動が、有効であることがわかっています。

運動をすると、脳の血流量が増加したり神経細胞(*6)が新たなネットワークを作り上げるといわれています。また、運動によって「神経栄養因子」(*7)と呼ばれるたんぱく質が増え、脳の容積が大きくなることもわかっています。

さらに運動は、認知機能の低下に影響を与える「うつ症状」を減らしたり、「睡眠」を良好にする効果もあります。

以上のような様々な効果が同時に起こることで、認知機能が向上すると考えられます。

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!健常に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!普通に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)(Дарья ЯковлеваによるPixabayからの画像)

③「軽度認知障害(MCI)」を改善させたいなら、コグニサイズ!(*8)

1種類の運動だけでなく複数の種類による運動プログラムが、65歳以上の「軽度認知障害(MCI)」の方には最適です。

コグニサイズとは、認知課題と運動課題を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称です。

有酸素運動、コグニサイズに加え、運動の習慣化を取り入れた複合的運動プログラムの効果検証を、65歳以上で「軽度認知障害(MCI)」の方、100人を対象として実施。

その結果、全体的な「認知機能」や「言語流暢性」に加え、他の研究ではほとんど有効性が確認されていない「記憶への効果」や「脳萎縮」に対する改善効果が認められました。

コグニサイズに参加なさりたい時は、お住いの都道府県の福祉課等にお問い合わせください。コグニサイズは、介護予防事業所や民間の自主グループ等が独自に実施している場合など数多くのチャンスがあります。まずは自治体の福祉部や介護保険課などにお尋ねください。

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!健常に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!普通に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)(DIMOS ZITOUNIATISによるPixabayからの画像)

第2回は、ここまでです。9月6日の第3回の内容は以下の2つです。

6.普通に戻るための対策④:専門機関で行う認知トレーニングには認知機能改善の効果があります

7.普通に戻るための対策⑤:音楽活動や芸術活動、社会参加も認知機能を改善する可能性があります!

厚生労働省は、来年2025年には認知症患者数が約700万人、つまり65歳以上の5人に1人が認知症になると見込んでいます。家族は距離が近すぎるせいか、あるいは毎日だから慣れてしまうのか、認知症の兆しを見落としがちです。「しっかりしてよ」と言い続ける前に、認知症疾患医療センター(*15)で検査を受けられてはいかがですか?

軽度認知障害(MCI)」も最近わかってきた病状で、10年前なら授からなかった幸運です。あなたは、進行を止められず、完治もできない認知症を発症する10~15%に入りますか?それとも治療や運動に取り組んで、年齢相当の普通の状態に戻る16~41%に入りますか?

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!健常に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)

軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!普通に戻るための対策・方法をご紹介します!(第2回)(AndreasによるPixabayからの画像)

謝辞:松本正人先生と「あたまとからだをげんきにする MCIハンドブック」制作に携わった皆さまをはじめ、認知症の臨床・研究・介護に従事なさっていらっしゃる全ての皆様に感謝するとともに、認知症の患者さんとご家族がより良い時間を過ごせますよう、すべての医療・介護従事者の皆さまの益々のご活躍・ご発展を祈念します。

補注

*1:「あたまとからだをげんきにする MCIハンドブック」厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/001272358.pdf

*5:「睡眠薬は、「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」 と「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」に大別されます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬:マイスリー、アモバン、ルネスタ、レンドルミン、ドラール」睡眠薬の種類・効果効能・副作用の解説 国分寺イーストクリニック https://kokubunji-east-clinic.com/medicine/sleeping-pills/

*6:「ニューロン(神経細胞)は、1日に10万個死んでいくといわれます。 ニューロンの数は基本的には増えることはなく、減る一方ですが、心配することはありません。 ニューロンには新しく突起を伸ばしてネットワークを作り上げていく力があり、老人になってもその力はなくならないのです。」神経細胞は増えるか? 学習と記憶 日本学術会議おもしろ情報館https://www.scj.go.jp/omoshiro/kioku4/kioku4_3.html#:~:text=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3(%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B4%B0%E8%83%9E)%E3%81%AF%E3%80%81,%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

*7:「神経幹細胞の増殖にも、増殖を停止させて神経細胞に分化させることにも、神経栄養因子は必須の分子である。ひとたび分化した神経細胞はヒトの場合、長ければ100年も生き続ける、非常に長寿の細胞である。(ちなみに血液の細胞はターンオーバーが早く、寿命は赤血球では約120日、血小板では約10日である)。この生き続けるためのサポートも神経栄養因子の重要な役目である。」神経栄養因子の話 新潟大学脳研究所 https://www.bri.niigata-u.ac.jp/research/column/000876.html

*8:「コグニサイズとは国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語です。英語のcognition (認知) とexercise (運動) を組み合わせてcognicise(コグニサイズ)と言います。Cognitionは脳に認知的な負荷がかかるような各種の認知課題が該当し、Exerciseは各種の運動課題が該当します。運動の種類によってコグニステップ、コグニダンス、コグニウォーキング、コグニバイクなど、多様な類似語があります。コグニサイズは、これらを含んだ総称としています。」国立研究開発法人  長寿医療研修センター https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/kenshu/27-4.html  

*9:松本正人:漢方臨床レポート「軽度認知障害の認知機能に対する抑肝散加陳皮半夏長期投与の臨床報告-2~3年経過例での評価(第2報)-」phil漢方 No.75 2019、22~24頁、https://www.philkampo.com/pdf/phil75/phil75-09.pdf

*15:「認知症疾患医療センターは、認知症疾患に関する鑑別診断とその初期対応、身体
合併症の急性期治療を行うほか、退院する患者が必要とする介護サービスの提供、地域における見守り等の日常生活面の支援や、家族を対象とした相談支援等に適切につながるよう、地域包括支援センターや介護支援専門員等への連絡調整を含め、個々の患者に対する相談を行う機能を有しており、地域での認知症医療提供体制の拠点として、地域の関係機関と連携した支援体制の構築を図ることは重要な役割である。」厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000366645.pdf

お住いの都道府県名に「認知症疾患医療センター」を加えて、ネット検索なさってください。お近くのセンターが判ると思います。

以上

 

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