軽度認知障害(MCI)と判明した今がチャンス!普通に戻るための対策・方法をご紹介します!(第3回)
「記憶」は、その方が生きた膨大な時間とご自身をつなぐ錨のような存在です。「記憶」を失う未来に怯え、今いる場所も人も分からないことに怯えるから、認知症の方は暴言や暴力、あるいは徘徊や過食に陥るのでしょう。ご本人も家族も苦しむ認知症にあなたはなりたいですか?軽度認知障害(MCI)の今なら、年齢相当の普通の状態に戻れる方法があります。
6.普通に戻るための対策④:
専門機関で行う認知トレーニングには認知機能改善の効果があります
脳トレは、個人がスマートフォンやゲーム機などを用いて実施できる市販の商品ですが、認知トレーニングは病院などの専門機関において、専門家の指示のもと実施するトレーニングプログラムです。
「軽度認知障害(MCI)」の方を対象とした調査によると、記憶に特化した認知トレーニングが全般的認知機能の改善に大きな効果を示したと報告されています。
まだ認知トレーニングを実施している機関が少ないのですが、筑波大学附属病院 精神科デイケアが実施している「認知力アップデイケア」のアドレスを載せておきます。希望が湧いてきますので、ぜひ、ご覧ください。
☆「もの忘れが心配な方へ 認知力アップデイケアで 認知症を防ぎませんか?」筑波大学附属病院 精神科デイケアhttps://www.tsukuba-psychiatry.com/dc/
7.普通に戻るための対策⑤:
音楽活動や芸術活動、社会参加も認知機能を改善する可能性があります!
①楽器演奏やダンス、歌を歌うなどの音楽活動は、認知機能の改善に効果があります!
「軽度認知障害(MCI)」の方を対象にした調査で、座って授業を受けるグループと楽器演奏グループとダンスグループの3グループに分け、それぞれの活動を40週間行いました。その結果、楽器演奏グループとダンスグループは授業を受けるグループに比べて、全般的な認知機能が改善しました。
音楽を聴くだけの音楽活動では、効果の有無が検証がされていないので、認知機能の改善効果が有るとも無いとも言えません。音楽活動は、演奏会や合唱など集団での音楽活動が推奨されます。
②書道や絵を描く、物を作るなどの芸術活動は認知機能を改善させる可能性があります!
参加者を書道を習うグループとコンピューターの使い方を習うグループにわけ、それぞれの活動を2ヶ月間実施し、認知機能改善効果を調べました。その結果、書道グループはコンピューターの操作方法を習うグループと比べ、「注意機能」と「作業記憶」がより改善しました。
また他の研究では、芸術活動グループと認知トレーニンググループの2グループにわけ、認知機能改善効果を調べました。その結果、芸術活動グループは「認知機能」や「記憶」、「実行機能」、「注意機能」が改善しました。
ただし、茶道、華道、フラワーアレンジメント、押し花、朗読、手遊び、折り紙、押し絵、塗り絵などの芸術活動を限定した場合は、認知機能の改善効果は不明です。
③外出と社交活動や仲間と一緒に行う活動は、認知症への予防効果があります!
外出頻度が週に1回未満、いわゆる閉じこもり状態の場合、ほぼ毎日外出する人と比べて要介護状態に陥るリスクが高まります。
ある研究では、一緒に暮らす人以外との交流頻度が週に1回未満という人は、自立した生活を送る能力の低下や認知症発症、ひいては早期死亡のリスクが高くなることが判明しています。
仲間と一緒に運動や、余暇活動を実施することで、5年後の生活機能低下を防ぐことができます。特に、頭を使うような余暇活動は認知症への予防効果が高いです。具体的には、読書やパズル、楽器の演奏、囲碁などのボードゲーム、絵本の読み聞かせなど。
子ども世代との交流や活動グループの中で役割を持つことが、認知機能だけでなく心身の健康も増進します。
☆ボランティア活動の募集を見つけたい場合は、下記の団体や組織を検索なさってください。
*お住いの社会福祉協議会(社協)のホームページ
*近くのボランティアセンターのホームページ
*「こども食堂」や「日本赤十字社」などいろいろな支援団体のホームページ
*ボランティア関連サイト
*お住いの自治体が発行している広報誌や社会福祉協議会の広報誌
では、次回9月13日の第4回(最終回)の内容は以下の2つです。
8.普通に戻るための対策⑥:認知症予防に有効な食事の摂り方は、脳の働きに必要な栄養素を補給し、五感を刺激し、食べながらコミュニケーションを楽しむことです。
9.普通に戻るための対策⑦:漢方薬「抑肝散加陳皮半夏」の2~3年投与で、「軽度認知障害(MCI)」の悪化を長期間抑えることができた!(*9)
厚生労働省は、来年2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると見込んでいます。普通に生きていても65歳以上なら、もれなく認知症を発症してしまう可能性が20%もあります。「認知症なんて他人事」と考えていませんか?
進行性で、進行を止める薬も、完治できる薬もまだ無いアルツハイマー型認知症。発症してしまえば、もう治せません。だからこそ認知症の手前、軽度認知障害(MCI)の今が、素晴らしい幸運です。
持病を治療して、コグニサイズや有酸素運動を週に3回以上楽しんで、あるいは書道やボランティア活動に励んで、年齢相当の普通の状態に戻る16~41%に入りますか?それとも、認知症を発症する10~15%に入りますか?
謝辞:松本正人先生と「あたまとからだをげんきにする MCIハンドブック」制作に携わった皆さまをはじめ、認知症の臨床・研究・介護に従事なさっていらっしゃる全ての皆様に感謝するとともに、認知症の患者さんとご家族がより良い時間を過ごせますよう、すべての医療・介護従事者の皆さまの益々のご活躍・ご発展を祈念します。
補注
*1:「あたまとからだをげんきにする MCIハンドブック」厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/001272358.pdf
*9:松本正人:漢方臨床レポート「軽度認知障害の認知機能に対する抑肝散加陳皮半夏長期投与の臨床報告-2~3年経過例での評価(第2報)-」phil漢方 No.75 2019、22~24頁、https://www.philkampo.com/pdf/phil75/phil75-09.pdf
*15:「認知症疾患医療センターは、認知症疾患に関する鑑別診断とその初期対応、身体
合併症の急性期治療を行うほか、退院する患者が必要とする介護サービスの提供、地域における見守り等の日常生活面の支援や、家族を対象とした相談支援等に適切につながるよう、地域包括支援センターや介護支援専門員等への連絡調整を含め、個々の患者に対する相談を行う機能を有しており、地域での認知症医療提供体制の拠点として、地域の関係機関と連携した支援体制の構築を図ることは重要な役割である。」厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000366645.pdf
お住いの都道府県名に「認知症疾患医療センター」を加えて、ネット検索なさってください。お近くのセンターが判ると思います。
以上