🚻【中編】シニアの「便漏れ(便失禁)」の原因と治療|今日からできる対策ガイド
「また漏れたら…」と不安で外出をためらう前に。
便漏れの仕組み・主な原因・治療(保存療法/手術)をやさしく整理します。
(前編=便秘/下痢の基礎・受診の目安|後編=認知症・フレイル別対策&専門病院リスト)
1️⃣ 便漏れは“珍しくない”——まず知っておきたい現実
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65歳以上を追跡した国内研究では、**男性8.7%/女性6.6%**に便漏れが確認。
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高齢になるほど増加し、脳卒中や認知症があるとリスク上昇。
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本人は恥ずかしさ・自信喪失・外出回避に陥りやすく、QOL低下が大きい。
💬 「私だけじゃない」と知ることは、受診・治療につながる最初の一歩です。
2️⃣ なぜ起こる?——老化と排便のしくみ
排便は 神経(感じる/締める)× 筋肉(肛門括約筋)× 直腸の貯留 が連携して成立。
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神経の老化:感覚・反射・筋力が低下 → 便意に気づきにくい/我慢しにくい
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直腸の知覚低下:直腸に便が来ても便意を感じにくい → 便や粘液がにじみ漏れ
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最も多い原因:直腸に便はあるのに出せない 「便排出障害」(直腸性便秘・溢流性便失禁の温床)
🔎 キーワード:直腸の感覚低下/骨盤底の弱り/神経伝達の遅れ。
3️⃣ 主な原因(チェックリスト)
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加齢性のゆるみ:肛門括約筋の筋力低下(男女とも)
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損傷:出産(会陰切開)/痔の手術/外傷で括約筋や神経が損傷
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直腸・肛門の病気:直腸脱/腫瘍などで貯留ができない
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直腸がん手術後:術後の機能低下
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内科的疾患:糖尿病、パーキンソン病、多発性硬化症、ALS、強皮症 などの神経障害
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便通異常:IBS(過敏性腸症候群)/炎症性腸疾患/機能性下痢
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溢流(いつりゅう)性便失禁:糞便塞栓(かたく詰まる)上を軟便がすり抜けて漏れる
🚩 赤信号:急な悪化/血便・体重減少/腹痛持続/発熱・嘔吐を伴う → 消化器内科へ。
4️⃣ 治療は「段階的」に:まずは手術以外から
A. 生活・食事(腸を整える)
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水溶性食物繊維を増やす(海藻・芋・果物・大根・キャベツ等を煮て柔らかく)
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アルコール・カフェイン・強い香辛料/高脂肪は控えめ
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便秘なら:水分・食物繊維・適度な運動、排便リズムづくりを優先
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下痢がちなら:脂質・冷え・人工甘味料・乳糖など誘因の洗い出し
B. 排便習慣づけ(タイムトイレ)
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毎日同じ時刻(朝食後が最有力)に**5〜10分だけ“座る習慣”**を。
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直腸の感覚が鈍い方や溢流性に特に有効。
C. 骨盤底筋トレ(外肛門括約筋を鍛える)
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キューっと肛門を締める→5秒保持→5秒休む×10回を1セット、1日3セット。
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便意から**トイレ到達までの“我慢時間”**を延ばす効果。
D. バイオフィードバック療法
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センサーと画面で**「正しく締められているか」**を見ながら訓練。
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専門医療機関で実施(保険適用の目安は医療機関へ)。
E. 薬物療法(症状・タイプ別に)
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整腸剤/緩下剤/止痢薬 などで便の性状と出すタイミングを調整。
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既往症や併用薬によって変わるため必ず医師に相談。
F. 皮膚ケア(失禁関連皮膚炎を守る)
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油性清浄剤・撥水(バリア)クリームでふき取り→保護。
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こすらず押さえて拭く/洗いすぎは1日1〜2回まで。
🧩 ポイント:**「固める・出す・守る」**の3本柱で、漏れにくい環境をつくる。
5️⃣ 手術治療の選択肢(専門医で相談)
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仙骨神経刺激療法(SNS):埋め込み装置で神経を刺激し漏れを減らす(2014年〜保険適用)。
事前に試験刺激で効果を確認してから本実装へ。 -
括約筋修復:欠損部の縫縮、筋移行術など特殊手術。
📝 学会見解:軽症ほど改善しやすい。重度は「完治」より症状軽減・QOL向上を目標に。
家で使える“今日の実行リスト”
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朝食後に5〜10分トイレに座る
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骨盤底筋トレを1日3セット
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食事は水溶性食物繊維+油・刺激を控えめ
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便性状を日誌化して誘因を把握
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皮膚バリア(撥水クリーム)を導入
まとめ/次回予告
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便漏れは高齢で増えるが、原因は特定でき、治療はある。
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生活・リハビリ→薬→手術の順で段階的に最適化を。
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後編(6/13公開予定)では、認知症・フレイル/寝たきり別の実践対策、
便漏れ用アイテム、便失禁の検査・治療が可能な病院の探し方を紹介します。
参考(簡略)
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国内コホート:高齢者の尿・便失禁の有病率と関連
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高齢者の神経老化/排便障害の特徴
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便失禁の原因整理と治療指針(日本大腸肛門病学会ほか)
本記事は一般的な情報提供です。症状が強い・急に悪化・出血を伴う場合は、早めに医療機関へ。
以上











