認知症の行方不明を防ぐ8つの予防策|年間2万人時代に家族ができる備え

📝 後編はこちら
👉 認知症の家族が行方不明になったときの探し方7ステップ

認知症のご家族が行方不明にならないために ― 今日からできる予防対策まとめ

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(Uschi Dugulin/Pixabay)

認知症のあるシニアが行方不明になる件数は、
2023年度に過去最多の1万9,039人
このうち、553人が死亡という、とても重い数字です(*1)。

2024年度の統計はまだ出ていませんが、
このままでは年間2万人を超える可能性があります。

春から初夏にかけて外出の機会が増える季節。
あなたの大切なご家族が行方不明にならないよう、
今日からできる予防対策をまとめました。


1.「迷子になったサイン」が出たら、まず主治医に相談する

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(Carl/Pixabay)

認知症の周辺症状(BPSD)のひとつに「徘徊」があります。
といっても、ただ意味もなく歩き回っているわけではありません。

大きく分けると、次の2タイプがあります。

●迷子型

  • 散歩や買い物の途中で、急に場所が分からなくなる

  • 見慣れた道が、突然知らない風景に見える

  • さっき見た建物を覚えておけず、同じ場所をぐるぐる回る

●時空迷子型

  • 意識が過去に戻り、昔の自分として行動しようとする

    • 「会社に行かなきゃ」

    • 「子どもを迎えに行かなくちゃ」

  • 生家や昔の勤務先などに向かおうとして家を出る

愛知県警のデータ(*5)では、
発見されたときに自分の名前と住所を言えた人は約3分の1
残りの約3分の2は言えない状態でした。

一度でも「迷子になって警察や近所の人に助けられた」経験があれば、
それは行方不明の強い予兆です。

「最近、道に迷うことが増えたみたい」
「本人が『迷子になってしまった』と話している」

そんなサインに気づいたら、
かかりつけ医や認知症専門医に、薬物療法も含めて相談してみてください。

自分でしっかり歩けて、認知機能の低下が軽い人ほど、
かえって遠くまで行ってしまい、行方不明になりやすい傾向があります。


2.玄関・勝手口・窓から「そっと出て行けない」工夫をする

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(R. O./Pixabay)

掃除機をかけている間、洗濯物を干している間など、
ほんの数分のすきに外へ出てしまうケースがよくあります。

そこで、玄関・勝手口・大きな窓に、次のような対策を検討してみてください。

  • ① カギを暗証番号式など新しいタイプに交換する

  • ② 手が届きにくい位置(上部など)に補助カギを付ける

  • ③ 開けると音が鳴るセンサー(ドアセンサー)を取り付ける

「徘徊防止」と検索すると、
玄関用ロックやセンサーなど、さまざまな商品が出てきます。

大騒ぎになる前に、「出て行きにくい仕組み」を整えておくことが、
ご本人の安全を守り、家族の不安も軽くします。


3.徘徊防止用GPSを身につけてもらう

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(용한 배/Pixabay)

子ども用GPSもありますが、
徘徊防止GPS」で検索すると、認知症の方向けの製品が多く見つかります。

NTTドコモ製品を扱うサイトでは、次のように説明されています(*2)。

普段履いている靴の甲に取り付けるのがおすすめ
・靴を履かずに外出した場合も、不審者として早く保護されやすい
・杖・お守り袋・携帯ケースなど、生活スタイルに合わせて装着可能

自治体によっては、
介護保険を利用してGPS機器をレンタルできる制度もあります。

  • 市区町村の介護保険窓口

  • 地域包括支援センター

に問い合わせて、利用できるサービスがないか確認してみてください。


4.衣類・靴・バッグにQRコードを貼っておく

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(Elsemargriet/Pixabay)

行き先が分からなくなったり、
パニックで自分の名前も住所も言えなくなる場合に備えて、
衣類や靴、いつも持ち歩くバッグなどにQRコードを貼っておく方法があります。

名札シールのように「いかにも」にならず、尊厳を守りながら使えるのがメリットです。

QRコードを使うタイプの見守りシステムなら、

  • 持病

  • 飲んでいる薬
    などの情報も伝えられます。

たとえば、インスリン注射が必要な方なら、
適切な対応が遅れて昏睡状態になるリスクを減らすことができます。

「認知症 見守りシール」で検索すると、様々な商品が見つかります。

また、東京の荒川区や墨田区などでは
認知症高齢者見守りシール」の交付制度があります(*3)。

QRコードを読み取ると、
個人情報を明かさずに、家族とインターネット上の伝言板でやり取りできる仕組みです。

お住いの自治体でも同様の制度があるかもしれません。
介護保険担当窓口や地域包括支援センターに問い合わせてみてください。


5.地域の「認知症高齢者等SOSネットワーク」に登録しておく

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(Couleur/Pixabay)

横浜市では、
「認知症高齢者等SOSネットワーク」という仕組みがあります(*4)。

事前に身体的特徴などを登録しておくと、
行方不明になったときにネットワークを通じて情報が共有され、
早期発見・早期保護につながる仕組みです。

インターネットで調べると、
独居高齢者の「見守りネットワーク」と混ざって表示されることもあります。

  • 認知症の人の早期発見・保護を目的としたネットワークがあるか

  • 登録方法はどうなっているか

を、お住まいの自治体や地域包括支援センターに確認してみてください。

あわせて、

  • 民生委員

  • 自治会役員

  • 近所の方

  • よく立ち寄る店、駅、交番 など

に、「徘徊の可能性がある家族がいる」ことを事前に伝えておくと、
万が一のとき、声かけ・保護につながりやすくなります。


6.生活リズムを整え、体をよく動かす機会をつくる

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(Thomas/Pixabay)

体調不良や不眠が続くと、
徘徊の症状が強く出ることがあります。

そこで、次のような点を意識してみてください。

  • 食事の時間を毎日なるべく同じにする

  • 起床・就寝時間を整え、生活リズムを安定させる

  • 昼間に軽い運動を取り入れる

おすすめの活動例

  • 一緒に行う軽めの散歩やストレッチ、ラジオ体操

  • デイサービスや認知症カフェへの参加

  • 簡単な仕事や掃除・片付けなど、目的を持って動ける作業

体を動かして適度に疲れると、
夜ぐっすり眠れるようになり、徘徊が落ち着くこともあります。

また、「誰かの役に立っている」「必要とされている」という感覚は、
認知症による不安をやわらげ、心の安定にもつながります。


7.徘徊を責めない・閉じ込めない ― 症状として理解する

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(Kohji Asakawa/Pixabay)

徘徊が頻繁になると、
家族は不安と疲れで、つい叱責したくなるかもしれません。

しかし、本人は本人なりに

  • 「子どもを迎えに行かなくては」

  • 「会社に遅れてしまう」

本気で思い、必死だからこそ外に出ようとしています。

高熱を怒っても下がらないのと同じで、
徘徊も認知症(脳の病気)の症状のひとつです。
叱っても、閉じ込めても、根本的な改善にはつながりません。

家族として意識しておきたいポイント

  1. できるだけ早く認知症専門医を受診する

  2. 「徘徊」は病気の症状だと理解し、
    叱りつけたり、無理に止めたり、閉じ込めたりしない

  3. 「何のために出かけようとしているのか」をよく聞き、
    別の行動に気持ちをそらせてあげる

  4. いっしょに外へ出て、気が済むまで歩き、
    頃合いを見て、少し違うルートで家に戻る

  5. そっと後をついて行き、
    よく行く場所・寄りやすい場所を把握しておく

  6. 3~5月、6~8月は行方不明が多く、
    午前8時~午後4時に発生しやすいので特に注意する(*5)


8.「認知症のある生活に備える手引き」で理解を深める

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(Hans/Pixabay)

公益社団法人「認知症の人と家族の会」は、
家族の実態調査報告(2022年)をもとに、

「自分や家族が認知症かもしれない」と感じたとき、
心を少し軽くできるヒント

をまとめた冊子
「認知症のある生活に備える手引き」を作成しています(*6)。

  • ホームページからPDFをダウンロード

  • 1冊300円(送料込)で郵送してもらうことも可能(クレジット払い、1人10部まで)

「ある日突然、徘徊して警察に保護された」という話の裏側には、
きっと小さな兆候やサインがあったはずです。

手引きを読むことで、

  • 認知症という病気の特徴

  • 家族としてできること

  • 支援を受けられる窓口

などを、落ち着いて整理することができます。


9.「閉じ込める」より「備える」へ

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(Christel/Pixabay)

徘徊が怖いからといって、部屋に閉じ込めてしまうと、
ご本人のストレスが高まり、むしろBPSDが悪化する危険があります。

認知症への理解が乏しいまま介護を続けると、
家族も本人も追い詰められ、泥沼のような状態になりかねません。

  • 見守りシール

  • 徘徊防止用GPS

  • QRコード など

事前の備えと、周囲のネットワークづくりを進めながら、
ご本人も家族も、ストレスの少ない、安全で穏やかな日々を過ごせますように。

来週のブログ(後編)では、
それでも万が一 行方不明になってしまったときの探し方・相談先・通報のポイントを、
具体的に紹介します。

行方不明になる認知症シニアが、年間2万人を突破しそうだから、予防対策を紹介します!

(Frauke Riether/Pixabay)

補注

*1:「令和5年における行方不明者の状況」警察庁生活安全局人身安全・少年課 令和6年7月 https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/R05yukuefumeisha.pdf

*2:「認知症徘徊感知機器 iTSUMO(いつも)とは」https://itsumono-gps.jp/aboutistumo/

*3:「認知症高齢者見守りシール事業」墨田区ホームページ https://www.city.sumida.lg.jp/kenko_fukushi/koureisya_kaigohoken/ninchisyo/mimamori-st.html

*4:「認知症高齢者等SOSネットワーク」横浜市 https://www.city.yokohama.lg.jp/kenko-iryo-fukushi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/ninchisyo/ninchisyo-sodan/sos.html

*5:「認知症高齢者の徘徊対応マニュアル改訂版(自治体向け)」https://www.pref.aichi.jp/soshiki/chiikihoukatu/ninchisho-pamphlet.html

*6:「認知症のある生活に備える手引き」 公益社団法人 認知症の人と家族の会  https://www.alzheimer.or.jp/?p=48252&fbclid=IwAR2hFHOOCy-GrBSxYxBW1T2lv8nTs9QsTEcbFz6jwHEpwtddk74BK_9OZcs

以上

Follow me!