認知症介護のBPSDを防ぐサイン!ポジティブケア(後編)
📌 【認知症BPSD】関連記事
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前編: 困ったサインかも?大切な人を支えるあなたべき症状と基礎知識
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後編: 困った行動・心の変化を食い止める!サインと「褒める」「納得」のポジティブケア
認知症介護のBPSDを防ぐサイン!ポジティブケア(後編)
釣銭がわからず財布が小銭でいっぱいになったり、今までしなかった無礼な行動を取ったりしても、「まさか認知症?」とはなかなか思えないものです。
この記事では、見落とされがちな認知症の行動・心理症状(BPSD)のうち、前編で紹介しきれなかった「行動の障害」と「対人関係の障害」の具体例をご紹介します。
さらに、BPSDの発症や悪化を避けるために最も重要な「BPSDが起こる前のサイン」をキャッチし、笑顔で穏やかな毎日を取り戻すための具体的なケア方法をお伝えします。
2. 周囲が困惑する! BPSDの具体的な症状(後半)
BPSD(行動・心理症状)とは、認知症による認知機能障害(記憶力の低下など)とは別に現れる、行動や心理面でのさまざまな症状のことです。これらの症状は、認知症の方の性格や環境、健康状態など、複雑な要因が絡み合って現れます。
ここでは、特に介護をする大切なあなたが対応に困るケースが多い「行動のコントロール」と「対人関係」に関わる症状をチェックリスト形式でご紹介します。
【症状1】ブレーキが効かない「行動コントロールの障害」
社会的なルールや、自分の欲求を抑える能力が低下することで現れる症状です。
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逸脱行為・衝動行為:
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礼儀作法がなくなる、いきなり他人の体に触れる、物を盗む。
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大声や奇声を上げる、自分で自分を傷つける。
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卑猥な言葉を言う、性的な行為を迫る。
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不適切な排泄・着替え:
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おむつを外して布団に排泄する。
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汚れた衣類や下着を隠す、服を破く。
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不規則な行動:
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そわそわして落ち着かない、夜中に家の中を歩き回る。
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外出をしたがる、施設や病室から勝手に出ていく(帰宅願望)。
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何度もトイレに行く。
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異常な食行動:
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異常な量を食べ続ける、食べ物以外(異物)を食べてしまう。
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食べ物の好みが急に変わる、食事が途中で止められない。
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同じ行動の繰り返し(常同行動):
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箪笥を開けて衣類を出したりしまったりを繰り返す。
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同じ内容のエピソードを繰り返し話し続ける。
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【症状2】人との間に壁を作る「対人関係の障害」
周囲の人との関わり方が変化し、介護拒否や攻撃的な態度となって現れる症状です。
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依存・妨害:
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家族につきまとう、寂しがる。
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家族の団らんや仕事の邪魔をする、夜中に家族を起こす。
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拒否・拒絶:
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他人と関わるのを嫌がる、家族と会おうとしない。
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食事、服薬、着替え、入浴などを強く拒否する。
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すべてを鬱陶しがる、人の好き嫌いが激しくなる。
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攻撃性・敵意:
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目つきが変わり攻撃的になる、物を壊す。
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攻撃的な言葉を言う、他人を非難する、嘘をついて人を陥れようとする。
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意欲の喪失(アパシー):
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ずっとしゃべらない、動かない、何もしようとしない(引きこもり)。
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3. 爆発を未然に防ぐ! BPSD「発症前の5つのサイン」
BPSDは、単に「脳の障害」だけでなく、「身体的健康」「生活歴」「性格傾向」「人間関係」の総体で現れます。症状が「爆発」する前に、介護をするあなたがそのサインをキャッチすることが、ご本人と家族の笑顔を守る鍵となります。
伊東美緒先生が介護施設での観察からまとめ上げた、BPSDが現れる前のイライラや不満を示す5つのサインを紹介します。
このサインは、ご本人が「これ以上は無理」「嫌だ」という気持ちを、言葉ではなく行動で示している警告です。
BPSDが発症するかも?と教えてくれる5つのサイン
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服従: やりたくない活動や作業を無理にやらされた時に、抵抗せず不本意ながら従う。
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謝罪: 活動や作業ができなかった時に、すぐに「ごめんなさい」と謝ってしまう。
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転嫁(責任転嫁): 作業ができない理由を、「紙が変だから」など、道具や周囲のもののせいにする。
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遮断: 聞こえないふりをする、寝たふりをする、視線をそらしたりして、関わりを避ける。
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憤懣: 気に入らないことや不満を、ブツブツと独り言で怒る。
4. サインをキャッチしたら実践! ポジティブケア
これらの5つのサインを見つけたら、「このまま続けると症状が悪化するかもしれない」という警告だと受け止めましょう。
ご本人は、認知症によって「怒りや不満を適切に伝える」ことが難しくなり、その結果として暴言や暴力といったBPSDとなって表れてしまうのです。ご本人も、自分の行動に傷つき苦しんでいます。
BPSD悪化を防ぐ3つのポジティブケア
無理強いを重ね、ご本人と介護者の間に悲しみや憎しみが積もってしまう前に、次の3つのケアを試してみませんか。
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褒める: できていることに目を向け、「ここまではできたね」「ありがとう」と具体的に褒める。
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優しく接する: 感情的にならず、穏やかな声と態度で接し、ご本人の不安を取り除く。
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本人が納得する方法を考える: 本人が嫌がっていることを強要せず、「やりたくない理由」を探り、タイミングや手順、場所を変えるなど、本人が受け入れられる方法を一緒に探す。
大切なあなたがこのサインをキャッチし、効率よりも本人の気持ちの穏やかさを優先することで、ご本人も家族も傷つくようなBPSDの「爆発」を避けることができます。
💡 専門用語の解説
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行動・心理症状(BPSD): Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略称で、認知症の中核症状(記憶障害など)以外に現れる行動と心理面の症状全般を指します。
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アパシー(意欲の喪失): 特にBPSDの「対人関係の障害」の一種として現れる、自発的な行動や感情の表出が極端に少なくなる状態。
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ポジティブケア: 認知症の方の残された能力や肯定的な側面に焦点を当て、その人の尊厳と主体性を尊重するケア手法。
参照論文・関連情報
本記事は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「BPSDの解決につなげる各種評価法と、BPSDの包括的予防・治療指針の開発」研究班による総説「BPSDの定義、その症状と発症要因」などを参考に、読者向けに作成しました。
以上






