熱中症だけじゃない、シニアがこうむる猛暑による健康リスクと対策6つをご紹介!
ついに夏の甲子園も健康被害を予防するために、16時や18時から試合をおこなうようになりました。この命にかかわる暑さの中、ご家族みなさまの体調はいかがでしょうか?
体の機能が衰えて持病を抱えていたり、薬の副作用で脱水症状などが悪化しやすいシニアには、猛暑が致命的となりかねません。
今回は、暑さに弱いシニアがこうむりやすい、熱中症以外の猛暑による健康リスクと対策を紹介します。
1.心臓と血管、血液を全身に循環させる器官系のトラブルが起こりやすい
〇高温の中では血管が拡張し、 低血圧や心筋梗塞、不整脈 を起こしやすくなります。(*1)
〇特に糖尿病など慢性疾患を患っているシニアは、健康被害を受けるリスクが高いです。
〇糖尿病などによる神経障害は、体温調節に関わる自律神経の機能を低下させます。
具体的には、汗をかく機能が低下したり、血管の収縮・拡張がうまくいかなくなることで体温調節がうまく働かず、体内に熱がこもりやすくなり、体温の上昇を招きます。
〇糖尿病を患っていると高温のために自律神経が不安定になりやすく、熱中症でなくても体調を崩しやすくなります。
〇体温調節や血圧の変動がうまくいかず、身体に熱がどんどん溜まってしまい、めまいや脱水による転倒・怪我も増えやすくなります。
2.呼吸器系やアレルギー症状が悪化しやすい
〇高温多湿によって 大気汚染物質(PM2.5、黄砂)や花粉の拡散が阻害され、汚染物質の濃度が高くなる可能性があります。
〇高温は光化学スモッグの原因となるオゾンや、PM2.5などの粒子状物質の生成を促進します。さらに高温は、窒素酸化物(NOx)や揮発性有機化合物(VOC)などの汚染物質が太陽光と反応してオゾンを生成する光化学反応を促進します。これらの相乗効果により、光化学スモッグが発生しやすくなります。
〇大気汚染物質の濃度が高まり、光化学スモッグが発生しやすくなるので、ぜんそくやアレルギー性鼻炎など呼吸器症状が悪化しやすくなります。(*2)
〇特に慢性呼吸器疾患(COPDなど)を患うシニアでは、熱波による 入院リスクの上昇 が指摘されています。(*3)
(慢性呼吸器疾患とは、長期間にわたって咳や痰、息切れなどの症状が続く呼吸器系の病気の総称です。代表的なものに慢性閉塞性肺疾患(COPD)があり、その他にも、喘息、間質性肺炎、気管支拡張症などが含まれます)
3.腎臓への悪影響や腎障害を引き起こすリスクがあります
〇猛暑では、体温を調整するために大量の汗をかくことで脱水状態になりやすく、腎臓への血流が減少し、腎機能が低下する可能性があります。(*4)
〇シニアは、体内の水分保持能力が低いため、特に危険です。
〇さらに、熱中症による筋肉の損傷(横紋筋融解症)や、熱による脱水や長時間にわたって高温にさらされ続けると 、急性腎障害(AKI)を引き起こすこともあります。
(急性腎障害(AKI)は数時間から数日という短期間で急激に腎機能が低下する病態です。尿から老廃物を排泄できなくなったり、溢水になったりします。透析が必要になる場合があります。(*5))
4.認知症状・精神症状・事故を起こすリスクが高まります
〇猛暑は、心臓病、肺疾患、腎臓病といった加齢に伴う一般的な健康状態を悪化させ、せん妄を引き起こす可能性があります。(*3)
〇シニアは、若者より発汗量が少ないため、気温が急上昇しても体温を下げるのが難しく、抗コリン薬などの薬の副作用で、発汗能力がさらに低下します。
(抗コリン薬とは、神経伝達物質であるアセチルコリンの働きを抑える薬の総称です。アセチルコリンは副交感神経を活性化させる物質で、抗コリン薬はこの働きを阻害することで、様々な症状を緩和します。主に、消化器系の症状(腹痛、下痢など)、呼吸器系の症状(喘息、咳など)、泌尿器系の症状(頻尿、尿漏れなど)の治療に用いられます。)
〇シニアは発汗量が少なく発汗能力も低いため、高温多湿の悪天候にさらされると脱水症状を引き起こす可能性があります。この症状は、利尿薬やβ遮断薬などの薬の副作用によってさらに悪化します。
(β遮断薬とは、主に心臓や血管に作用し、血圧や心拍数を下げる効果があります。高血圧、狭窄、脈不整、心不全などの治療に用いられます。また、β遮断薬の一部は、不安症状の軽減にも用いられます。)
〇暑さは 集中力や判断力の低下 を引き起こし、日常生活上の事故(転倒、自宅内の怪我など)のリスクが高まります。
〇特に認知症のある方は、猛暑の怖さを理解できないため予防が疎かになり、脱水や錯乱による症状悪化にも注意が必要です。(*3)
5.間接的な関連死の増加に注意が必要
〇心臓機能が弱っていたり、呼吸器系の病気や糖尿病などの慢性疾患があったりする人は、暑さの影響を受けやすいことが分かっています。暑さに背中を押される形で、病気の状態が悪くなり死亡するケースが相当数あるのではないかと考えられます。(*6)
〇高温と気候変動により、熱中症以外の要因で死亡する「関連死」が増加すると専門家が警告しています。ある推計では、関連死は熱中症死の約7倍に達する可能性があるとされています。
6.シニアのための猛暑対策のポイント
①水分・塩分のこまめな補給:
利尿剤や抗コリン薬、β遮断薬を服用している場合は特に注意が必要です。
また、高血圧、腎臓病、糖尿病等を患っていらっしゃる方は、経口補水液を利用する場合にもかかりつけ医に相談なさってください。
②室内の温度・湿度の管理:
室温28℃を超えたらエアコンを使用。湿度は40〜60%が目安です。シニアが安眠できる理想的な温度は20~25℃です。就寝時もエアコンの使用を勧めましょう。
☆また、薬は25℃よりも高温の場所に保管すると効果が薄れることもあります。(*7)
③体を暑さに慣らす:
軽い運動や入浴などで徐々に汗をかく習慣をつける。本来であれば、5月ごろから取り組むと効果的でした。
④大気の汚染状況をチェック:
PM2.5や黄砂警報、光化学スモッグ注意報を確認し、外出時はマスクをつけたり、室内換気に気をつける。
⑤生活リズムの見直し:
外出や活動は朝夕の涼しい時間帯を利用する。昼間の無理な外出は避ける。
⑥精神・認知状態の観察:
耐え難い暑さで屋内に閉じ込められると、シニアは退屈し、憂鬱になり、孤立感に陥る可能性があります。ご家族はシニアの精神・認知状態の観察も重要です。
以上ですが、ご参考になりましたか?
2025年6月1日から7月31日までの東京都23区における、熱中症疑いによる死亡者数は、56人でした。そのうち、屋内で亡くなった方が54人。
エアコンを使用していなかった方が38人(全体の約7割)で、使用していたにも関わらず亡くなった方が11人に上っています。猛暑による死はとても身近です。どうかこの夏を元気にお過ごしください。
なお、8月22日は夏休みをいただき、次回のブログは8月29日です。お楽しみに。
補注
*1:「梅雨後の暑熱曝露は日本の高齢者の心血管緊急事態リスクの上昇と関連している」2023年3月21日、PMID: 36892062、PMCID: PMC10111512、DOI: 10.1161/JAHA.122.027046、 National Library of Medicine https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36892062/
*2:「生物気象学的要因と喘息による入院件数の関係」2020年6月12日、 Article number: 9593 (2020) 、 scientific reports 、https://www.nature.com/articles/s41598-020-66746-8?utm_source=chatgpt.com
*3:「熱波は高齢者にとって致命的となる可能性がある。世界人口の高齢化と気温上昇により、何百万人もの人が危険にさらされている。」2024年5月28日、VaccinesWork、https://www.gavi.org/vaccineswork/heat-waves-can-be-deadly-older-adults-aging-global-population-and-rising?utm_source=chatgpt.com
*4:「中国人女性が猛暑の中、日光浴後に脳出血を起こし昏睡に陥る。安全限度と健康リスクを知る」2025年7月23日 、TOIライフスタイル、https://timesofindia.indiatimes.com/life-style/health-fitness/health-news/chinese-woman-suffers-brain-hemorrhage-slips-into-coma-after-sunbathing-during-extreme-heatwave-know-the-safe-limit-and-health-risks/articleshow/122808507.cms?utm_source=chatgpt.com
*5:「急性腎障害(AKI)」国立循環器病研究センター, https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/ld/hypertension/detail03-2/
*6: 「酷暑で関連死「約7倍」の試算も。忍び寄る「隠れた死」に専門家が警鐘」Jun 18, 2025, 10:25 AM, BUSINESS INSIDER, https://www.businessinsider.jp/article/2506-climatechange-heat-wave/?utm_source=chatgpt.com
*7:「米国の家庭における医薬品保管の適切性」2021年5月5日、薬学実践と実践に基づく研究、第12巻第2号(2021年)、ミネソタ大学図書館出版局、https://pubs.lib.umn.edu/index.php/innovations/article/view/3822
以上










