シニアが気づきにくい「高齢者うつ」の症状と原因を解説します【前編】
======📘 シリーズ「高齢者うつ」まとめ ====== ▶ 前編:シニアが気づきにくい「高齢者うつ」の症状と原因 https://kizuna-iyashi.com/2024/11/29/homemade-299/ ▶ 後編:高齢者うつと認知症の違い・自殺リスク・介護うつ https://kizuna-iyashi.com/2024/12/06/homemade-300/ =============================
年齢を重ねると、心の調子がゆっくり落ちていくことがあります。
しかし本人は「年のせい」と思い込み、周囲も気づけず、うつ病が見逃されやすいのがシニア世代の特徴です。
厚生労働省の調査では、日本人の約15人に1人がうつ病を経験しているにもかかわらず、約75%は治療を受けていないと報告されています(*1)。
さらにシニアでは、認知症とうつ病が同時に出ることも多く、うつが“認知症の前触れ”として現れる場合もあります(*2)。
そこで本シリーズでは、
「高齢者うつ」の特徴・気づき方・認知症との違いをわかりやすく紹介します。
今回は「前編」です。
1.うつ病とはどんな状態?(一般的な症状)
うつ病とは、気分の落ち込みが長く続き、生活に支障が出る病気です。原因はまだ明確ではありません。
● よくみられる症状
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強い憂うつ感
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喜び・興味を感じない
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疲れやすい、元気が出ない
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眠れない、朝早く目が覚める
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食欲が落ちる
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集中できない、考えがまとまらない
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「消えてしまいたい」と考える
シニアでは、以下のように身体症状が目立つこともあります。
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身体の痛み、しびれ、倦怠感
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被害妄想のような症状が出ることもある
☆本人が感じやすい“うつのサイン”
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何をしても楽しくない
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疲れやすく、元気が出ない
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人に会いたくない
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朝の方が調子が悪い
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食欲がない
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考えがぐるぐるして止まらない
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自分を責めてしまう
☆周囲が気づく“雰囲気の変化”
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表情が暗い、元気がない
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「痛い」「だるい」の訴えが増える
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家事・仕事のミスが多くなる
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趣味をやめ、外出が減る
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遅刻や欠席が増える
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飲酒量が増える
こうした変化は「性格の変化」ではなく、体のSOSの可能性があります。
2.落ち込みと「うつ病」はどこが違う?
失敗や喪失のあとに落ち込むのは誰にでもあります。
しかし通常の落ち込みは、
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原因がはっきりしている
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時間の経過や気分転換で回復する
という特徴があります。
一方、うつ病は、
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原因がはっきりしないことがある
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原因が解決しても回復しない
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生活が成り立たなくなる
という違いがあります。
3.うつ病になりやすい性格と“きっかけ”
うつ病は脳内の神経伝達物質(セロトニン等)のバランスが乱れることで起こると考えられています。
● なりやすい性格
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生真面目
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完璧主義
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人に気を遣いすぎる
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自分に厳しい
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何事も抱え込みがち
● きっかけになりやすい出来事
つらい出来事だけではなく、「良い変化」もストレスになります。
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いじめ、仕事の失敗
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失恋、離婚、家族の死
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結婚・妊娠・出産
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引越しや転職
「環境が大きく変わること」自体が、心の負荷になるためです。
4.シニアの心がうつになりやすい理由
高齢期には、身体だけでなく心の環境も大きく変化します。
●① 心が疲れやすくなる
50〜60代以降は、心のエネルギーが回復しにくくなります。(*3)
●② 脳の老化が始まる(60代〜)
前頭葉などが萎縮し、
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記憶
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集中
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判断
がゆっくり弱くなります。
ただし、
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言語力
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経験から学んだ力(結晶性知能)
は保たれます。
そのため、直感で判断しやすいなど、認知の特徴が変わります。
●③ 流動性知能の低下
計算力・暗記・情報処理スピードなどは20代がピークで、65歳頃から低下します。
●④ 多くの喪失体験
シニアが抱える最大のリスクは、
配偶者との死別(*4)。
生活の大きな変化や孤独感が、深い喪失感につながります。
●⑤ 退職・身体の変化・環境の変化
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役割の喪失
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身体の不調
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1人暮らし
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老人ホームへの入居
なども心の負担になります。
●⑥ 気づかないままストレスをため込む
「年のせい」と我慢し、ストレスに気づきにくいため、
自覚がないまま高齢者うつに進みやすいと指摘されています。(*3)
前編まとめ
前編では、
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うつ病の基本
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落ち込みとの違い
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なりやすい性格・きっかけ
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シニアがうつになりやすい理由
を紹介しました。
後編では、12月6日に公開された「高齢者うつ」の特徴・認知症との違い・注意点をお届けします。
補注
*1:「地域におけるうつ対策検討会報告書」厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神保健福祉課 心の健康づくり https://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/01/s0126-5.html#1
*2:「高齢者「うつ」の原因は?」国立長寿医療研究センター 精神科 安野史彦 https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/15.html
*3:「「うつ病」の4割以上は60歳以上が占める?」『認知症ではなく「うつ」だと知るための50のこと』長谷川 洋著、16~17ページ、https://www.tokuma.jp/book/b635848.html
*4:「高齢者の社会的孤立・孤独と不安・抑うつ」新村秀人 老年精神医学雑誌 第34巻 第2号 特集:高齢者の社会的孤立・孤独とメンタルヘルス 122~128頁、2023年2月
*5:「高齢者の心理的特徴」公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/sinriteki-tokuchou.html
*6:「資料8-1 高齢者のうつについて 」地域におけるうつ対策検討会 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-siryou8-1.pdf
*7:「うつ病の男女差」中高年のうつ病とその予防 医療法人健身会 https://medical-kenshinkai.com/depression#:~:text=%E7%94%B7%E6%80%A7%E3%81%AF50%E6%AD%B3%E4%BB%A3,%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
*8:グラフ「特-40図 男女別・年代別気分障害総患者数(令和2(2020)年)」内閣府男女共同参画局ホームより引用 https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/html/zuhyo/zuhyo00-40.html
*9:「第4章 認知症の予防 3.うつ予防との関わり」国立長寿医療研究センター病院 精神科部長 服部 英幸 公益財団法人長寿科学振興財団 https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/ninchisho-yobo-care/h30-4-3.html
*10:「第2節 高齢期の暮らしの動向(4)4 生活環境 (3) 60歳以上の者の自殺者数は増加」 令和5年版高齢社会白書(全体版)内閣府 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/html/zenbun/s1_2_4.html
*11:「令和5年中における自殺の状況」厚生労働省自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課 https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/R06/R5jisatsunojoukyou.pdf
*12:「認知症とうつ病の関係性は?」『認知症ではなく「うつ」だと知るための50のこと』長谷川 洋著、56~57ページ、https://www.tokuma.jp/book/b635848.html
以上







