高齢者虐待のサイン12チェック|家族介護の経済的虐待と早期発見のポイント【後編】

🌿― 地域包括支援センターに相談しましょう(後編)―

苦しんでいる介護者と怯えてるお年寄りがより良く暮らせる方法を探すために、地域包括支援センターに相談しましょう!(後編)

(Pixabay)

🔎この後編で伝えたいこと

  • 前編:わが家の虐待の経験、市区町村や地域包括支援センターの守秘義務、介護放棄の事例

  • 中編:Bさん・Cさん・Dさん・Eさんの事例から見えた、「家族だけでは抱えきれない現実」

に続き、この後編では

  1. 最後の事例(経済的虐待と介護放棄)

  2. 虐待の「早期発見に役立つ12のサイン」

を、スマホで読みやすい形で紹介します。


1.経済的虐待と介護放棄が重なったFさんのケース

苦しんでいる介護者と怯えてるお年寄りがより良く暮らせる方法を探すために、地域包括支援センターに相談しましょう!(後編)

(Annette Meyer/Pixabay)

●状況

  • 60代女性Fさん(要介護3、認知症あり)

  • 弟夫婦と3人暮らし

  • 短期入所生活介護(ショートステイ)を複数の施設で利用

市区町村の担当部署に、あるショートステイからこんな相談が入りました。

「Fさんの弟夫婦が『施設の対応が悪い』と言い、
半年間利用料を支払ってくれません。
期限を決めて督促しても、面会にも来ず、連絡もない状態です。
行政の権限で、Fさんを別の施設に移してほしい。」

調査すると、
Fさんは複数のショートステイを転々とし、どこでも同じトラブルを繰り返していることが分かりました。

  • 最初の2〜3か月は利用料を支払う

  • その後は「施設の対応が悪い」と言って不払い

  • 施設とのトラブルが増え、退所・転所を繰り返す

というパターンです。

🧩弟夫婦の言い分と、行政の判断

市区町村職員と地域包括支援センターの職員が、弟夫婦の自宅を訪問しましたが、玄関先でこう言われました。

  • 「対応が悪い施設側が悪いから、支払わない」

  • 「姉は引き取らない」

  • 「姉の年金は自分たちが管理している。施設の対応が改善すれば、そのうち払う」

しかし現実には、

  • 利用料は滞納したまま

  • 面会や引き取りの申し出もない

という状態が続いていました。

そこで市区町村と地域包括支援センターは協議し、

  • Fさんの年金は弟夫婦が管理している

  • それにもかかわらず、必要な利用料が支払われない

  • 面会や引き取りもせず、介護を放棄している

ことから、
「介護・世話の放棄・放任」と「経済的虐待」にあたる と判断しました。

🛡命と生活を守るための手段

行政は、老人福祉法に基づく 「やむを得ない事由による措置」 を適用し、
Fさんを継続的な施設入所へ切り替えることを決定しました。

同時に、

  • 弟夫婦に対しては、行政が立て替えた費用の自己負担分を請求

  • それでも支払いが得られない場合は、
    成年後見制度の「市長申立て」 を進める方針も確認しました(詳しくは補注*2)。

このように、
本人の判断力が低下していて、家族に適切な支援が期待できない場合には、行政が“代わりに動く仕組み” が用意されています。


2.虐待の「早期発見に役立つ12のサイン」

苦しんでいる介護者と怯えてるお年寄りがより良く暮らせる方法を探すために、地域包括支援センターに相談しましょう!(後編)

(hartono subagio/Pixabay)

鹿児島県はホームページで、高齢者虐待防止のポイントをわかりやすくまとめています。
その中の「早期発見に役立つ12のサイン」から、日常で気づきやすい点を紹介します。(*3)

※ここで挙げるのは「虐待の可能性があるサイン」です。
ひとつ当てはまる=すぐ虐待とは限りませんが、
「気になる状態が続いている」ときは、相談の目安にしてください。


① 不自然な傷やあざが続く

  • 身体にあざや傷が多い

  • 原因をたずねると、高齢者本人や介護者の説明がはっきりせず、不自然


② ひどいやせ・脱水・ぼんやりした様子

  • 皮膚のハリがなく、唇や舌が乾いている

  • 極端にやせていて、ぼんやりして反応が鈍い


③ 室内環境があまりにも不衛生

  • 部屋に衣類・おむつ・食べ残しなどが散乱

  • 冷暖房が使われておらず、異臭がする


④ 食事を「がっつく」・いつも空腹そう

  • 自分で食事の準備ができない人が、デイサービスなどで
    一気にかき込む・他人の分まで欲しがる

  • 冷蔵庫に食材がほとんどなく、「ヘルパーが来るまで何も食べていなかった」と話す


⑤ 薬や受診が放置されている

  • 必要な薬が飲めていない

  • 体調が悪そうなのに、病院受診の記録がない

  • 服薬の介助もされていない


⑥ 強い落ち込み・あきらめの言葉が多い

  • 無力感・抑うつ・あきらめの態度が目立つ

  • 話しかけても表情が乏しく、声かけを拒む

  • 「自分なんてつまらない人間だ」と卑下したり、泣き出す


⑦ 逆に、落ち着きのない行動が続く

  • じっとしていられず、異常にしゃべり続ける

  • 体を揺する・自分を傷つける・指しゃぶり・かみつきなどの行動が続く

  • 不調を何度も訴える(不定愁訴)、オーバーな表現が多い


⑧ お金があるはずなのに、生活が極端に苦しい

  • 「年金を取り上げられた」と訴える

  • 介護サービスや医療を拒否しているのに、身なりは明らかにボロボロ

  • 介護サービス料や生活費の滞納が続く

  • 身に覚えのない借金の取り立てが来る

  • 高価な品物がいつの間にか処分されている


⑨ 介護の様子が乱暴・威圧的に見える

  • 無理に手を引っ張って立たせる

  • おむつやパッドを勢いよく引き抜く

  • 大きな声で怒鳴る、乱暴な言葉づかいをする


⑩ 家族が支援者を避け続ける

  • 民生委員・保健師・ケアマネジャーなどの訪問を断る

  • 居留守を使うことが多い

  • 必要な支援を勧めても、話を聞かずにすぐ断る


⑪ 家の中から怒鳴り声や悲鳴がする

  • 家族の怒鳴り声や、高齢者の悲鳴・泣き声が聞こえる

  • 物が割れる音、壁や床に何かがぶつかるような音がする

  • 「やめて」「ごめんなさい」という懇願の声が頻繁に聞こえる


⑫ 高齢者の姿が不自然に“見えない”・“外に立たされている”

  • 天気が悪いのに、長時間外に立たされている

  • 逆に、急に姿を見かけなくなる

  • 排泄の失敗をしたまま、衣類や布団が放置されている

  • 昼間もずっと窓が閉まり、出入りする様子が全く見えない


3.「サインに気づいた人」が、虐待を止めるカギになる

苦しんでいる介護者と怯えてるお年寄りがより良く暮らせる方法を探すために、地域包括支援センターに相談しましょう!(後編)

(Peggy und Marco Lachmann-Anke/Pixabay)

ここで紹介した12のサインは、あくまで 「虐待の疑いを持つためのヒント」 です。
1つ当てはまったからといって、すぐに「虐待だ!」と決めつける必要はありません。

ただし、
気になる状態が続いているときに、何もしないまま放置すること が、いちばん危険です。

実際の対応事例でも、

  • 新聞配達員

  • 隣家の方

  • 美容師

  • 牛乳配達員

など、身近な人の「気づき」と「ひとことの相談」 がきっかけで、虐待が発見され、命が救われたケースがたくさんあります。


4.数字が語る現実と、あなたへのお願い

苦しんでいる介護者と怯えてるお年寄りがより良く暮らせる方法を探すために、地域包括支援センターに相談しましょう!(後編)

(Annette Meyer/Pixabay)

厚生労働省の調査によると、
介護・養護をしている近親者からの虐待は、施設職員による虐待よりも10倍以上多い ことがわかっています。

  • 養護者(家族・親族など)による虐待:17,100件

  • 施設・事業所職員による虐待:1,123件
    (令和5年度、詳細は補注*4)

家の中で起きていることは、外から見えにくく、
実際の件数は、統計よりも多い可能性が高い と言われています。


5.「おかしいな」と思ったら、まず相談してみてください

苦しんでいる介護者と怯えてるお年寄りがより良く暮らせる方法を探すために、地域包括支援センターに相談しましょう!(後編)

(PublicDomainPictures/Pixabay)

  • 「虐待かどうかは分からない」

  • 「ただ気になるだけ」

そんな状態のままで、相談して大丈夫 です。

  • 市区町村の高齢者相談窓口

  • お住まいの地域の地域包括支援センター

は、守秘義務を持って、あなたの話を聞き、必要な支援につないでくれる専門家チームです。

  • 通報した人が誰か、相手に知られることはありません

  • 相談したからといって、いきなり家族が責められるわけではありません

  • 「家族全員が少しでも楽になる方法」を一緒に探してくれます

どうか一人で抱えこまず、
苦しんでいる介護者と怯えているお年寄りのために
あなたの「気づき」を、相談という形に変えてみてください。


👉 3部作をあわせて読むために

3本を通して読むことで、
「いつ・どんな状態で・どこに相談すればよいか」が、より立体的に見えてきます。

苦しんでいる介護者と怯えてるお年寄りがより良く暮らせる方法を探すために、地域包括支援センターに相談しましょう!(後編)

(Hans/Pixabay)

補注

*1:在宅介護支援センターとは
在宅で暮らす高齢者や家族の相談に応じ、介護や生活に関する不安・悩みを聞きながら、必要な保健・医療・福祉サービスにつなぐ役割を持つ相談窓口。身近な「地域型」と、それらを支援・総括する「基幹型」がある。
出典:東京の福祉オールガイド
https://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/04k_kourei/zaitakukaigoshiensenta.html

*2:市長申立て(成年後見制度)
認知症などで判断能力が不十分な人に成年後見人が必要だが、親族による申立てが期待できない場合に、市長が家庭裁判所へ申し立てを行う制度。虐待や経済的搾取が疑われるときに、高齢者の財産と生活を守るために使われる。
出典:印西市「市長申立てについて(成年後見制度)」
https://www.city.inzai.lg.jp/0000017245.html

*3:早期発見に役立つ12のサイン
鹿児島県「高齢者虐待防止に向けた取組について」内の資料「早期発見に役立つ12のサイン」に基づき要約。
https://www.pref.kagoshima.jp/ae05/kenko-fukushi/koreisya/gyakutai/koureigyakutaiboushi.html

*4:高齢者虐待の件数
令和5年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果(厚生労働省)。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_48003.html


参考資料

以上

苦しんでいる介護者と怯えてるお年寄りがより良く暮らせる方法を探すために、地域包括支援センターに相談しましょう!(後編)

(Nicky/Pixabay)

 

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