高齢者虐待のサイン12チェック|家族介護の経済的虐待と早期発見のポイント【後編】
🌿― 地域包括支援センターに相談しましょう(後編)―
🔎この後編で伝えたいこと
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前編:わが家の虐待の経験、市区町村や地域包括支援センターの守秘義務、介護放棄の事例
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中編:Bさん・Cさん・Dさん・Eさんの事例から見えた、「家族だけでは抱えきれない現実」
に続き、この後編では
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最後の事例(経済的虐待と介護放棄)
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虐待の「早期発見に役立つ12のサイン」
を、スマホで読みやすい形で紹介します。
1.経済的虐待と介護放棄が重なったFさんのケース
●状況
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60代女性Fさん(要介護3、認知症あり)
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弟夫婦と3人暮らし
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短期入所生活介護(ショートステイ)を複数の施設で利用
市区町村の担当部署に、あるショートステイからこんな相談が入りました。
「Fさんの弟夫婦が『施設の対応が悪い』と言い、
半年間利用料を支払ってくれません。
期限を決めて督促しても、面会にも来ず、連絡もない状態です。
行政の権限で、Fさんを別の施設に移してほしい。」
調査すると、
Fさんは複数のショートステイを転々とし、どこでも同じトラブルを繰り返していることが分かりました。
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最初の2〜3か月は利用料を支払う
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その後は「施設の対応が悪い」と言って不払い
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施設とのトラブルが増え、退所・転所を繰り返す
というパターンです。
🧩弟夫婦の言い分と、行政の判断
市区町村職員と地域包括支援センターの職員が、弟夫婦の自宅を訪問しましたが、玄関先でこう言われました。
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「対応が悪い施設側が悪いから、支払わない」
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「姉は引き取らない」
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「姉の年金は自分たちが管理している。施設の対応が改善すれば、そのうち払う」
しかし現実には、
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利用料は滞納したまま
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面会や引き取りの申し出もない
という状態が続いていました。
そこで市区町村と地域包括支援センターは協議し、
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Fさんの年金は弟夫婦が管理している
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それにもかかわらず、必要な利用料が支払われない
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面会や引き取りもせず、介護を放棄している
ことから、
「介護・世話の放棄・放任」と「経済的虐待」にあたる と判断しました。
🛡命と生活を守るための手段
行政は、老人福祉法に基づく 「やむを得ない事由による措置」 を適用し、
Fさんを継続的な施設入所へ切り替えることを決定しました。
同時に、
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弟夫婦に対しては、行政が立て替えた費用の自己負担分を請求
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それでも支払いが得られない場合は、
成年後見制度の「市長申立て」 を進める方針も確認しました(詳しくは補注*2)。
このように、
本人の判断力が低下していて、家族に適切な支援が期待できない場合には、行政が“代わりに動く仕組み” が用意されています。
2.虐待の「早期発見に役立つ12のサイン」
鹿児島県はホームページで、高齢者虐待防止のポイントをわかりやすくまとめています。
その中の「早期発見に役立つ12のサイン」から、日常で気づきやすい点を紹介します。(*3)
※ここで挙げるのは「虐待の可能性があるサイン」です。
ひとつ当てはまる=すぐ虐待とは限りませんが、
「気になる状態が続いている」ときは、相談の目安にしてください。
① 不自然な傷やあざが続く
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身体にあざや傷が多い
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原因をたずねると、高齢者本人や介護者の説明がはっきりせず、不自然
② ひどいやせ・脱水・ぼんやりした様子
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皮膚のハリがなく、唇や舌が乾いている
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極端にやせていて、ぼんやりして反応が鈍い
③ 室内環境があまりにも不衛生
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部屋に衣類・おむつ・食べ残しなどが散乱
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冷暖房が使われておらず、異臭がする
④ 食事を「がっつく」・いつも空腹そう
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自分で食事の準備ができない人が、デイサービスなどで
一気にかき込む・他人の分まで欲しがる -
冷蔵庫に食材がほとんどなく、「ヘルパーが来るまで何も食べていなかった」と話す
⑤ 薬や受診が放置されている
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必要な薬が飲めていない
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体調が悪そうなのに、病院受診の記録がない
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服薬の介助もされていない
⑥ 強い落ち込み・あきらめの言葉が多い
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無力感・抑うつ・あきらめの態度が目立つ
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話しかけても表情が乏しく、声かけを拒む
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「自分なんてつまらない人間だ」と卑下したり、泣き出す
⑦ 逆に、落ち着きのない行動が続く
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じっとしていられず、異常にしゃべり続ける
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体を揺する・自分を傷つける・指しゃぶり・かみつきなどの行動が続く
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不調を何度も訴える(不定愁訴)、オーバーな表現が多い
⑧ お金があるはずなのに、生活が極端に苦しい
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「年金を取り上げられた」と訴える
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介護サービスや医療を拒否しているのに、身なりは明らかにボロボロ
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介護サービス料や生活費の滞納が続く
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身に覚えのない借金の取り立てが来る
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高価な品物がいつの間にか処分されている
⑨ 介護の様子が乱暴・威圧的に見える
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無理に手を引っ張って立たせる
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おむつやパッドを勢いよく引き抜く
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大きな声で怒鳴る、乱暴な言葉づかいをする
⑩ 家族が支援者を避け続ける
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民生委員・保健師・ケアマネジャーなどの訪問を断る
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居留守を使うことが多い
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必要な支援を勧めても、話を聞かずにすぐ断る
⑪ 家の中から怒鳴り声や悲鳴がする
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家族の怒鳴り声や、高齢者の悲鳴・泣き声が聞こえる
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物が割れる音、壁や床に何かがぶつかるような音がする
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「やめて」「ごめんなさい」という懇願の声が頻繁に聞こえる
⑫ 高齢者の姿が不自然に“見えない”・“外に立たされている”
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天気が悪いのに、長時間外に立たされている
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逆に、急に姿を見かけなくなる
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排泄の失敗をしたまま、衣類や布団が放置されている
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昼間もずっと窓が閉まり、出入りする様子が全く見えない
3.「サインに気づいた人」が、虐待を止めるカギになる
ここで紹介した12のサインは、あくまで 「虐待の疑いを持つためのヒント」 です。
1つ当てはまったからといって、すぐに「虐待だ!」と決めつける必要はありません。
ただし、
気になる状態が続いているときに、何もしないまま放置すること が、いちばん危険です。
実際の対応事例でも、
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新聞配達員
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隣家の方
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美容師
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牛乳配達員
など、身近な人の「気づき」と「ひとことの相談」 がきっかけで、虐待が発見され、命が救われたケースがたくさんあります。
4.数字が語る現実と、あなたへのお願い
厚生労働省の調査によると、
介護・養護をしている近親者からの虐待は、施設職員による虐待よりも10倍以上多い ことがわかっています。
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養護者(家族・親族など)による虐待:17,100件
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施設・事業所職員による虐待:1,123件
(令和5年度、詳細は補注*4)
家の中で起きていることは、外から見えにくく、
実際の件数は、統計よりも多い可能性が高い と言われています。
5.「おかしいな」と思ったら、まず相談してみてください
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「虐待かどうかは分からない」
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「ただ気になるだけ」
そんな状態のままで、相談して大丈夫 です。
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市区町村の高齢者相談窓口
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お住まいの地域の地域包括支援センター
は、守秘義務を持って、あなたの話を聞き、必要な支援につないでくれる専門家チームです。
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通報した人が誰か、相手に知られることはありません
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相談したからといって、いきなり家族が責められるわけではありません
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「家族全員が少しでも楽になる方法」を一緒に探してくれます
どうか一人で抱えこまず、
苦しんでいる介護者と怯えているお年寄りのために、
あなたの「気づき」を、相談という形に変えてみてください。
👉 3部作をあわせて読むために
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後編(本記事):
「経済的虐待の事例と、早期発見に役立つ12のサイン」
3本を通して読むことで、
「いつ・どんな状態で・どこに相談すればよいか」が、より立体的に見えてきます。
補注
*1:在宅介護支援センターとは
在宅で暮らす高齢者や家族の相談に応じ、介護や生活に関する不安・悩みを聞きながら、必要な保健・医療・福祉サービスにつなぐ役割を持つ相談窓口。身近な「地域型」と、それらを支援・総括する「基幹型」がある。
出典:東京の福祉オールガイド
https://www.fukunavi.or.jp/fukunavi/eip/20kuwashiku/04k_kourei/zaitakukaigoshiensenta.html
*2:市長申立て(成年後見制度)
認知症などで判断能力が不十分な人に成年後見人が必要だが、親族による申立てが期待できない場合に、市長が家庭裁判所へ申し立てを行う制度。虐待や経済的搾取が疑われるときに、高齢者の財産と生活を守るために使われる。
出典:印西市「市長申立てについて(成年後見制度)」
https://www.city.inzai.lg.jp/0000017245.html
*3:早期発見に役立つ12のサイン
鹿児島県「高齢者虐待防止に向けた取組について」内の資料「早期発見に役立つ12のサイン」に基づき要約。
https://www.pref.kagoshima.jp/ae05/kenko-fukushi/koreisya/gyakutai/koureigyakutaiboushi.html
*4:高齢者虐待の件数
令和5年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果(厚生労働省)。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_48003.html
参考資料
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神奈川県「養護者による高齢者虐待対応事例集」
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栃木県「栃木県高齢者虐待対応マニュアル」
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青森県「高齢者虐待対応事例集(改訂版)」
以上









