在宅介護の負担はなぜ増える?MCI・アルツハイマー家族の負担が高まる理由を専門家データで解説【前編】

📖 認知症介護シリーズ(全2回)

▶ 【前編】在宅介護の負担はなぜ増える?MCI・アルツハイマー家族の負担が高まる理由
https://kizuna-iyashi.com/2025/05/02/homemade-323/

▶ 【後編】在宅介護の負担を減らすには?MCI・アルツハイマー家族が使える具体策と相談先
https://kizuna-iyashi.com/2025/05/09/homemade-324/

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者が、リハ1年後に介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(前編)

(Annette Meyer/Pixabay)

在宅で軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー型認知症の方を介護している家族は、
「なぜ負担が増えるのか」「どんな人が特に負担を感じやすいのか」を知ることで、つらさを軽減する手がかりが得られます。

国立長寿医療研究センター(NCGG)リハビリテーション科・神谷正樹先生らの研究(*1)は、
家族介護者49名を1年間追跡し、介護負担が増える人と減る人の違いを詳しく調べたものです。

前編では、
▶ 研究の対象
▶ 家族が感じる負担の特徴
▶ 負担が増える人・増えない人の違い
をわかりやすく解説します。

1.誰を対象にした研究?

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者が、リハ1年後に介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(前編)

(Hans/Pixabay)

■ 対象者

患者 49名
・男性25名/女性24名
・年齢:中央値 74.6歳(61〜86歳)
・MCI:12名、アルツハイマー型認知症:37名
・MMSE-J:中央値24点(19〜27点)

家族介護者 49名
・男性14名/女性35名
・年齢:中央値 67.6歳
・続柄:妻25、夫13、娘8、息子1、嫁2

■ 外来リハビリの内容(1年間)

  • 認知症専門医による診察

  • 週1回60分の運動療法+認知訓練

  • 家族教室や個別相談で、
     「認知症の理解」「対応技術」「介護サービス情報」を提供

■ 測定した項目

  • 認知症の重症度

  • 認知機能

  • BPSD

  • 生活機能(ADL / IADL)

  • 家族介護者の負担感

  • 家族のメンタル状態(抑うつ/不安)

  • QOL(生活の質)

2.介護負担を強く感じるのはどんな時?

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者が、リハ1年後に介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(前編)

(tuku/Pixabay)

▼ リハ開始前の時点で、負担が大きいのは…

① 中等度〜高度の認知症の家族
→「認知症の疑い」の段階より負担が明らかに高い

② 要介護2の家族
→「要介護なし」「要介護1」の家族より負担が高い

③ 生活機能(ADL)が低くても負担感とは無関係
→「完全自立」か「部分介助」かは負担感に差なし
重要:ADLより“認知機能の低下”のほうが家族負担と直結

④ 介護者の続柄による差はなし
→ 妻でも夫でも娘でも、負担感の大きさは変わらない


3.1年後、負担が「増えた人」と「増えなかった人」の違いは?

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者が、リハ1年後に介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(前編)

(wal_172619/Pixabay)

■ 1年後の変化

  • 負担が減少・維持:20名

  • 負担が増加:29名

ここからが重要です。

▼ どの項目にも“差がなかった”

負担増加群・減少群で、

  • 患者の年齢・性別

  • 認知症の重症度

  • BPSD(問題行動)

  • 生活機能(ADL/IADL)

  • 教育歴

  • 介護者の年齢・続柄

  • 介護サービス利用状況

どれも負担を決める条件にはならなかった。

つまり、
負担の差は「性別や続柄」では決まらず、もっと別の要因があるということ。


4.負担が増えた人に共通していた“本当の要因”とは?

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者が、リハ1年後に介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(前編)

(Mabel Amber, who will one day/Pixabay)

▼ 負担が増えた人で見られた変化

① 認知機能(記憶力)が低下していた
→ MMSE-Jの低下が最も大きな特徴

② 前頭葉機能も低下
→ 計画性・切り替え・抑制などが難しくなる

③ 生活機能・IADLが低下
→ 買い物・金銭管理・外出などの“複雑な日常生活”が困難に

④ 男女であらわれた生活の変化が逆方向

  • 男性患者:外出頻度が増加

  • 女性患者:買い物・片付けが減少
    → 家族は「いつもと違う行動」に対応する負担が増加

⑤ 「友人を呼べない」を除き、ほぼ全項目で負担が増加

▼ メンタル面は両群とも差なし

  • うつ傾向

  • 不安

  • ストレス反応
    どれも変化なし。

👉 家族の“こころの強さ”ではなく、患者側の変化が負担を左右していた。


5.専門家による考察(わかりやすく解説)

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者が、リハ1年後に介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(前編)

(Hans/Pixabay)

神谷先生らの結論:

「記憶障害が進むと、同じ予定を繰り返し伝える必要が増え、
声かけ・確認が多くなることがストレスにつながる。」

つまり、
▶ 認知機能の低下
▶ IADLの低下
が、家族の精神的負担となる。

だからこそ、
“中核症状の進行を少しでも遅らせるリハビリ・刺激・関わり方”が重要になります。

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者が、リハ1年後に介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(前編)

(Hans/Pixabay)

🔚 前編まとめ

  • 家族の負担は「性別・続柄・介護度」で決まるのではない

  • 認知機能の低下こそが負担増加の最大要因

  • IADL(買い物・外出・金銭管理)の低下も影響

  • 生活機能(ADL)は負担とは無関係

  • 家族のメンタル状態では負担の差は生まれない

次回(後編)では、負担を軽減するための具体的な対策・リハビリ・家族の工夫を紹介します。

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者が、リハ1年後に介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(前編)

(Mabel Amber, who will one day/Pixabay)

謝辞

研究・臨床に携わるすべての医療・介護従事者の皆さまに深く感謝いたします。
認知症の方とご家族が、少しでも穏やかな日々を過ごせますように。

補注

*1:論文「軽度認知障害と認知症患者の介護負担感の 1 年の経過と変化の要因に関する探索的検討」神谷 正樹,大沢 愛子,村田 璃聖,植田 郁恵, 前島伸一郎,櫻井  孝,近藤 和泉、日本認知症学会誌Dementia Japan Vol36-1; 142-151ページ, 2022年, https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p142-151.pdf

*2: 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター https://www.ncgg.go.jp/

*3:精神状態短時間検査 改訂日本語版(MiniMental State ExaminationJapanese : MMSEJ)認知症スクリーニング検査のグローバルスタンダードMMSEの正規日本版です。 11のカテゴリーに分けられる一連の質問と課題から構成され、10分程度で簡便に18歳〜85歳の認知機能を測定します。 18歳~85歳を対象とした、認知症スクリーニング検査です。https://www.saccess55.co.jp/kobetu/detail/mmse_j.html

*4:「前頭葉機能検査:脳の中の、前頭葉の機能を中心に評価する検査です。言葉の概念化(類似の把握)、言語流暢性、運動プログラミング、干渉への感受性、抑制性制御、理解行動を調べる6つの項目からなっています。得点が低下するほど、前頭葉の機能障害の可能性が上がります。前頭側頭型認知症の鑑別などに用いられます。」認知機能検査について – 和歌山県立医科大学 https://www.wakayama-med.ac.jp/med/bun-in/dementia/shindan/shinri.html#:~:text=4%20FAB%EF%BC%88Frontal%20Assessment%20Battery,%E3%81%AB%E8%A9%95%E4%BE%A1%E3%81%99%E3%82%8B%E6%A4%9C%E6%9F%BB%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

*5:「生活機能の評価:この論文では、Barthel Index(BI)とFrenchay Activities Index (FAI)を用いて測定しています。日常生活動作(ADL)を評価するのが、Barthel Index(BI)です。

BI(バーセルインデックス)は、米国の医師Mahoneyと理学療法士Barthelによって作られた、日常生活動作(ADL)を評価する指標のひとつです。 食事や移乗、トイレなどの全10項目で構成され、検査や訓練を通してできたことを15点、10点、5点、0点の4段階で評価します。https://www.ekaigotenshoku.com/ekaigowith/2022/09/30/bi/#:、~:text=%E8%AA%AC%E6%98%8E%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82-,BI%EF%BC%88%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%EF%BC%89%E3%81%AE%E6%84%8F%E5%91%B3,%E6%AE%B5%E9%9A%8E%E3%81%A7%E8%A9%95%E4%BE%A1%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

*6:手段的日常生活動作の評価:買い物や食事の準備、服薬管理、金銭管理、交通機関を使っての外出など、複雑な動作や判断が求められる活動がIADLです。手段的日常生活動作(IADL)は、Frenchay Activities Index (FAI)を用いて測定しています。

FAI は、日常生活の中でも応用動作や社会生活における活動の全 15 項目を評価します。 面接調査で、最近の 3 か月間または 6 か月間の行動を評価するものです。 住み慣れた地域で生活できているご高齢者の IADL を評価するために用いられます。https://rehabilikunblog.com/iadl_frenchay-activities-index/#:~:text=IADL%20%E3%82%92%E8%A9%95%E4%BE%A1%E3%81%99%E3%82%8B%20FAI,%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB%E7%94%A8%E3%81%84%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

IADLとは、買い物や食事の準備、服薬管理、金銭管理、交通機関を使っての外出など、複雑な動作や判断が求められる活動のことです。 IADLは、患者さんが自立して生活を送れるかの判断材料として、介護現場に取り入れられています。https://job.kiracare.jp/note/article/27016/#:~:text=%E5%85%B7%E4%BD%93%E7%9A%84%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%80%81%E8%B2%B7%E3%81%84%E7%89%A9,%E3%81%A8%E3%81%AF%E3%80%8D%E3%82%92%E3%81%94%E8%A6%A7%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84%E3%80%82

以上

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