在宅介護の負担を減らすには?MCI・アルツハイマー家族が使える具体策と相談先【後編】

📖 認知症介護シリーズ(全2回)

▶ 【前編】在宅介護の負担はなぜ増える?MCI・アルツハイマー家族の負担が高まる理由
https://kizuna-iyashi.com/2025/05/02/homemade-323/

▶ 【後編】在宅介護の負担を減らすには?MCI・アルツハイマー家族が使える具体策と相談先
https://kizuna-iyashi.com/2025/05/09/homemade-324/

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者で、介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(後編)

(Ben Kerckx/Pixabay)

 

前編では、国立長寿医療研究センター・神谷正樹先生らの研究(*1)から、
家族の介護負担が増える原因を紹介しました。

後編では、
▶ 認知症の進行を遅らせる方法
▶ 家族の負担を減らす具体策
▶ 専門医・相談先の探し方
▶ 交流や仲間づくりの場所
を、読みやすくまとめます。


1.介護負担を減らすためにできること

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者で、介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(後編)

(Annette Meyer/Pixabay)

研究チームは、負担が増える理由として
「中核症状(*2)の悪化」「ADL(*3)・IADL(*4)の低下」 を挙げています。

つまり、
認知機能と生活機能を“維持する関わり方”が負担軽減につながる
ということです。

ここでは実際に役立つ対策を7つにまとめました。


① 認知機能の維持につながるリハビリを受ける

  • 運動療法

  • 認知訓練(脳トレ・計画力の訓練など)
    中核症状の進行を遅らせ、負担増を防ぐ


② ADL・IADLの低下を防ぐリハビリを取り入れる

  • ADL(*3):排泄・入浴・食事など

  • IADL(*4):買い物・金銭管理・外出など

ADLが「中等度介助」になると、負担が強まりやすいという報告もあります。
現状維持を目標にリハビリを続けることがポイント。


③ BPSD(*5)の悪化を防ぐ“個別作業療法(*6)”を受ける

在宅認知症高齢者の79%にBPSDがあるとの調査もあります。

有効なのは、

  • 個別の作業療法(*6)

  • 薬を使わない非薬物療法(*7)

  • 環境調整

  • 介護者が対応技術を学ぶこと

問題行動が減ると、家族のストレスも大きく減少します。


④ 男性患者の「外出増加」に対応するサポートを使う(重要)

男性高齢者は家事が少なく、
日中の過ごし方がなく外出を希望しやすい特徴があります。

→ 家族が同行すると負担が増えるため、
デイサービス・見守りサービス・地域ボランティアを活用して外出機会を調整します。


⑤ 女性患者の「家事低下」には外部サービスを併用

男性介護者が家事を担うケースでは、
皿洗いや買い物のミスへの“やり直し”ストレスが増加しやすい傾向があります。

認知症の方が、皿洗いの手順がわからなくなったり、物の片付け場所を誤ったり、買い物の内容を忘れて同じ物を複数購入してしまうのは、「記憶の混乱」や「段取りを考える力の低下」などが重なって起こります。(*8)

▼ 具体的な負担軽減策

  • 食洗機・電子レンジ調理を活用

  • 配食サービス

  • スーパーの宅配便
    介護+家事のダブル負担を減らすのが重要ポイント。


⑥ 家族自身が「認知症の理解と対応技術」を学ぶ

認知症の理解と対応技術の習得は、
介護負担を軽減する“中等度の効果”があるとガイドライン(*9)も明言。

  • 病気の知識

  • BPSD対応のコツ

  • 声かけ・環境調整の方法

国立長寿医療研究センターのリハ科でも
家族向け教育プログラムがあり、負担軽減に役立っています。


⑦ 介護サービスを積極的に利用して「休息時間」を確保

介護負担の維持・減少群は、
介護サービスをうまく使っていた可能性が高いとされています。

  • デイサービス

  • 訪問リハビリ

  • ショートステイ

  • ケアマネによる助成制度の紹介

→ 休息が取れると、精神的負担も大幅に減ります。


⑧ 家族参加型リハビリや交流の場を活用する

家族参加型グループリハビリでは

  • 介護者同士の協働

  • 情報共有

  • 連帯感
    が生まれ、
    「1人じゃない」と思える経験が負担軽減に直結します。

国立長寿医療研究センターでも、
患者と家族が一緒に参加する場が整備され、
ピアサポートが自然に生まれています。


2.医療・介護の専門的な相談はどこにすればいい?

 

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者で、介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(後編)

(Ria/Pixabay)

A.医療の相談 → 認知症専門医へ

最新治療やリハ内容の妥当性は専門医で確認できます。

検索はこちら
👉 日本認知症学会「専門医・施設検索」
https://dementia-japan.org/doctors/?tab=0&keyword=&prefecture=0&address=


B.介護サービスの相談 → 地域包括支援センターへ

例えば、

  • 家事や外出の付き添いボランティア

  • 配食サービス

  • 地域支援の仕組み
    を知りたい時は、最寄りの地域包括支援センターへ。

※ わからない場合は、市区町村の介護保険担当窓口へ電話すれば案内してもらえます。


3.家族と本人が参加できる交流の場

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者で、介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(後編)

(Uschi/Pixabay)

認知症の介護は、一人で抱え込むと負担が数倍に増します。
安心して話せる仲間や、専門職とつながる場を持つことが大切。


A.公益社団法人「認知症の人と家族の会」

  • 仲間づくり

  • 情報交換

  • 勉強会

  • 無料電話相談

  • 医師による解説ページ

👉 https://www.alzheimer.or.jp/


B.全国の「認知症カフェ」

全国7,000か所以上。
公民館や地域センターなどで月1回程度開催。
お茶を飲みながら気軽に相談・交流できる場所です。

▼ ここがポイント

  • 予約不要の場所も多い

  • 認知症の方も家族も参加OK

  • 専門職も常駐し、介護相談ができる

  • 交流がストレス軽減に直結

SNSや自治体サイトで検索すると、近くのカフェが見つかります。

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者で、介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(後編)

(Светлана/Pixabay)

🕊️ 介護者のあなたへ

認知症介護は、
「病気の進行」+「生活の変化」+「家族の不安」が重なり、
無意識のうちに負担が増えていきます。

けれど、
✔ 知識を持つ
✔ サービスを活用する
✔ 仲間とつながる
ことで、負担は確実に軽くなります。

あなたが少しでも楽になれますように。

在宅の軽度認知障害やアルツハイマー型認知症患者の家族介護者で、介護負担感が増減する原因と対策を紹介!(後編)

(Nadine Doerlé/Pixabay)

謝辞

研究・臨床に取り組むすべての医療・介護関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

補注

*1:論文「軽度認知障害と認知症患者の介護負担感の 1 年の経過と変化の要因に関する探索的検討」神谷 正樹,大沢 愛子,村田 璃聖,植田 郁恵, 前島伸一郎,櫻井  孝,近藤 和泉、日本認知症学会誌Dementia Japan Vol36-1; 142-151ページ, 2022年, https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/p142-151.pdf

*2: 認知症の中核症状:認知症で、脳の細胞が死ぬ、脳の働きが低下することによって直接的に起こる記憶障害、見当識障害、理解・判断力の低下、実行機能障害、言語障害(失語)、失行・失認などの認知機能の障害を中核症状と言います。健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/chukaku.html

*3:日常生活動作(ADL):日常生活動作(ADL)とはActivities of Daily Livingのことで、ADLのAはアクティビティー(動作)、DLはデイリーリビング(日常生活)を指します3)。日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことです。健康長寿ネット  https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/jiritu.html

*4:手段的日常生活動作(IADL): 手段的日常生活動作(IADL)は、基本的日常生活動作(BADL)の次の段階を指します。「掃除・料理・洗濯・買い物などの家事や交通機関の利用、電話対応などのコミュニケーション、スケジュール調整、服薬管理、金銭管理、趣味」などの複雑な日常生活動作のことを指します。健康長寿ネット  https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/jiritu.html

*5:BPSD:認知症の方に見られる、落ち着きのなさや攻撃性、妄想、幻覚など、いろいろな行動や心理の変化を総称して、「認知症の行動・心理症状(BPSD)」と呼びます。認知症に伴う脳の機能低下が、これらの症状を引き起こす主な原因と考えられています。医療法人社団 明寿会  https://meijukai.com/2025/03/26/1366/

*6:「作業療法:認知症患者向けにおこなわれるリハビリによる非薬物療法は、作業療法と呼ばれています。ここで言う「作業」とは入浴、食事、排泄、家事など日常生活にかかわる活動のことを指します。

作業療法はこういった日常生活における活動を通して心身機能の維持や強化を図ります。自立した生活だけではなく社会との繋がりの回復なども目的としています。

また主に上肢筋力や手指の精密な動きなどの身体機能と判断能力などの心理機能を統合的に活用しておこなわれるので、非常に高いリハビリ効果を得ることが可能です。」日刊介護新聞 https://e-nursingcare.com/guide/dementia/rehabilitation/

*7:「非薬物療法:非薬物的療法とは、薬物を用いない治療的なアプローチのことで、リハビリテーションや心理療法などがあります。認知症の方と家族の方を支援する関わりや環境を整えることも大切な治療要素です。」健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/hi-yakubutsu.html

*8:

「近時記憶障害:近時記憶とは、数分~数日ほど保持される記憶のことです。 思い出そうとした際にさまざまな記憶の干渉が入りますが、一度忘れたことでも記憶をたどることで思い出せるという特徴があります。」近時記憶とは? https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/ninchisho/column2/16/#:~:text=%E8%BF%91%E6%99%82%E8%A8%98%E6%86%B6%E3%81%A8%E3%81%AF,%E6%80%9D%E3%81%84%E5%87%BA%E3%81%9B%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E7%89%B9%E5%BE%B4%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

「遂行機能障害: 遂行機能障害(実行機能障害)とは、物事を倫理的に考え、計画を立て、効率的に実行することが困難になる障害です」遂行機能障害(実行機能障害)とは https://www.sompo-egaoclub.com/articles/topic/1610

「失行症:認知症における失行とは①食事の時に箸やスプーンを使うことができない。②椅子から立ったり座ったりが分からない ③服を着たり脱いだりするときに、歯ブラシや電気カミソリを持つことができない。④電話やテレビのリモコン操作ができない」認知所の中核症状「失行」とは? https://www.minnanokaigo.com/news/kaigo-text/dementia/no286/

*9:認知症疾患診療ガイドライン 2017:  認知症に関する情報を網羅した診療ガイドラインに待望の改訂版。定義や疫学、診断、治療、社会資源などの総論的な内容から、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症など原因疾患ごとの具体的な特徴や診断・治療法といった各論的な内容までを幅広く網羅。全編クリニカル・クエスチョン形式で、読者の疑問にダイレクトかつわかりやすく答える内容となっている。医学書院 https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/91798

以上

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