介護うつのサインに気づくには?同居家族・非同居家族・友人別の対応法
86歳の奥様が91歳の夫の介護に疲れ果て、ご主人を殺してご自分も自殺を図った様子を、同居ご家族が発見したとニュースが伝えていました。介護に疲れ果てた末、ご主人と一緒にあの世に行こうと思い詰めてしまったのでしょうか?
悲劇を防ぐために、「介護うつ」「介護疲れ」で生じるサインと対応策を、友人・同居家族・非同居家族に分けてご紹介します。
1.介護うつを招きやすい性格・傾向
日本うつ病学会(*1)や厚労省「家族介護者支援マニュアル」(*2)等の研究より抜き書きしました。
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責任感が強すぎる
「自分がやらなければ」「迷惑をかけられない」と抱え込みやすい。 -
人に頼るのが苦手
援助要請が遅れ、孤立しやすい。 -
几帳面・完璧主義
ケアの小さな失敗を許せず、自分を責めやすい。 -
我慢強い
苦しいことを周囲に言わず、限界を超えてしまう。 -
感情表現が少ない・相談相手が少ない
ストレスを外に出せず、内面化してうつ傾向に。
2.周囲が気づきやすい介護うつ気味の行動・感情の変化
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よく泣く、表情が暗い、笑わなくなった
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「眠れない」「疲れが取れない」と口にする
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食欲がない、体重が減っている
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「もうやっていけない」「自分がいなくなれば楽になる」といった言葉が出る
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友人・趣味の集まりから姿を消す
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怒りっぽくなる、介護される側にきつく当たることが増える
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金銭的・将来的な不安を繰り返し強調する
3.友人としてできる対応方法
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気軽に声をかける
「最近どう?」と世間話をしつつ様子を聞く。 -
否定せず受けとめる
「大変だね」「無理しすぎないで」と共感の言葉を返す。 -
サービス利用を勧めるときは具体的に
「地域包括支援センターに電話してみたら?」と行動の一歩を一緒に考える。 -
短時間でも介護から離れる時間を提案する
「今度お茶に行こう」「30分だけでも外に出ない?」など気分転換のきっかけを作る。
4.同居家族の場合に気をつけたいサイン
家族だからこそ観察する眼を持たないと、介護を担っている方の心身に変化が起こっても見逃してしまいがちです。
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身体的サイン
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慢性的な疲労感、睡眠不足
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食欲減少・体重減少、または過食
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肩こり・腰痛・頭痛の訴えが増える
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心理・行動のサイン
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表情が乏しくなり、笑顔が減る
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介護される人への苛立ちや怒鳴り声が増える
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「どうせ自分しかやれない」「もう限界」といった言葉
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以前好きだったテレビや趣味に関心を示さない
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外出や買い物を極端に避ける
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家庭内の変化
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掃除・洗濯・食事など家事の放棄
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服装や身なりに無頓着になる
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家族・親戚との口数が減る
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5.非同居家族の場合に気をつけたいサイン
毎日の様子を直接見ることはできにくいので、連絡や訪問の中で小さな変化に気を付けることがポイントです。
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電話・会話でのサイン
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電話に出なくなる、折り返しがない
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話す内容がネガティブに偏る(「疲れた」「もうやっていけない」)
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声が弱々しい、感情の抑揚がなくなる
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訪問時のサイン
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家の中が以前より散らかっている、掃除が行き届かない
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冷蔵庫に食材が少ない/賞味期限切れが多い
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介護される人の身なりや清潔が保たれていない
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介護者自身が痩せた・やつれた・服装に気を遣わなくなった
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関係性の変化
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「忙しいから来なくていい」と会うのを避ける
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金銭的な不安を強調する
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「施設には入れたくない」と強いこだわりを示す
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6.同居家族が異変に気づいた場合の対応方法
1.感情を否定せず受け止める
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「そんな弱音を言わないで」ではなく
→ 「大変だよね」「しんどいのわかるよ」と共感する。
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一緒に休む時間を確保する
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短時間でも交代して介護を引き受ける。
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「ちょっと横になってて」と具体的に声をかけて交代する。
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専門職やサービスにつなぐ
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地域包括支援センターやケアマネに「介護者が疲れている」と伝えて助けを求める。
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家族会や地方自治体の相談窓口、あるいは各地の認知症疾患医療センター(*3)に相談して、対処方法を得る。
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責任を抱え込ませない
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「全部あなたがやらなくていい。家族で分担しよう」と安心感を与える。
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危険サインが強いとき(自殺念慮・攻撃性など)
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迷わず保健所・精神科・自治体や病院の緊急相談窓口へ連絡する。
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7.非同居家族が異変に気づいた場合の対応方法
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状況を正面から確認する
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「最近疲れてない?」よりも
→ 「声が弱っているのが気になった。無理してない?」と具体的に指摘する。
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訪問や交代を提案する
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「次の週末は私が介護するから休んで」
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「ショートステイを使って、一緒に外食に行こう」など実行可能な提案をする。
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情報・手続きのサポートを担う
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サービス申請やケアマネとの調整を代行する。
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経済面(介護費の分担や制度利用)の相談や援助を提案する。
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定期的に安否確認をする
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電話・ビデオ通話・LINEなどで定期的に話す。
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「連絡が取れない=赤信号」と考え、早めに訪問する。
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緊急時の行動をあらかじめ決めておく
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連絡が取れないときの対応、介護者が倒れたときの手順を家族間で共有しておく。
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8.介護者の異変に気づいたときの合言葉
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見て(変化に気づく)
→ 表情・体調・口数・家の様子など。 -
聴いて(気持ちを受けとめる)
→ 「しんどいんだね」「無理してるよね」とため込んでいる苦しさを言葉にしてあげる。 -
代わって(休める時間をつくる)
→ 短時間でも交代、またはサービス利用を提案。 -
つないで(専門職や窓口に)
→ ケアマネ、地域包括支援センター、医療機関にためらわないで相談・連絡する。
以上です。
家族に殺される方も苦しみ、介護の末に家族をあやめてしまう方も苦痛のあまり正気を失っています。さらに、介護者が無理心中をするとは気がつかなかったと、残された家族も心に深い傷を負います。
このような悲劇を生まないために、このブログが参考になれば幸いです。この秋はイカが豊漁で、秋刀魚も安くて脂がのっているとか。ご家族皆さまが、美味しくて楽しい秋を満喫できますよう祈ります。
補注
*1:日本うつ病学会 https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/ippan/shiryo.html
*2:厚生労働省 「家族介護者支援マニュアル~介護者本人の人生の支
援」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001236476.pdf
*3:認知症疾患医療センター「認知症疾患医療センターは、認知症患者とその家族が住み慣れた地域で安心して生活するための支援の一つとして、都道府県及び政令指定都市が指定する医療機関に設置するもので、保健・医療・介護機関等と連携を図りながら、認知症疾患に関する鑑別診断、専門医療相談、地域における医療機関等の紹介、認知症の行動・心理症状と身体合併症への対応等についての相談などを行う専門医療機関です。」https://www.pref.aichi.jp/soshiki/chiikihoukatu/ninnchisho-shikkan-iryou-center.html#:~:text=%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E7%96%BE%E6%82%A3%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%AF%E3%80%81%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%A8,%E5%90%88%E4%BD%B5%E7%97%87%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%AF%BE%E5%BF%9C
令和 4(2022)年 10 月現在で、全国の認知症疾患医療センターの設置件数は 499 カ所(基幹型Ⅰが 17 ヵ所、基幹型Ⅱが 4 ヵ所、地域 型が 382 ヵ所、連携型が 96 ヵ所)です。お住いの都道府県のホームページには、掲載されています。また、診察は予約制でも電話相談窓口を開設している病院も多いので、調べてみてください。
以上












