認知症のBPSDとは?介護の困ったサインと症状チェック(前編)
📌 【認知症BPSD】関連記事
-
前編: 困ったサインかも?大切な人を支えるあなたが知るべき症状と基礎知識
-
後編: 困った行動・心の変化を食い止める!サインと「褒める」「納得」のポジティブケア
【認知症のBPSDとは?】介護の困ったサインと症状チェック
いつも同じことを聞いたり、慣れた道で迷子になったり。これらは認知症の代表的な症状として知られています。
しかし、「眠れない」「気分が落ち込む(抑うつ)」といった心の不調も、実は認知症による行動・心理症状(BPSD)のサインである可能性があります。
今回は、個人差が大きく種類も多い認知症の「困った行動や心の変化(BPSD)」について、その基礎知識と具体的な症状を、大切な人を支えるあなたに向けてご紹介します。
次回の後編では、症状の発症や悪化を避けられる「BPSDのサインをキャッチして悪化を防ぐ方法」をお届けしますので、ぜひ続けてお読みください。
1. 認知症の「困った行動や心の変化(BPSD)」とは?
認知症は、何らかの病気が原因となり、脳の神経細胞が通常の老化よりも早く減ってしまう病気です。
その結果、記憶力が低下したり、日時や今の時間が分からなくなったりします。これが認知機能障害と呼ばれる認知症の主な症状です。
この認知機能障害以外の行動と心の症状を「行動・心理症状(BPSD)」と呼びます。
BPSDは、その方の「性格」や「これまでの人生の習慣」、「暮らしている環境」、「受けている介護」、さらには「服用している薬の作用」など、さまざまな要因が影響し合って現れることが多いのが特徴です。
BPSDを発症・悪化させる3つの主なきっかけ
BPSDが発症したり、悪化したりするきっかけは、主に次の3点だと考えられています。
-
持病の悪化: 糖尿病など、すでに抱えている病気が悪化すること。
-
環境の変化: 介護施設への入居や引っ越しなど、住む場所や状況が変わること。
-
人間関係: 家族や介護スタッフとの関係が悪化すること。
介護をしているあなたがBPSDの悪化を防ぐためにも、まずはどのような症状があるのかを知っておきましょう。
2. あなたの周りにも? BPSDの具体的な症状をチェック
ここでは、専門的な論文で分類されているBPSDの具体的な症状を、読者の皆さんが理解しやすいように4つのカテゴリーに分けてご紹介します。
【症状1】「うっかり」では済まない記憶や時間の混乱による行動
主に記憶障害や見当識障害(日時や場所が分からなくなること)に関連して起こる症状です。
-
同じ質問の繰り返し: 自分の言ったことを忘れる、同じ質問を何度もする、食事を繰り返し要求する。
-
生活上のミス: 火の不始末、鍵の締め忘れ、水の出しっぱなしなど、危険を伴う不始末。
-
時間・場所の混乱: 今日の日付を何度も尋ねる、昼夜が逆転する、一日の時間帯を混同する。
-
目的のない徘徊: 迷子になる、自宅の出口を探して歩き回る、他人の家や部屋に入ってしまう、車道に出る危険性が分からない。
【症状2】「現実ではないこと」が見えたり、強く思い込む精神症状
幻覚や妄想など、心の状態が不安定になる症状です。
-
幻覚・幻聴: 実際には存在していないものが見える(幻視)、聞こえない音や声が聞こえる(幻聴)。
-
妄想: 家族が自分を邪魔者にするという被害妄想、財布を盗まれたと思い込む物盗られ妄想、水道に毒が入っているという被毒妄想など。
-
せん妄: 夕方から夜になると「家に帰る」と言い出す、急にソワソワして落ち着かなくなる。
-
不安・不穏: 何かにおびえて不安そうにする、必要以上に物事を心配する、重病にかかっていると思い込む。
【症状3】「性格が変わった?」感情や意欲の大きな変化
感情のコントロールや意欲に変化が現れる症状です。
-
感情の不安定さ: 気分が変わりやすい、怒りっぽい、興奮しやすい、些細なことで大笑いしたり泣いたりする。
-
抑うつ・不眠: 元気がなく気分が落ち込む、ソワソワと落ち着かない、眠れないと訴える、昼夜逆転してしまう。
-
意欲の低下: 家事をしなくなる、質問をしても真剣に答えない、周囲への興味・関心がなくなる、一日中ゴロゴロしている。
-
不潔行為: 身なりに無頓着になる、不潔なままでいる。
【症状4】周囲が困る「常識外れ」な行動
社会的なルールや常識から逸脱したように見える行動です。
-
誤認: 人を間違える、鏡に映った自分に向かって話しかける、人形やぬいぐるみを生きているように扱う。
-
不適切な行為: 食べられない紙や金属などを食べる、トイレ以外で排泄する、トイレの水を流さない。
-
判断力の低下: 釣銭が分からない、日常使っていた電子レンジなどが使えなくなる、他人の物と自分の物の区別がつかない。
-
非現実的な話: 現実でないことを作って話す、死んだ人が生きているかのように話す。
💡 専門用語の解説
-
行動・心理症状(BPSD): Behavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略称で、認知症の中核症状(記憶障害など)以外に現れる行動と心理面の症状全般を指します。
-
本記事の症状分類について: 本記事の症状リストは、主に山口晴保先生らの論文「BPSDの定義、その症状と発症要因」(認知症ケア研究誌、2巻1-16頁、2018年)に掲載の表に基づき、読者向けに再構成したものです。
後編の予告
これらのBPSDは、大切な人を支えるあなたにとって大きな負担となり得ます。しかし、これらの症状には必ず「サイン」があります。
次回の記事では、この「BPSDが出そうなサイン」をどうキャッチし、「褒める」「優しく接する」「本人が納得する方法を考える」といったポジティブケアで、発症や悪化を食い止める具体的な方法をご紹介します。
【後編のタイトル】
認知症の【困った行動・心の変化】を食い止める!BPSDのサインと「褒める」「納得」のポジティブケア(後編)
| 後編の内容 |
| 1 行動コントロールの障害、対人関係の障害の具体例 |
|
2. BPSD発症のサインをキャッチして悪化を防ぐ方法 |
以上






