回想法は認知症に効果ある?研究でわかった“生きがい感アップ”の理由と限界をやさしく解説【2025年版】
「懐かしい記憶」が心を支える力になる
2025年が始まりました。
今年、1947〜49年生まれの“団塊の世代”は、すべて75歳以上の後期高齢者になります。
この大きな節目により、介護施設や訪問介護の人手不足、そして「親の介護に直面する家族」の増加が予想されています。
介護が初めてで戸惑う方のために、浅海直二郎商店では、わかりやすく実用的な情報 を今年も発信していきます。
第1回目は、薬を使わない心理療法として知られる 「回想法(かいそうほう)」 が、認知症の方の「生きがい感」を高めるかどうかを調べた研究をご紹介します(※補注1)。
【関連記事】
▶ 全国で参加できる回想法の場11選|生きがい感アップと認知症予防につながる地域サロン&図書館【2025年版】
https://kizuna-iyashi.com/2025/01/17/homemade-306/
1.回想法とは?
回想法は、認知症に対する 非薬物療法のひとつ です。
過去の思い出や体験を語ったり、懐かしい写真や品物に触れたりすることで、脳と心に働きかけます。
▼回想法の主な効果
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思い出すことで脳の血流が増える
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忘れていた記憶を確認する作業が、脳の活性化につながる
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認知症の予防や進行の緩和に役立つことがある
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黄金期=“一番輝いていた頃” を思い出すことで心が落ち着く
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記憶力トレーニングとしても効果が期待できる
特にシニアの方は、誰もが豊かな人生のストーリーを持っています。
その“宝物”にふれることで、安心感や自信がよみがえることがあります。
2.研究紹介:施設入所中の中等度〜重度認知症シニアに「グループ回想法」を行うと、生きがい感はどう変化する?
神戸女子大学・津田理恵子先生が行った研究(※補注1)では、特別養護老人ホームの入所者に グループ形式の回想法を実施 し、「生きがい感」がどう変化するかを調査しました。
▼参加者
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Aグループ:93~100歳の女性3名
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Bグループ:80~85歳の男女3名
いずれも、中等度〜重度の認知症(NMスケール※補注2)。
▼実施方法
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月1回・60分の回想法講座
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Aグループ:10回(約10ヶ月)
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Bグループ:6回(期間調整のため回数少なめ)
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テーマに合わせ、懐かしい品物に触れながら会話
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話したくないことは話さなくて良いなど、4つの安心ルールを説明
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会場は昭和日常博物館の展示室に近い大学研究室
▼評価方法
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回想法の受講「前」「終了時」「半年後」の3回
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評価ツール:生きがい感スケール(K−1式)※補注3
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介護主任が直接質問し、変化を測定
3.生きがい感はどう変化した? その後のケアでも差が出た
▼生きがい感の平均値(3回の測定)
Aグループ:16.0 → 21.0 → 21.3
Bグループ:16.7 → 19.7 → 15.0
→ どちらのグループも回想法直後は“生きがい感が上昇”!
しかし半年後、Bグループでは受講前より低下しています。
一方、Aグループは わずかに上昇し続けている のが特徴です。
なぜ差がついたのか?
答えは 「回想法を終えた後の継続ケア」 にありました。
Aグループの3名(Sさん・Tさん・Uさん)は、回想法でわかった“得意分野・思い出”をもとに、
スタッフが 半年間、個別ケアに反映 したのです。
4.Aグループ3名に行った「回想法を活かすケア」
▼Sさん(93~100歳代)
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着物の着付け:呉服店育ちで、着付けの先生だったことが判明
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詩吟の披露:発表会を企画し、仲間から称賛され笑顔が増加
▼Tさん
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ボランティアとの個別回想法:自分からは話せない方だったが、昔の家族の話を涙ながらに語る時間が生まれた
▼Uさん
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手紙の交換:絵葉書や便箋を使い、毎回楽しみにして手紙を作成
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出身地の写真を使った会話:思い出が引き出され、職員との会話が弾んだ
▼共通の継続ケア
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回想法で作った「思い出アルバム」で安心感を得られるケア
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気分が上がる“お化粧”時間
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昔よく作った料理(いかなご作り)を再現
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スタッフとの“同窓会”で喜びの再会
5.回想法の「効果」と「限界」
研究からわかったことは次の2点です。
⭐ 回想法の効果
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生きがい感が上がる(短期的効果)
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役割や期待を感じられる“継続ケア”があると効果が続く
逆に、回想法だけで継続ケアがない場合は、
半年後には元に戻るか、むしろ下がることもある と確認されています。
また、津田先生は論文で次のように警告しています。
回想法には専門的なスキルが必要。
傾聴・受容・共感が十分でない場合は、認知症の混乱を悪化させてしまう可能性がある。
つまり、「効果はあるが、専門家の技法が必要」 ということです。
▼では、回想法を受けたい場合どうすればいい?
次回(1月17日公開予定)のブログで、
地域の自主グループ・図書館・市町村で受けられる回想法講座 を紹介します。
謝辞
津田理恵子先生をはじめ、認知症の臨床・介護に携わるすべての皆様に心から感謝いたします。
そして、認知症の方とご家族が少しでも穏やかな時間を過ごせますように。
写真について
ブログで使用した昭和20~30年代の写真は、
北名古屋市歴史民俗資料館「昭和日常博物館」ホームページ内
“紙上展覧会へようこそ”シリーズ より引用しました。
素晴らしい写真をありがとうございます。
昭和日常博物館ホームページ:
https://www.city.kitanagoya.lg.jp/rekimin/index.php
▼補注
※本文を読みやすくするため、専門情報はここに整理しています。
*1:研究論文
「特別養護老人ホームにおける回想法の実践—継続支援による生きがい感の変化と今後の方向性—」
神戸女子大学 津田理恵子(2013)
PDF:https://suica.repo.nii.ac.jp/record/687/files/05_5_%E5%8E%9F%E8%91%97_%E7%A5%9E%E6%88%B8%E5%A5%B3%E5%AD%90%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%A6%8F%E7%A5%89%E5%AD%A6%E9%83%A8%E7%B4%80%E8%A6%81.pdf
*2:NMスケールとは(認知症評価)
https://www.osumai-soudan.jp/column/column76.html
*3:生きがい感スケール(K−1式)
https://ypir.lib.yamaguchi-u.ac.jp/yp/354/files/143761
*4:2009年の関連調査
「グループ回想法の介入効果」津田理恵子
https://www.hws-kyokai.or.jp/cfqpgcyu/1167_f
以上
補注
*1:論文「特別養護老人ホームにおける回想法の実践 一 継続支援による生きがい感の変化と今後の方向性一」 神戸女子大学 社会福祉学科 准教授 津田理恵子 神戸女子大学 2013 『神戸女子大学健康福祉学部紀要』https://suica.repo.nii.ac.jprecord/687/files/05_5_%E5%8E%9F%E8%91%97_%E7%A5%9E%E6%88%B8%E5%A5%B3%E5%AD%90%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E5%81%A5%E5%BA%B7%E7%A6%8F%E7%A5%89%E5%AD%A6%E9%83%A8%E7%B4%80%E8%A6%81.pdf
*2:NMスケール:正式名称「N式老年者用精神状態尺度」これは長谷川式が主に記憶力の低下のチェックを行うのに対して日常生活における行動を多角的に観察するスケールです。NMスケールでは被験者のおよその精神状態を点数化します。検査場所を選ばず、非協力的な被験者や視聴覚障がいのある患者に対しても検査を行うことができる簡易テストです。NMスケールの評価項目は全部で5つです。「家事・身辺整理」・「関心・意欲・交流」・「会話」・「記銘・記憶」・「見当識」の項目で評価されます。これらの各項目をさらに7段階に区分して点数をつけます。この点数を合計して認知症の重症度をはかります。【認知症評価スケールについて】 老人ホームの検索・紹介・入居相談なら【ウチシルベ】 https://www.osumai-soudan.jp/column/column76.html
*3:『生きがい感スケール(K-1式)』高齢者向け生きがい感スケール(K-1式)は4構成因子(①「自己実現と意欲」因子、②「生活充実感」因子、③「生きる意欲」因子、④「存在感」因子)16質問項目より構成されており、その基準関連妥当性や概念的妥当性ならびに信頼性が確かめられている。
各質問項目について、「1.はい(2点)」「2.どちらでもない(1点)」「3.いいえ(0点)」の3段階評定(逆転項目は点数が逆転)で回答を求め、点数化した。論文「高齢者向け生きがい感スケールの因子構造とその得点の検討」より、https://ypir.lib.yamaguchi-u.ac.jp/yp/354/files/143761
*4:論文「グループ回想法の介入効果一特別養護老人ホーム入所者の生きがい感ー」津田理恵子. 厚生の指標 第56巻第10号 2009年9月15日. 一般財団法人厚生労働統計協会 https://www.hws-kyokai.or.jp/cfqpgcyu/1167_f
以上









