認知症 BPSDを悪化させない!アルツハイマー型を3タイプに分類し怒鳴らずに対応するコツ
介護でお悩みの皆さまへ。
大切なご家族を想うからこそ、認知症の方の行動にイライラしたり、怒鳴りたくなったりすることもあるかもしれません。
つい感情的になってしまうのは、誰にでもあることです。しかし、認知症の方は言葉ではなく、あなたの悪意や憎しみを敏感に感じ取ります。その結果、症状がさらに悪化してしまうことも少なくありません。
あなたの介護のストレスを少しでも減らし、前向きな気持ちで向き合えるよう、アルツハイマー型認知症を3つのタイプに分け、それぞれの特徴と対応のヒントをご紹介します。
この記事は、お堀端クリニックの髙橋 三津雄先生の漢方臨床レポートに基づいています。
1. なぜ症状が悪化するの? BPSDと介護ストレス
認知症の症状は、脳の神経細胞の減少で起こる**「中核症状」(もの忘れ、時間や場所が分からないなど)と、それ以外の「行動・心理症状(BPSD)」**(幻覚、落ち着きのなさ、否定・反抗など)に分けられます。
BPSDは、ご本人の性格や生活習慣だけでなく、介護する方との人間関係の悪化や、ストレスが引き金となって非常に強く現れることがあります。
ご家族を追い詰め、自らも疲れ果ててしまう前に、まずは認知症を「病気の症状」として理解しましょう。
2. アルツハイマー型認知症の3つのタイプ分類
髙橋三津雄先生は、多くの患者さんの治療経験から、「ものわすれ」「生活障害」「行動・心理症状(BPSD)」の現れ方の強さに着目し、アルツハイマー型認知症を次の3タイプに分類しています。
| タイプ名 | 特徴的な症状 |
| 形骸(けいがい)型 | 「もの忘れ」(記銘力障害)と「時間・場所が分からない」(見当識障害)が強い。 |
| 激烈反応(げきれつはんのう)型 | 行動・心理症状(BPSD)が非常に強く現れる。 |
| 滅裂(めつれつ)型 | 言葉の障害(失語)、動作の障害(失行)、認識の障害(失認)などが強く現れる。 |
3. タイプ別:特徴と対応のヒント
① 形骸(けいがい)型:徐々に静かになる「好々爺タイプ」
【👵特徴】
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もの忘れ(ついさっきのことも忘れる)や見当識障害(日時や場所が分からない)が根底にある。
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徐々に活動が低下し、意欲や積極性が失われていく。
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周囲の意見や忠告に素直に従うことが多い。
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優しくて気のいい**「好々爺(こうこうや)タイプ」**に見える。
【✅対応のヒント】
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身体機能の低下を防ぐために、リハビリや散歩を取り入れましょう。
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意欲を引き出すような、簡単な役割や活動を日常生活に取り入れてください。
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デイサービスやデイケアを積極的に利用し、活動と休息のメリハリをつけましょう。
[補注]
記銘力障害:新しく体験した情報などを記憶に留めておくことができなくなる障害のことです。(*1)
見当識障害:「今がいつか(時間)」「ここがどこか(場所)」などがわからなくなる状態です。(*2)
② 激烈反応(げきれつはんのう)型:強い不安と反抗を示すタイプ
【😡特徴】
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普段は形骸型と似ているが、周囲の訂正や説得に激しく反発する。
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予測不能な事態に陥ると、強い不安、焦燥、否定、反抗、混乱が現れる。
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孤立感や、将来への過剰な不安を抱きやすい。
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脳の血液が十分に供給されない虚血症状がかなり重い場合がある。(*7, *8)
【✅対応のヒント】
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**「これは病気の特徴だ」**と理解し、介護する側が冷静になることが重要です。
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このタイプはBPSDが強く現れるため、**漢方薬「抑肝散」や「抑肝散加陳皮半夏」**が有効な場合が多くあります。主治医にご相談ください。
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デイサービスなどを活用し、介護者自身の休息も確保しましょう。
[補注]
このタイプへの「抑肝散加陳皮半夏」の処方例では、髙橋先生の臨床報告(患者18人)で10人に良く効き、4人にやや効果が見られました。
③ 滅裂(めつれつ)型:若年で発症し、症状が急速に進行するタイプ
【💡特徴】
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比較的若年で発症し、症状が急速に進行する傾向がある。
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早い段階から、言葉の理解・表現の障害(失語)、動作の障害(失行)、認識の障害(失認)が目立つ。(*3, *4)
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日常生活で奇異な動作が現れたり、道具が使えなくなったりする。
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話が通じなくなり、意味不明な言葉を話すようになる。
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好きなこと以外に関心や興味を示さない傾向がある。
【✅対応のヒント】
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ご本人の自覚症状と、ご家族が観察した病的な変化を正確に記録し、医師に伝えましょう。
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症状に応じて、医師と相談のうえ、適切な薬による鎮静が必要な場合もあります。
[補注]
言語機能障害(失語):言葉の理解や表出が難しくなります。(*3)
失行・失認:「服を着る」などの日常動作ができなくなったり(失行)、目の前のものが何か認識できなくなったり(失認)します。(*4)
実行機能障害:計画を立てて、順序立てて物事を進めることが難しくなります。(*5)
4. 感情の爆発を防ぐ! 介護者が「心がけて欲しい8ポイント」
認知症の行動・心理症状(BPSD)は、**「ご本人のプライドを傷つける」「責める」**といった人間関係の悪化によってさらにひどくなります。
あなたの安らぎの場を「修羅場」にしないために、髙橋先生が提唱する**「心がけて欲しい8ポイント」**を実践しましょう。
【✅ 心がけて欲しい8ポイント】
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日課を決めて、運動を毎日の習慣にしましょう。
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すべてをしてあげるのではなく、残っている機能を活かし、ご本人の役割を作りましょう。
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ご本人のプライドを傷つけないように気を付けてください。
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対決は避けましょう。言い争っても解決しません。
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指示は、簡単明瞭に伝えましょう。
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家庭内の段差や危険物の保管に注意し、整理整頓しておきましょう。
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やっかいな事態が生じても、病気を責めたり、ご本人を責めることは止めましょう。
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ユーモアを忘れずに、柔軟な心で過ごしましょう。
🌈 おわりに:介護は「修行」ではない
在宅介護は、まるで修行のように感じられるかもしれません。しかし、認知症という病気や症状を理解できれば、「何度言ってもわからない」と無駄に激怒したり、あなたが傷つくのを防げます。
できないことや失敗は笑い飛ばして、少しでも明るい時間を一緒に過ごせるよう、心から祈っています。
📌 補注(専門用語の解説)
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*1 記銘力障害: 記憶障害の一種で、新しく知覚し、体験した情報を記憶の中に取り入れ留めておくことができなくなる障害をさします。
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*2 見当識障害: 「今がいつか(時間)」「ここがどこか(場所)」がわからなくなる状態です。
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*3 言語機能障害(失語): 言葉の理解・表出が難しくなります。
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*4 失行・失認: 失行は日常的に行っていた動作ができなくなること、失認は物や自分の身体の状態を認識することが難しくなることです。
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*5 実行機能障害: 物事を行う時に計画を立て、順序立てて効率良く行うことが難しくなる障害です。
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*6 前頭葉機能障害: 問題を解決する能力や、計画を立てたり行動を起こしたりする能力が失われます。
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*7 大脳白質: 脳の表面にある大脳皮質の下に位置する、神経線維が集積している部分です。
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*8 虚血: 血管が血液を送っている組織や細胞に血液が十分に供給されない状態(酸素不足とほぼ同じ)です。
☆臨床レポート「抑肝散加陳皮半夏が有効な認知症の臨床型」髙橋 三津雄、phil漢方、No.53 20-21頁、2015年 https://www.philkampo.com/pdf/phil53/phil53-08.pdf
以上







