超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)

超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)

超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)(Jamie NakamuraによるPixabayからの画像)

人は必ず、老化します。何かの病気が原因となり、脳の神経細胞がふつうの老化よりも速く減少してしまう脳の病気が、認知症です。困ったことに、認知症とふつうの老化との見分けがつきにくいので、事故や入院などが起こってしまってから認知症と発覚します。今回は、介護初心者の方に向けて超簡単な認知症ガイダンスを3回に分けてお届けします。

超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)

超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)(Bob WilliamsによるPixabayからの画像)

1.認知症の発症年齢と余命のめやす

認知症は脳の老化が急速に進んで死に至る病気なので、年齢とともに発症しやすくなります。

65歳以上:約16%が認知症

80代後半:男性の35%が認知症

     女性の44%が認知症

95歳以上:男性の51%が認知症

     女性の84%が認知症(*1)

糖尿病や・高血圧など、生活習慣が発症原因に深くかかわっている持病(*2)や、難聴(*3)・歯周病(*4)などを患っていると、認知症を発症するリスクが高くなります。

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超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)(shell_ghostcageによるPixabayからの画像)

65歳以上のシニアで認知症を発症した場合:

個人差がとても大きい病気ですが、多くの場合はゆっくりと進行します

平均10年くらいで最期を迎えます。(*5)

*認知症の他に、糖尿病や高血圧などの生活習慣病(*2)を患っている場合は、病状がもっと早く悪化します。

65歳未満で発症する若年性認知症の場合:

*男性の方が女性より多く、発病年齢は平均で約51歳です。

*平均余命は、行動障害型では平均約6~9年、意味性失語型では約 12 年です。(*6)

この認知症ガイダンスで解説する認知症は、65歳以上で発症する老年性認知症です。65歳未満で認知症を疑っていらっしゃる場合は、厚生労働省の「認知症介護情報ネットワーク」https://www.dcnet.gr.jp/ や「認知症の人と家族の会」の「若年期認知症の人への支援制度」https://www.alzheimer.or.jp/?page_id=5329 をご覧ください。

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超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)(manseok KimによるPixabayからの画像)

2.認知症は「軽度認知障害(MCI)」「初期」「中期」「末期」と進行します

認知症は病状の進行程度から「軽度認知障害(MCI)」「初期」「中期」「末期」に分かれます。

①「軽度認知障害(MCI)」もの忘れや時間の感覚がわからなくなるなどの症状が同年代の平均よりも目立つけれど、日常生活は送れます。

特徴:この段階なら、「食事」と「運動」と「生活習慣の改善」を行えば、認知症の発症を防げます予防対策を行えば16~41%の人が、1年で正常に戻ります。何もしなければ、10~15%は1年後に発症し、約50%は5年後に発症します。(*8)

『「認知症」早期発見のめやす』

公益社団法人「認知症の人と家族の会」の会員さんたちが、日常生活で体験した「認知症のめやす」をまとめたものです。医学的な診断ではありませんが、見つけやすい言動がまとめられています。ご興味のある方は、このアドレスをクリックなさってください。https://www.alzheimer.or.jp/?page_id=2196

超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)

超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)(ftanukiによるPixabayからの画像)

「初期」:新しいことを覚えられなくなります。今日の日にちやゴミ出しの曜日、鍵や財布をしまった場所を覚えられなくなります。けれど、昔からの習慣や身についているご近所さんとの挨拶や世間話はできます。

あくまでも1つの目安ですが、初期2年中期3年末期5年の感じで認知症はゆっくりと進行します。(*9)

「初期」の特徴

*記憶障害が進行するので、同じことを何度も聞くことや、置忘れやしまい忘れが増えるので鍵や財布・眼鏡・入れ歯・時計など探し回ることが増えます。

*初期でも中期に近づくと、迷子になりやすくなります。これは記憶障害についで現れやすい見当識障害(*10)が原因です。今が何時くらいか、今どこにいるのかといった見当をつけることができなくなります。

*家族から何度も注意されたり、迷子になるなどの経験をして、ご本人も「何かおかしい」「もしかすると認知症?」と疑い始めます。この時に、ご本人の本来の性格が強く現れます。不安症の方は、より強い不安を感じます。他人のせいにしがちは方は、失敗を家族のせいだと怒り出します。

*「オレオレ詐欺」や高額な布団や高額な治療器具、あるいは通販の定期購入などを契約してしまい体に良いらしい商品などを大量にため込むのも、この時期です。判断力のバランスが崩れて、詐欺にひっかかりやすくなります。

超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)

超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)(Nam VoによるPixabayからの画像)

「中期」:ここまで進行すると、思考力や判断力も低下します。覚えられないだけでなく、今まで出来ていたことが出来なくなります。例えば、簡単なお釣りの計算ができなくなったり、着替えの仕方がわからなくなったりします。

「中期」からは特に症状に個人差が大きくなります。日常会話ができないのに料理の腕前は変わらないとか、家族の判別もあやふやになったのに英語を流ちょうにしゃべり続けるなど様々です(*9)。

進行度は、在宅介護の限界を考える目安になさってください。

「中期」の特徴:

*個人差は大きいですが、会話を一度聞いただけでは理解できなくなり、周囲への関心が低下します。周囲への無関心や無気力が目立ち始めるこの頃に「認知症かも?」と家族が疑い始め、受診する方も多いです。

*記憶障害もさらに進行し、昔覚えたことがら、例えば自分の生年月日や生まれた場所、人の顔などが分からなくなります。

*見当識障害も進み、自宅のトイレの場所が分からなくなり、失禁してしまう回数も増えます。徘徊する方もでてきます。

認知症の認知機能などの障害以外が原因となる、行動・心理症状(BPSD)(*11)が現れるのも中期からです。たとえば、妄想や作り話をしたり、急に暴力をふるったりすることもあります。

介護する方にとって、とても辛くて大変な時期です。

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超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)(shell_ghostcageによるPixabayからの画像)

「末期(前半)」:末期の前半では、体の力もかなり衰え、日常生活で介助が必要になります。会話や文字でものごとを表現したり、理解したりする能力が失われ、運動・歩行障害で歩きにくくなり、お風呂や着替えやトイレにも介助が必要になります。

「末期(前半)」の特徴

*身体を思うように動かせないことに加え、会話も通じなくなって意欲が低下しやすくなることから、ベッドで過ごす時間が増え始めます寝たきりになりやすいのもこの時期です。

記憶を失っても、感情はすべて残っています「末期」の前半・後半を通して、ずっと喜び・怒り・悲しみ・楽しさを感じていますし、褒められると喜びます。

⑤「末期(後半)」:夫や妻、子どもの名前や顔を忘れる人が増えます。食事介助も必要となり、つきっきりの介護が必要となります。また、運動機能低下で動くことが少なくなると食事も摂る量が減ってしまい、免疫力が低下しやすくなります。そのため、認知症末期の方は、感染症などに注意が必要です。

「末期(後半)」の特徴:最期の時が近づくと、会話は成り立たなくなり、表情もなくなり、話しかけても反応しない人が多くなります。意識の混濁も起こりやすくなってきます。

また、免疫力の低下から肺炎などを発症してしまい命を落としやすくなります。(中編へ続く)

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超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)(Khoa Tran AnhによるPixabayからの画像)

次回5月17日の中編では、認知症の「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の違いと主な症状を説明し、認知症の進行時期によって出現しやすい「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」を紹介します。

5月24日の後編では、認知症の代表的な4種類は「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」の特徴と症状を説明し、和田秀樹先生の「認知症は天からのギフト」というご意見を紹介します。

超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)

超簡単な認知症ガイダンス!認知症の平均余命と主な症状をざっくりと紹介します。(前編)(TakuyoによるPixabayからの画像)

謝辞:和田秀樹先生をはじめ、認知症の臨床・研究・介護に従事なさっていらっしゃる全ての皆様に感謝するとともに、認知症の患者さんとご家族がより良い時間を過ごせますよう、すべての医療従事者の皆さまの益々のご活躍・ご発展を祈念します。

★厚生労働省「認知症介護情報ネットワーク」https://www.dcnet.gr.jp/

★公益社団法人「認知症の人と家族の会」https://www.alzheimer.or.jp/

補注

*1:「認知症の有病率」認知症と共に生きる高齢者の人口 東京都健康長寿医療センター研究所 https://www.tmghig.jp/research/topics/201703-3382/

*2:「生活習慣病と認知症」日本内科学会雑誌第108巻第4号 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/108/4/108_701/_pdf

*3:「難聴と認知症の関連について」東京逓信病院 https://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/shinryo/jibi/hearingaid.html

*4:「歯周病と歯周病菌は認知症を悪化する?」国立長寿医療研究センター https://www.ncgg.go.jp/ri/labo/19.html

*5:「認知症患者の寿命(余命)は発症から5~12年」認知症患者の寿命と要因 朝日生命 https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/ninchisho/column15/#:~:text=%E3%81%AB%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%81%A0%E3%81%95%E3%81%84%E3%80%82-,%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%AE%E5%AF%BF%E5%91%BD%EF%BC%88%E4%BD%99%E5%91%BD%EF%BC%89%E3%81%AF%E7%99%BA%E7%97%87,%E3%81%8B%E3%82%895%EF%BD%9E12%E5%B9%B4&text=%E3%81%AA%E3%81%8A%E3%80%81%E5%85%AC%E7%9B%8A%E7%A4%BE%E5%9B%A3%E6%B3%95%E4%BA%BA%E3%80%8C%E8%AA%8D%E7%9F%A5,%E5%B9%B4%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

*6:「若年性認知症とは」三重大学大学院医学系研究科認知症医療学講座  https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000738957.pdf

*7:「認知症の種類とそれぞれの原因・症状を解説」太陽生命 https://www.taiyo-seimei.co.jp/net_lineup/colum/ninchi/003.html#:~:text=%E3%81%AA%E3%81%8A%E3%80%81%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87%E3%81%AB%E3%81%AF,%E7%A8%AE%E9%A1%9E%E3%81%8C%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E7%9A%84%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

*8:「軽度認知障害について」厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/kibou_00007.html

*9:『ぼけの壁』和田秀樹著、2023年1月発行、幻冬舎新書677、幻冬舎、定価900円+税、ISBN978-4-344-98679-4

*10:「見当識障害:時間に関する見当識が薄らぐと、長時間待つとか、予定に合わせて準備することができなくなります。何回も念を押しておいた外出の時刻に準備ができなかったりします。
もう少し進むと、時間感覚だけでなく日付や季節、年次におよび、何回も今日は何日かと質問する、季節感のない服を着る、自分の年がわからないなどが起こります。
さらに進行すると迷子になったり、遠くに歩いて行こうとします。初めは方向感覚が薄らいでも、周囲の景色をヒントに道を間違えないで歩くことができますが、暗くてヒントがなくなったり、ヒントを理解できなくなると迷子になります。」介護保険施設等運営指導マニュアル(案)https://www.pref.okayama.jp/uploaded/life/8994_206382_misc.pdf

*11:「行動・心理症状(BPSD):行動・心理症状は、周囲の不適切なケアや身体の不調や不快、ストレスや不安などの心理状態が原因となって現れる症状です。例えば、「怒りっぽくなる」「妄想がある」「意欲がなくなり元気がない」「一人でウロウロと歩き回る」「興奮したり、暴言や暴力が見られる」などの症状のことを言います。」中核症状と行動・心理症状(BPSD)〜知っておきたい認知症のこと〜 社会医療法人甲友会 https://www.nk-hospital.or.jp/friends/191206/

*12:「認知症の中核症状」健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/chukaku.html

*13:「認知症の周辺症状(BPSD)の出現時期」健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/shuhen.html

*14:「記銘力障害:記憶障害の一種で、新たに知覚し、体験した情報を記憶の中に取り入れ留めておくことができなくなる障害をさします。一般に脳障害の症状として現れますが、ストレス反応でも起こることがあります。」こころの耳 厚生労働省 https://kokoro.mhlw.go.jp/glossaries/word-1538/

*15:「前頭側頭型認知症を知っていますか? 顕著な人格変化の原因であることも」なかまぁる 認知症とともにあるウェブメディア https://nakamaaru.asahi.com/article/14984981

*16:「失外套症候群(しつがいとうしょうこうぐん)とは:大脳皮質の機能障害によって、大脳皮質機能が不可逆的に失われた状態。眼は動かすが、無動で無言。睡眠と覚醒の調節は保たれている。」看護ライフ ナースプラス   https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/dictionary/sagyo/shi/20230301-2159301/

*17:『80代から認知症はフツー ~ボケを明るく生きる~』和田秀樹著、第5章認知症といっしょに生きる 190~192頁、2022年10月発行、株式会社興陽館、定価1,000円+税、ISBN978-4-87723-297-9

以上

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