“あなたは大切な人”と認知症の人に伝わる介護技術、「ユマニチュード」の本と映像教材を紹介します!
あなたは「ユマニチュード」を知っていらっしゃいますか?フランスの体育学の教師だったイヴ・ジネストさんとロゼット・マレスコッティさんの2人が医療施設で働くスタッフの教育と、患者のケアへの支援を要請されたことから始まり、考案されたケアの技法です。2012年頃から日本でも紹介され始め、魔法の介護法とも呼ばれます。この「ユマニチュード」を紹介する本と、YouTube動画と、DVD教材を紹介します。
1.「家族のためのユマニチュード」の書籍情報
最初に、認知症のご家族を介護していらっしゃる方に向けて書かれた本を紹介します。
書名:家族のためのユマニチュード ー”その人らしさ”を取り戻す、優しい認知症ケアー
著者:イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ、本田 美和子
発行年:2018年8月31日
発行所:(株)誠文堂新光社
定価:1,600円+税
ISBN:978-4-416-51873-1
大きさ:14.8センチ×21.0センチ(A5判)
ページ数:136ページ
ホームページ:https://www.seibundo-shinkosha.net/book/lifestyle/20742/
2.「家族のためのユマニチュード」の内容
ユマニチュードは、理念を備えた介護技術です。内容は6章に分かれ、ユマニチュードと認知症についてイラストを多く用い、より分かりやすく解説しています。
第1章 ユマニチュードとは
第2章 記憶の機能
第3章 認知症の人の特徴とその対応
第4章 ユマニチュードの4つの柱
- ユマニチュードの技術1:見る
- ユマニチュードの技術2:話す
- ユマニチュードの技術3:触れる
- ユマニチュードの技術4:立つ
第5章 ケアは一連の物語
第6章 よくある困った状況とその対応
- ごはんを食べてくれない
- 何度も同じことをたずねる/どこかへ行ってしまおうとする
- 不安で落ち着かないとき
- 自分の子どもを小学校に迎えに行くと言う
私の場合は特に「第6章 よくある困った状況とその対応」のなかの「ごはんを食べてくれない」の項を読んで、父の介護をしていた時にこの本を読んでいればと後悔しました。
ベットの脇に座って、食事の介助をしようとしても父が口を開かず、挙句の果てにベット脇のゴミ箱に食事を捨てられる始末。やがて父の拒食が伝染し、私まで食事が喉を通らなくなりました。
この本に書かれているように、あの時の父は食事を目でも頭でも認識できず、状況を理解できないまま、口に何かを入れられる虐待のような扱いと戦っていたのでしょう。
あの時の私は、認知症の父の視界が狭いことも、横から声をかけると認識しにくいことも知りませんでした。
だから、目を見て話しかけることもせず、父の正面で目の高さに合わせてお食事を見せ、どれを食べたいかを確認することなど考えもおよびませんでした。私の無知が父を介護するのではなく、苦しめていました。
あの時に、ユマニチュードを知っていれば・・・父も私ももっと幸せな時間を過ごせたはずです。
3.YouTube動画:優しさを伝える介護の基礎とコツ フランス生まれの介護技術「ユマニチュード」
「優しさを伝える介護の基礎とコツ」というコピーがうさん臭くて、疑いながら視聴したら、本当に驚きました。どの動画も短いので、ぜひ一度ご覧ください。
①「高齢者ケア研究室」https://www.youtube.com/channel/UCHopS0wOt0R9Iun1ZH5fpLg
ユマニチュードを日本に初めて紹介なさった本田 美和子先生が所属する、国立病院機構 東京医療センター 臨床研究センター 政策医療企画研究部門 医療経営情報のチャンネル「高齢者ケア研究室」です。ユマニチュードを動画で紹介しています。
☆【全編】優しさを伝える介護の基礎とコツ フランス生まれの介護技術「ユマニチュード」(約34分)https://www.youtube.com/watch?v=OOWbk9FKRKs
☆【①ごはんを食べてくれない】優しさを伝える介護の基礎とコツ フランス生まれの介護技術「ユマニチュード」(約7分)https://www.youtube.com/watch?v=HQiv4TqrsEM
☆【②同じことを何度もたずねる】優しさを伝える介護の基礎とコツ フランス生まれの介護技術「ユマニチュード」(約6分)https://www.youtube.com/watch?v=J2D06_kJCCQ
☆【③服を脱いでくれない】優しさを伝える介護の基礎とコツ フランス生まれの介護技術「ユマニチュード」(約8分)https://www.youtube.com/watch?v=MfwxdNMIbFg
☆【④近づくとき】優しさを伝える介護の基礎とコツ フランス生まれの介護技術「ユマニチュード」(約2分)https://www.youtube.com/watch?v=QEZvPyZO9wg
☆【⑤寝る準備】優しさを伝える介護の基礎とコツ フランス生まれの介護技術「ユマニチュード」(約4分)https://www.youtube.com/watch?v=kjnjHARyGYs
☆【⑥不安になっている時】優しさを伝える介護の基礎とコツ フランス生まれの介護技術「ユマニチュード」(約2分)https://www.youtube.com/watch?v=O1dAHLvMkNI
☆【近づく技術】優しさを伝える介護の基礎とコツ フランス生まれの介護技術「ユマニチュード」(約3分)https://www.youtube.com/watch?v=usnfypGIcRA
②YouTube動画:<ユマニチュード>介護老人保健施設 「つくしの里」における4日間の施設訪問型研修記録 (約16分)https://www.youtube.com/watch?v=u6SVT7N2rXY
一般社団法人日本ユマニチュード学会(*1)がアップした動画です。
『施設のご理解・ご協力のもと、研修の様子を記録に収めさせていただきました。
4日間にわたり行われた講義・ベッドサイド実習の様子や、研修前後で変化するスタッフの方々の気づき。入居されている方々の行動。
少しずつですが、着実に施設にユマニチュードが浸透していく様子をぜひご覧ください。』
③YouTube動画:フランス ユマニチュード認証施設紹介 (約36分)https://www.youtube.com/watch?v=NuR0jGidAHs
一般社団法人日本ユマニチュード学会がアップした動画です。フランスでは1980年代頃からユマニチュードが広がり始め、施設の介護方針として採用されています。施設介護の違いをご覧ください。
④YouTube動画:新たな認知症ケア「ユマニチュード」とは(TBS報道特集)(約23分) https://www.youtube.com/watch?v=C7V03-Mhkdw
報道特集(TBS)にて2014年5月10日放送されたユマニチュードに関する特集です。
『高齢化とともに増え続ける認知症患者。
そのケアの困難さから、医療、介護の現場が疲弊する中、
フランスで考案された「ユマニチュード」と呼ばれる手法が
注目されている。患者の尊厳を保ち、人間らしさを尊重する
「ユマニチュード」とは。新たなケアの現場を取材した。』
4.DVD教材『優しい認知症ケア ユマニチュード』全3巻
ユマニチュードを考案なさったイヴ・ジネストさんと、ユマニチュードを日本に初めて紹介した本田 美和子先生が監修をおこない、認知症のご家族の介護に悩んでいる方、地域で認知症の人やそのご家族を支えたい方に向けてDVD教材(3巻セット)を、NHK厚生文化事業団が制作しました。
☆第1巻 ユマニチュードって何だろう 入門編(112分)
☆第2巻 ユマニチュードをやってみよう 実技編(68分)
☆第3巻 私のユマニチュード 家族の実践編(52分)
Amazonなどでも販売していますが、NHK厚生文化事業団では、DVDセット「優しい認知症ケア ユマニチュード」を福祉ビデオライブラリーにて無料で貸し出しています(送料のみ利用者が負担)。
DVDの貸出方法や申し込み方法など詳細は、下のURLをクリックしてご覧ください。
NHK厚生文化事業団「福祉ビデオライブラリー」https://npwo.or.jp/category/video
5.症状を理解しない介護は、お互いを不幸にするだけだから、ユマニチュードを知ってほしい
『フランスでエマニチュードを導入している施設の経験では、1日に20分程度立つ時間を持つことができれば、寝たきりにはならず、亡くなるときまで立つ機能を維持することができます。』(第4章 エマニチュードの4つの柱 75ページから引用)
この文章を読んだとき、「そうだったの?!」と驚きました。そして改めて、私も病院も介護付き老人ホームも父の立つ力や歩く力を奪っていたと思い至りました。
大腿骨骨折で手術を受けた後、父は介護付き老人ホームに入居し、父専用の車椅子を誂えました。が、父は「こんなもんは体(てい)の良い台車だ」と嫌ってました。
その老人ホームでは、食事は下の食堂で頂くことになっていました。廊下の手すりとエレベーターを使えば、1人で食堂に行けると父は主張しましたが、転倒の危険性があるからと却下。
車椅子に乗って自室で職員の送迎を待つしかない自分を、台車で運ぶ荷物みたいなもんだと言ってました。
この話を聞いた時、私も施設側に賛同し、父を説得。荷物にならざるをえなかった父は、あっという間に歩けなくなりました。そして腸閉塞を起こして緊急入院し、寝たきりに転落。3ヵ月も経たないうちに、誤嚥性肺炎で他界しました。
今、介護なさっているあなたなら、間に合います。
40秒以上立てるなら、ベットの柵につかまり立ちしてもらいながら、身体を拭きます。疲れたらベットに座って、回復したらまた立って足を拭いたり、着替えたり。トイレまで歩いて3分。歯を磨いて3分。3分を7回繰り返せば、合計20分になると「家族のためのユマニチュード」で解説しています。
今の介護方法は、危ないから、作業効率が悪いからと寝たきり状態を作り上げています。介護されている方は、立ったり、歩く力を奪われて物に貶められた苦痛や悲しみや怒りを感じています。
介護をなさっているあなたの善意や愛情を正しく伝えるために、ユマニチュードを知ってください。介護が必要なご家族が、最期まで自分らしくプライドを持って生きることができるよう、ユマニチュードを理解してください。お願いします。
補注
*1:一般社団法人日本ユマニチュード学会:フランス生まれのコミュニケーション・ケア技法「ユマニチュード」の普及・浸透に取り組む非営利の一般社団法人です。https://jhuma.org/
老いを理解し、高齢者が直面する困難にもかかわらず、人生の最後まで尊厳を持って生きる能力を発見し、肯定すること。http://www.humanitude.fr/
以上