重度認知症デイケアとは?妄想・不安・興奮などBPSDを専門リハビリで改善する方法【第1回】
🔗 認知症リハビリ・重度認知症デイケア 3部作
本シリーズは、妄想・不安・興奮などのBPSDを和らげるための専門的アプローチを3回に分けて解説しています。気になる回からお読みいただけます。
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【第1回】重度認知症デイケアとは?BPSDを和らげる専門ケアの特徴
👉 https://kizuna-iyashi.com/2024/12/13/homemade-301/ -
【第2回】認知症リハビリとは?BPSD改善につながる4つのアプローチ
👉 https://kizuna-iyashi.com/2024/12/20/homemade-302/ -
【第3回】認知症リハビリの具体例|回想法・音楽療法・作業療法など実例紹介
👉 https://kizuna-iyashi.com/2024/12/27/homemade-303/
■はじめに
入居先の施設で、暴言・興奮・妄想・徘徊などのBPSDが強くなり、退居を心配しているご家族は少なくありません。
薬だけでの改善がむずかしいケースもありますが、実は
「重度認知症デイケア」で行う“認知症リハビリ”によって状態が改善した例が積み上がりつつあります。
このシリーズでは3回に分けて、
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「デイケア」と「デイサービス」の違い
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「重度認知症デイケア」とは何か
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どんなリハビリがBPSD改善につながるのか
を分かりやすく解説します。
1.「デイケア」と「デイサービス」はまったく目的が違う
両方とも送迎付きの通所サービスですが、役割が異なります。
●デイサービス
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食事、入浴、レクリエーションなど
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自宅での生活を支える「介護中心」
●デイケア(通所リハビリテーション)
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医師の指示に基づくリハビリ
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身体・認知機能の改善を目的
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医療職(PT・OT 等)が常駐
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医療的ケアも可能 *(補注4)
2021年時点で
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デイサービス:24,428施設
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デイケア:8,308施設
圧倒的にデイサービスが多いため、混同されがちです。
●費用はデイケアのほうが高い
地域区分や施設規模で金額が変わります。
詳細は ケアマネジャーか役所の介護保険担当窓口で確認できます。
2.BPSDが強い人向けの「重度認知症デイケア」とは
「デイケア」の中には、
妄想・興奮・不安・幻覚などのBPSDが強い方を専門にケアする通所医療施設があります。
これが **「重度認知症デイケア」**です。
■主な特徴(わかりやすく要点整理)
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精神科のある病院・診療所に設置
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医療保険が基本(介護保険と併用も可)
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精神科医・作業療法士・看護師・心理職などがチームでケア
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全国に 295施設(2020年時点) と非常に少ない
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厚労省は 「精神症状・行動異常が著しい認知症患者」を対象としている
*(補注10)
3.実際の利用状況(全国アンケートより)
尾嵜遠見先生・前田潔先生の全国調査(2015年 *補注5)によると、平均像は次のとおりです。
■施設と利用者のイメージ
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運営:精神科病院
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1日の利用者:約25人
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スタッフ:精神科医1、看護師2、OT1~2、精神保健福祉士1、介護職3
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利用者登録:平均51人
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1日の利用:平均26人
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半年で約10人が入れ替わる
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女性が2/3、平均80歳前後
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利用頻度:週4日、平均2年半通所
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自宅から通所:8割
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介護度:要介護1~3が7割
病院の外来リハビリとは別物で、「集団+個別ケア」を長期間行うのが特徴です。
4.どんなリハビリが行われている?
アンケートでは以下のプログラムが多く実施されていました。
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活動療法(75.5%)
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音楽療法(56.9%)
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リアリティ・オリエンテーション(51.0%)
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身体機能訓練(40.2%)
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学習療法(37.3%)
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家族相談(33.3%)
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ADL訓練(32.4%)
■薬だけより、リハビリを併用した方が効果が続く
抗認知症薬は、投与から5〜6か月後に効果が弱まります。
しかし 薬+リハビリを行うと
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効果の持続:半年〜1年
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継続すると進行をゆるやかにできる
と報告されています。(補注12)
5.どんなBPSDに効果が出やすい?
アンケートでは、利用者の主なBPSDは以下のとおりでした。
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妄想:41.1%
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不安:41.1%
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興奮:37.8%
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易怒性:27.8%
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幻覚:21.1%
重症度は
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中程度:50.5%
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重度:31.5%
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軽度:18.0%
■もっとも改善した項目(利用開始後)
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BPSDの改善:46.9%
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介護者の負担軽減:32.4%
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認知機能の改善:18.7%
症状そのものだけでなく、家族の負担も軽くなる点が大きなメリットです。
6.作業療法士が感じる「改善ポイント」と「悪化要因」
●効果を実感する順
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介護者の負担軽減(38.8%)
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BPSDの予防・改善(23.9%)
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認知機能の維持・改善(13.4%)
●悪化させる原因
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介護者の態度(32.8%)
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認知機能の低下
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身体機能の不調
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環境の変化
→ 家族への指導・相談を重視している理由がここにあります。
7.家族が利用を検討すべきケース
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施設から「暴れた・暴言がある」と連絡が来る
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夜間のせん妄が続き、自宅介護が限界
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妄想や不安が強く、家族が疲れ切っている
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他の利用者とのトラブルで退居リスクがある
こうした場合、精神科医の診察を受け、「重度認知症デイケア」が適応か確認してみてください。
■さいごに
私自身、夜中の父のせん妄で老人ホームから何度も呼び出され、対応方法も分からず途方に暮れた経験があります。
もしあの時、
専門家が指導してくれる「重度認知症デイケア」を知っていたら…
介護の負担も、父のしんどさも、違ったかもしれません。
次回(第2回、12月20日公開予定)は、
「認知症リハビリとは何か?」を分かりやすく解説します。
■補注
*1:「認知症の BPSD」日本老年医学会雑誌 48巻 3 号(2011:5)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_48_3_195.pdf
*2:「認知症plus院内デイケアー生活機能の維持・回復を目指す」旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕 編集、2019年9月発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN978-4-8180-2210-2、https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713
*3:「「重度認知症患者デイケア」について」受託事業「認知症重症化予防(三次予防)に関する調査研究事業」日本精神科病院協会ホームページ https://www.nisseikyo.or.jp/news/topic/detail.php?@DB_ID@=563
*4:「通所リハビリテーション(デイケア)」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group8.html
*5:「全国の重度認知症患者デイケアの実態調査 」尾嵜遠見, 前田潔 Dementia Japan 29(4) 605-614 2015年10月 https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/605-614.pdf
*6:「重度認知症患者デイケア」と「重度認知症デイケア」について
日本精神科病院協会や尾嵜遠見先生の論文では、「重度認知症患者デイケア」と表記されていますが、『おれんじねっと』(https://orangenet.osaka/article/11050)では「重度認知症デイケア」と表記されています。また、論文などでは名称が長いため短縮して「認知症デイケア」とも称しています。
ここでは、医師の視点からの名称ではなく利用者や介護者の立場に近い「重度認知症デイケア」を使っています。
*7:「作業療法士とは」関西福祉科学大学ふっかライブラリー https://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/fukkalibrary/article/OT07.html
*8:「精神保健福祉士とは」福祉の資格 社会福祉法人ふれあいネットワーク 全国社会福祉協議会 https://www.shakyo.or.jp/guide/shikaku/setsumei/03.html#:~:text=%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E4%BF%9D%E5%81%A5%E7%A6%8F%E7%A5%89%E5%A3%AB%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B&text=%E5%85%B7%E4%BD%93%E7%9A%84%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%80%81%E7%97%85%E9%99%A2,%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
*9:「公認心理師とは」福祉・介護 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html
*10:「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム第2R (認知症と精神科医療)」平成23年6月15日資料 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001fp2g-att/2r9852000001fp88.pdf
*11「自立生活の指標:日常生活動作(ADL)とは日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことです。」健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/jiritu.html
*12:「認知症ケアにおけるリハビリテーションの重要性」2~6頁、『認知症plus院内デイケア』編集:旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕、2019年発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN:978-4-8180-2210-2 https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713
*13:「易怒性とは:急に怒り出すことが増え、遅れたり待たされたりする状況を受 け入れることが難しくなります。 このように、些細な刺激で不機嫌になっ たり、怒りっぽくなることは、易怒性と呼ばれています。 易怒性は、認知 症の記憶障害や見当識障害、遂行機能障害(実行機能障害)などから二次 的に生じる、行動・心理症状の一つです。」認知症の行動・心理症状とは https://www.koubundou.co.jp/files/65191.pdf
*14:「QOLとは:QOLは「Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略称で、「キュー・オー・エル」と読みます。
「生活の質」と訳されることが多いですが、「生命の質」や「人生の質」などと訳されることもあります。一般的に、生活や生命、人生における「幸福」「満足」などを意味しています。
かつて医療の分野では治療が重点的に行われ、リハビリテーションや福祉の分野ではADL(日常生活動作)の自立が重視されていました。しかし、現在は治療やADLの自立とともに、QOLも考慮されるようになってきています。」あずみ苑 https://www.azumien.jp/contents/industry/00064.html
以上







