認知症リハビリとは?BPSD(妄想・不安・興奮)を和らげる効果と種類をわかりやすく解説【第2回】
🔗 認知症リハビリ・重度認知症デイケア 3部作
本シリーズは、妄想・不安・興奮などのBPSDを和らげるための専門的アプローチを3回に分けて解説しています。気になる回からお読みいただけます。
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【第1回】重度認知症デイケアとは?BPSDを和らげる専門ケアの特徴
👉 https://kizuna-iyashi.com/2024/12/13/homemade-301/ -
【第2回】認知症リハビリとは?BPSD改善につながる4つのアプローチ
👉 https://kizuna-iyashi.com/2024/12/20/homemade-302/ -
【第3回】認知症リハビリの具体例|回想法・音楽療法・作業療法など実例紹介
👉 https://kizuna-iyashi.com/2024/12/27/homemade-303/
■はじめに
第1回では、妄想・不安・興奮・易怒性などの BPSD(行動・心理症状) が強い方のための医療型通所サービス、重度認知症デイケアを紹介しました。
全国調査では、約5割の利用者で「BPSDが改善した」という結果が出ています。
今回は、その重度認知症デイケアで行われている
「認知症リハビリ」について、できるだけやさしく説明します。
1.「認知症リハビリ」とは?
■まだ統一の定義はありません
「認知症リハビリ」という言葉には、正式な共通定義がありません。
しかし各地での実践と研究から、効果が期待できるリハビリが次々に報告されています。
■スタートは「認知症短期集中リハビリテーション」
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2006年:老健で軽度の認知症の方を対象に開始
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2009年:中等度〜重度まで対象拡大
2007年の研究では、以下の成果が確認されています。
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認知症の進行予防
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意欲・活動性の向上
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ADL(食事・移動など)改善
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BPSDの軽減
*(補注5)
さらに2013年の報告では、個別の脳活性化リハビリを週3回(1回20分以上)×3か月行ったところ
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認知機能の改善
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意欲の向上
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BPSD・抑うつの軽減
など多くの改善例が見られました。
2.BPSDはなぜ起きる?なぜ改善が難しい?
BPSDは、以下が複雑に絡み合って発生します。
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家族や介護者との人間関係
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住んでいる環境(自宅・施設・同居など)
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加齢による機能低下(視力、聴力、筋力など)
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慢性的な痛み、うつ状態
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生活リズムの乱れ
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不安や混乱を引き起こす刺激
こうした要因が重なり、症状の出方には大きな個人差があります。
そのため「この方法なら必ず改善する」という“確立したエビデンス”はまだ十分ではありません。
しかし、臨床では症状の安定化や改善が多数みられるため、認知症リハビリは重要視されています。
3.認知症の症状の進行度に応じたリハビリ
旭俊臣先生の整理(補注8)をもとに、病期とリハビリ内容をやさしくまとめます。
① 初期〜中期
●回想法・リアリティオリエンテーション(RO)
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昔の写真や音楽を使って記憶を呼び起こす
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今日の日付・季節・場所を確認し、気持ちを落ち着かせる
➡ 心理状態の安定 → BPSDの改善につながりやすい
② 後期
●歩行リハビリ+認知症リハビリ
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転倒→骨折→入院→認知機能低下の悪循環を防ぐ
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簡単な運動・活動性の維持が重要
③ 終末期
●嚥下(えんげ)リハビリ
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寝たきりで飲み込みが弱る
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誤嚥性肺炎の予防が重要
旭先生の現場では
重度で言葉を失った患者さんでも「表情・視線」が改善した例があります。(補注9)
4.認知症リハビリの主な4つの柱

旭俊臣先生の書籍(補注2)から、リハビリを4分類で紹介します。
① 神経心理療法
●リアリティ・オリエンテーション(RO)
今日の日付、季節、場所などの混乱をやわらげ、安心感をつくる。
●回想法
写真・道具・音楽を介して昔の記憶を語る心理療法。
●音楽療法
不安の軽減、自発性の促進、コミュニケーション改善など広い効果。
●その他
絵画、園芸、アロマ、将棋、囲碁など、その人らしさを引き出す活動。
② 理学療法(PT)
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基本動作の改善
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肩こり・痛みの緩和
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歩行能力の維持
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入院や廃用を防ぐ
③ 作業療法(OT)
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生活歴(職業・趣味・性格)からその人に合った活動を選ぶ
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自宅環境の調整
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家族への関わり方の助言
➡ BPSDにもっとも効果が出やすい領域
④ 言語療法(ST)
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コミュニケーションの訓練
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嚥下(飲み込み)の改善
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食事場面のトラブル予防
5.薬物治療+リハビリの併用が大切
アリセプト(ドネペジル)の長期研究 J-GOLD(補注10)では、
認知機能の変化は次のように推移しました。
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6か月:改善
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18か月:元の状態に戻る
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24か月:開始時より低下
薬だけでは“維持できる期間”に限界があります。
しかし
薬+認知症リハビリ
を組み合わせると、
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意欲の向上
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認知機能の改善
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BPSDの軽減
などの例が多数報告されています。(補注7)
■まとめ:発展途上だが“確かな手応え”がある
認知症リハビリはまだ発展途上で、確固たる科学的エビデンスが十分ではありません。
それでも、
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認知機能の改善
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BPSDの軽減
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家族の負担軽減
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入院・転倒の予防
といった結果が臨床で積み上がっているのも事実です。
介護が限界、施設でトラブル、夜間せん妄が続く…
そんな時は、ぜひ精神科医・ケアマネジャーに
「重度認知症デイケア」について相談してみてください。
次回(第3回)は、
認知症リハビリの具体例をやさしく紹介します。
■補注
*1:「認知症の BPSD」日本老年医学会雑誌 48巻 3 号(2011:5)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_48_3_195.pdf
*2:「認知症plus院内デイケアー生活機能の維持・回復を目指す」旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕 編集、2019年9月発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN978-4-8180-2210-2、https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713
*3:「「重度認知症患者デイケア」について」受託事業「認知症重症化予防(三次予防)に関する調査研究事業」日本精神科病院協会ホームページ https://www.nisseikyo.or.jp/news/topic/detail.php?@DB_ID@=563
*4:「認知症短期集中リハビリテーション」公益社団法人 全国老人保健施設協会 https://www.roken.or.jp/about_roken/ninch
*5:「画期的な研究成果がまとまる 認知症短期集中リハビリテーションはきわめて有効」雑誌「老健」2008年10月号 https://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2012/07/roken.pdf
*6:「ADL:日常生活動作(ADL)とは日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことです。」健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/jiritu.html
*7:論文「老健における認知症短期集中リハビリテーション :脳活性化リハビリテーション 5 原則に基づく介入効果」共同著者:関根 麻子、永塩 杏奈、高橋久美子、加藤 實、高玉 真光、山口 晴保、Dementia Japan Vol. 27 No. 3 September 2013、https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/27-3-360-366.pdf
*8:「認知症リハビリテーションの実際」7~15頁、『認知症plus院内デイケア』編集:旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕、2019年発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN:978-4-8180-2210-2 https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713
*9:「認知症ケアにおけるリハビリテーションの重要性」2~6頁、『認知症plus院内デイケア』編集:旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕、2019年発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN:978-4-8180-2210-2 https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713
*10:「ドネペジルの効果が持続する期間は?:国内長期大規模研究」CareNet https://www.carenet.com/news/general/carenet/40424
以上






