認知症リハビリの具体例|BPSD(妄想・不安・興奮)を和らげる実践プログラムまとめ【第3回】
🔗 認知症リハビリ・重度認知症デイケア 3部作
本シリーズは、妄想・不安・興奮などのBPSDを和らげるための専門的アプローチを3回に分けて解説しています。気になる回からお読みいただけます。
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【第1回】重度認知症デイケアとは?BPSDを和らげる専門ケアの特徴
👉 https://kizuna-iyashi.com/2024/12/13/homemade-301/ -
【第2回】認知症リハビリとは?BPSD改善につながる4つのアプローチ
👉 https://kizuna-iyashi.com/2024/12/20/homemade-302/ -
【第3回】認知症リハビリの具体例|回想法・音楽療法・作業療法など実例紹介
👉 https://kizuna-iyashi.com/2024/12/27/homemade-303/
■はじめに
1人暮らしのお母様から、夜中に何度も電話がかかってくる…
その背景には 認知症の不安(BPSD) が隠れていることがあります。
アルツハイマー型認知症では、
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薬の効果は5〜6か月で弱まる
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薬+認知症リハビリの併用で効果が半年〜1年続く
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継続すると進行をゆるやかにできる
といわれています。(補注5)
第3回では、前回までに紹介した枠組みをもとに、
「認知症リハビリ」で実際に行われている内容を、わかりやすく具体例で紹介します。
1.認知症リハビリの4つの柱をやさしく解説
旭俊臣先生の整理(補注2)によると、認知症リハビリは4種類。
■① 神経心理療法
●リアリティ・オリエンテーション(RO)
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「今日は何月何日?」「ここはどこ?」などの質問で見当識を整える
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日常動作を思い出し、不安を減らす
→ 混乱を落ち着かせ、残っている力を引き出す
●回想法
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昔の写真や音楽を使い、思い出を語る
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昔の記憶は比較的残りやすい
→ 脳が活性化し、不安や孤独感が和らぐ
●音楽療法
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昔の歌を歌う/音楽に合わせて身体を揺らす
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不安・痛み・緊張がやわらぐ
→ 笑顔・自発性が出やすく、BPSDにも良い影響
●その他の心理療法
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絵画・園芸・囲碁・将棋・ペット介在療法
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アロマテラピー
→ 楽しみを通じて情緒の安定が得られる
■② 理学療法(PT)
目的:転倒予防・歩行維持・痛みの緩和
認知症が進むと
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指示されると混乱する
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つかんだ物を離せない
などの症状が出ることがあります。
理学療法士は、
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目印をつけて無意識の動作を引き出す
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できる動作を増やす
など、残されている能力を活かす訓練を行います。
■③ 作業療法(OT)
認知症リハビリの中心。
●特徴
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その人の 生活歴・職業・性格 を踏まえて活動を調整
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「できること」を活かして自尊心を守り、生活を支える
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家族への接し方や環境調整のアドバイスも提供
●例
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塗り絵や書道
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有酸素運動
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家事を模した活動
→ 「その人らしさ」を保つ効果が大きい
■④ 言語療法(ST)
内容:
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話す・聞く・読む・書くの訓練
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嚥下(飲み込み)の練習
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言葉以外のコミュニケーション(ジェスチャー等)
目的:
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むせの予防・誤嚥性肺炎の予防
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意思疎通の改善
2.実際の「重度認知症デイケア」のプログラム紹介
埼玉森林病院の 「重度認知症デイケア 和〜なごみ〜」 のプログラム(補注14)は、地域の特色を活かした取り組みが魅力的。
●回想法
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過去の出来事を語る
→ 自尊心が高まり、社会とのつながりを実感
●散歩
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里山の自然でゆっくり歩く
→ 気分転換+適度な運動+自然の刺激
●創作活動
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縄ないで正月飾り作り
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かるた作り、書道、編み物
→ 昔の経験を活かし、意欲が高まる
●イベント
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音楽ボランティア
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外出レクリエーション
→ 非日常体験が良い刺激に
●園芸
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畑経験の多い世代にとても効果的
→ 「役割」を持つことで活躍の場が生まれる
●調理
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収穫した野菜を調理
→ 食べるまでの工程が喜びにつながる
●嚥下体操
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飲み込みミスを防ぐ訓練
→ 肺炎予防にもつながる重要なプログラム
■まとめ:認知症リハビリは“発展途上”でも確かな効果がある
認知症リハビリは、まだ明確なエビデンスが揃っているとは言えません。
しかし、以下の点で多くの改善が見られています。
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BPSDの軽減
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認知機能の維持・改善
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不安の軽減
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自発性・意欲の向上
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生活の質(QOL)の向上
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家族の負担軽減
もし
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夜間のせん妄
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妄想・不安の悪化
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施設でのトラブル
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家族が限界
といった状況があるなら、精神科医・ケアマネジャーに「重度認知症デイケア」について相談してみてください。
ご家族にも、本人にも、光が差すことがあります。

(Silke/Pixabay)
■補注
*1:「認知症の BPSD」日本老年医学会雑誌 48巻 3 号(2011:5)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_48_3_195.pdf
*2:「認知症plus院内デイケアー生活機能の維持・回復を目指す」旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕 編集、2019年9月発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN978-4-8180-2210-2、https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713
*3:「リアリティ・オリエンテーション」健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/reality.html
*5:「認知症ケアにおけるリハビリテーションの重要性」2~6頁、『認知症plus院内デイケア』編集:旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕、2019年発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN:978-4-8180-2210-2 https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713
*6:「音楽療法」健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/music.html
*7:「芸術療法とは」認知症フォーラム.com https://www.ninchisho-forum.com/keywords/ka_10.html
*9:「認知症のアニマルセラピー」健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/ninchishou/ninchi-pet.html
*10:「将棋を用いた認知リハビリテーション」介護老人保健施設コスモス苑 https://kaigo-cosmos.jp/activity/%E5%85%A5%E6%89%80%E3%83%AA%E3%83%8F%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/2024/06/01/33964
*11:「認知症ケアにおける理学療法」健達ねっと https://www.mcsg.co.jp/kentatsu/interview/65893
*12:「作業療法」認知症の進行を遅らせる「作業療法」とは? 朝日生命 https://anshinkaigo.asahi-life.co.jp/activity/ninchisho/column13/05/2/
*13:「言語療法とは」協和会病院 https://www.kyowakai.com/kyowakai_hp/section/rehabillitation/st.php
*14:「具体的なプログラムのご紹介」重度認知症デイケア 医療法人昭友会埼玉森林病院 https://www.kokoro-gr.jp/dementia-dc.html
以上




