認知症リハビリとは?BPSD(妄想・不安・興奮)を和らげる効果と種類をわかりやすく解説【第2回】

🔗 認知症リハビリ・重度認知症デイケア 3部作

本シリーズは、妄想・不安・興奮などのBPSDを和らげるための専門的アプローチを3回に分けて解説しています。気になる回からお読みいただけます。

■はじめに

第1回では、妄想・不安・興奮・易怒性などの BPSD(行動・心理症状) が強い方のための医療型通所サービス、重度認知症デイケアを紹介しました。

全国調査では、約5割の利用者で「BPSDが改善した」という結果が出ています。

今回は、その重度認知症デイケアで行われている
「認知症リハビリ」について、できるだけやさしく説明します。


1.「認知症リハビリ」とは?

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(後編)

(Marion/Pixabay)

■まだ統一の定義はありません

「認知症リハビリ」という言葉には、正式な共通定義がありません。
しかし各地での実践と研究から、効果が期待できるリハビリが次々に報告されています。

■スタートは「認知症短期集中リハビリテーション」

  • 2006年:老健で軽度の認知症の方を対象に開始

  • 2009年:中等度〜重度まで対象拡大

2007年の研究では、以下の成果が確認されています。

  • 認知症の進行予防

  • 意欲・活動性の向上

  • ADL(食事・移動など)改善

  • BPSDの軽減
    *(補注5)

さらに2013年の報告では、個別の脳活性化リハビリを週3回(1回20分以上)×3か月行ったところ

  • 認知機能の改善

  • 意欲の向上

  • BPSD・抑うつの軽減
    など多くの改善例が見られました。


2.BPSDはなぜ起きる?なぜ改善が難しい?

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(後編)

(Barbara Fraatz/Pixabay)

BPSDは、以下が複雑に絡み合って発生します。

  • 家族や介護者との人間関係

  • 住んでいる環境(自宅・施設・同居など)

  • 加齢による機能低下(視力、聴力、筋力など)

  • 慢性的な痛み、うつ状態

  • 生活リズムの乱れ

  • 不安や混乱を引き起こす刺激

こうした要因が重なり、症状の出方には大きな個人差があります。
そのため「この方法なら必ず改善する」という“確立したエビデンス”はまだ十分ではありません。

しかし、臨床では症状の安定化や改善が多数みられるため、認知症リハビリは重要視されています。


3.認知症の症状の進行度に応じたリハビリ

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(後編)

(Timur Kozmenko/Pixabay)

旭俊臣先生の整理(補注8)をもとに、病期とリハビリ内容をやさしくまとめます。


① 初期〜中期

●回想法・リアリティオリエンテーション(RO)

  • 昔の写真や音楽を使って記憶を呼び起こす

  • 今日の日付・季節・場所を確認し、気持ちを落ち着かせる

心理状態の安定 → BPSDの改善につながりやすい


② 後期

●歩行リハビリ+認知症リハビリ

  • 転倒→骨折→入院→認知機能低下の悪循環を防ぐ

  • 簡単な運動・活動性の維持が重要


③ 終末期

●嚥下(えんげ)リハビリ

  • 寝たきりで飲み込みが弱る

  • 誤嚥性肺炎の予防が重要

旭先生の現場では
重度で言葉を失った患者さんでも「表情・視線」が改善した例があります。(補注9)


4.認知症リハビリの主な4つの柱

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(3/3)

旭俊臣先生の書籍(補注2)から、リハビリを4分類で紹介します。


① 神経心理療法

●リアリティ・オリエンテーション(RO)

今日の日付、季節、場所などの混乱をやわらげ、安心感をつくる。

●回想法

写真・道具・音楽を介して昔の記憶を語る心理療法。

●音楽療法

不安の軽減、自発性の促進、コミュニケーション改善など広い効果。

●その他

絵画、園芸、アロマ、将棋、囲碁など、その人らしさを引き出す活動。


② 理学療法(PT)

  • 基本動作の改善

  • 肩こり・痛みの緩和

  • 歩行能力の維持

  • 入院や廃用を防ぐ


③ 作業療法(OT)

  • 生活歴(職業・趣味・性格)からその人に合った活動を選ぶ

  • 自宅環境の調整

  • 家族への関わり方の助言
    BPSDにもっとも効果が出やすい領域


④ 言語療法(ST)

  • コミュニケーションの訓練

  • 嚥下(飲み込み)の改善

  • 食事場面のトラブル予防


5.薬物治療+リハビリの併用が大切

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(後編)

アリセプト(ドネペジル)の長期研究 J-GOLD(補注10)では、
認知機能の変化は次のように推移しました。

  • 6か月:改善

  • 18か月:元の状態に戻る

  • 24か月:開始時より低下

薬だけでは“維持できる期間”に限界があります。

しかし
薬+認知症リハビリ
を組み合わせると、

  • 意欲の向上

  • 認知機能の改善

  • BPSDの軽減
    などの例が多数報告されています。(補注7)


■まとめ:発展途上だが“確かな手応え”がある

認知症リハビリはまだ発展途上で、確固たる科学的エビデンスが十分ではありません。

それでも、

  • 認知機能の改善

  • BPSDの軽減

  • 家族の負担軽減

  • 入院・転倒の予防
    といった結果が臨床で積み上がっているのも事実です。

介護が限界、施設でトラブル、夜間せん妄が続く…
そんな時は、ぜひ精神科医・ケアマネジャーに
「重度認知症デイケア」について相談してみてください。

次回(第3回)は、
認知症リハビリの具体例をやさしく紹介します。

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(後編)

(Ed Hathaway/Pixabay)

■補注

*1:「認知症の BPSD」日本老年医学会雑誌 48巻 3 号(2011:5)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_48_3_195.pdf

*2:「認知症plus院内デイケアー生活機能の維持・回復を目指す」旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕 編集、2019年9月発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN978-4-8180-2210-2、https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713

*3:「「重度認知症患者デイケア」について」受託事業「認知症重症化予防(三次予防)に関する調査研究事業」日本精神科病院協会ホームページ https://www.nisseikyo.or.jp/news/topic/detail.php?@DB_ID@=563

*4:「認知症短期集中リハビリテーション」公益社団法人 全国老人保健施設協会 https://www.roken.or.jp/about_roken/ninch

*5:「画期的な研究成果がまとまる 認知症短期集中リハビリテーションはきわめて有効」雑誌「老健」2008年10月号 https://www.roken.or.jp/wp/wp-content/uploads/2012/07/roken.pdf

*6:「ADL:日常生活動作(ADL)とは日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことです。」健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/jiritu.html

*7:論文「老健における認知症短期集中リハビリテーション :脳活性化リハビリテーション 5 原則に基づく介入効果」共同著者:関根 麻子、永塩 杏奈、高橋久美子、加藤 實、高玉 真光、山口 晴保、Dementia Japan Vol. 27 No. 3 September 2013、https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/27-3-360-366.pdf

*8:「認知症リハビリテーションの実際」7~15頁、『認知症plus院内デイケア』編集:旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕、2019年発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN:978-4-8180-2210-2 https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713

*9:「認知症ケアにおけるリハビリテーションの重要性」2~6頁、『認知症plus院内デイケア』編集:旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕、2019年発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN:978-4-8180-2210-2 https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713

*10:「ドネペジルの効果が持続する期間は?:国内長期大規模研究」CareNet https://www.carenet.com/news/general/carenet/40424

以上

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