軽度認知障害(MCI)から普通の生活へ!喫煙・飲酒・睡眠・難聴の改善で認知症リスクを下げる方法【第2回】
アルツハイマー型認知症はゆっくり進む病気ではなく、
小康状態 → 急に悪化という“階段状”に進行します。
いったん発症すると
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進行を止める薬はない
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完治させる薬もない
のが現状です。
だからこそ、認知症になる前の段階である軽度認知障害(MCI)を発見できたこと自体が大きなチャンスです。
適切な対策をすれば、16〜41%の方が“年齢相当の状態”まで回復できることが分かっています。
1.普通の状態に戻るための対策②
●喫煙・飲酒・睡眠障害・難聴を放置しない
① 喫煙は認知症のリスクを高める
喫煙量が多く、期間が長いほど
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言葉の流暢性
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記憶力
などの認知機能が低下します。
調査では、禁煙を4年以上続けている人は、喫煙している人より認知症リスクが低いことが分かっています。
●禁煙外来検索
http://www.nosmoke55.jp/nicotine/clinic/
② MCIの人は“少量の飲酒”でも危険性が上がる
「軽度認知障害(MCI)」の方は、
1週間のアルコール量が192g以上(7%のお酒500mL × 約7本)で認知症リスクが高まります。
長期飲酒は、記憶に関わる「海馬」を萎縮させます。
健常者より少量の飲酒で悪影響が出やすいため、特に注意が必要です。
●禁酒外来・専門機関検索
http://alcoholic-navi.jp/search/
③ 睡眠障害は認知症リスクを高める
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睡眠が5時間未満
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逆に8時間以上
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睡眠時無呼吸症候群
これらがあると認知症リスクが上昇します。
特に、睡眠時無呼吸症候群では約2.4倍に増加します。
眠れない・途中で起きる・早朝覚醒が続く場合は、
内科/心療内科/精神科への相談がおすすめです。
また、ベンゾジアゼピン系睡眠薬(補注5)は、認知症リスク上昇の報告があります。使用中の方は医師に確認してください。
④ 難聴を放置すると認知症リスクが“1.9倍”に
50歳以上で聴力が落ちている方は、健常者より認知機能が低い傾向があります。
聞こえにくい → 会話が減る → 脳への刺激が低下
という悪循環が起きやすいため、補聴器の使用は非常に有効です。
研究では、
補聴器を適切に使うことで認知機能の低下を遅らせる可能性
が報告されています。
原因特定のために、耳鼻咽喉科での検査が必要です。
2.普通の状態に戻るための対策③
●65歳以上の運動は「脳そのもの」を強くする
① 運動習慣がある人は認知症になりにくい
65歳以上の調査では、運動習慣がない人は、
週2〜3回の運動をしている人より1.82倍認知症になりやすい
という結果が出ています。
運動強度と効果
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早歩きなどの“やや強い運動” → 認知症リスクが約50%低下
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散歩程度でも週3回以上 → リスクが約33%低下
毎日でなくても、「週3回」がポイントです。
② 運動は“実行機能・処理速度・言語”を向上させる
MCIの方を対象にした研究では、有酸素運動を続けることで、
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記憶
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言語能力
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複数作業を行う力(実行機能)
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情報処理速度
など幅広い認知機能の改善が確認されました。
75歳以上の方でも、
実行機能・短期記憶・推理能力の改善
が見られています。
運動により
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脳血流が増える
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神経細胞のネットワークが強化される(補注6)
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神経栄養因子が増えて脳の容積が増える(補注7)
など、脳そのものが活性化します。
③ MCI改善の切り札「コグニサイズ」
コグニサイズとは
認知課題(計算・しりとり等)+ 運動(歩行・ステップ等)
を組み合わせたトレーニングの総称です(補注8)。
65歳以上のMCIの方100人を対象にした研究では、
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全体的な認知機能
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言語流暢性
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記憶
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脳萎縮の改善
など、複合的な改善が認められました。
参加方法は、
お住まいの自治体の福祉課・介護保険課に問い合わせるのが最も確実です。
介護予防事業・民間グループ・自主サークルなど多様な選択肢があります。
●第2回はここまで
次回(第3回)では、
6.専門機関による認知トレーニングの効果
7.音楽・芸術・社会参加の脳への影響
を分かりやすく解説します。
認知症は家族が気づきにくい病気です。
気になる変化があったら、認知症疾患医療センター(補注15)での検査をおすすめします。
軽度認知障害(MCI)は、10年前には気づけなかった“早期の異常”。
発見できた今こそ、未来を変えられるチャンスです。
◆補注(第2回)
*1:「あたまとからだをげんきにする MCIハンドブック」厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/001272358.pdf
*5:「睡眠薬は、「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」 と「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」に大別されます。ベンゾジアゼピン系睡眠薬:マイスリー、アモバン、ルネスタ、レンドルミン、ドラール」睡眠薬の種類・効果効能・副作用の解説 国分寺イーストクリニック https://kokubunji-east-clinic.com/medicine/sleeping-pills/
*6:「ニューロン(神経細胞)は、1日に10万個死んでいくといわれます。 ニューロンの数は基本的には増えることはなく、減る一方ですが、心配することはありません。 ニューロンには新しく突起を伸ばしてネットワークを作り上げていく力があり、老人になってもその力はなくならないのです。」神経細胞は増えるか? 学習と記憶 日本学術会議おもしろ情報館https://www.scj.go.jp/omoshiro/kioku4/kioku4_3.html#:~:text=%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3(%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B4%B0%E8%83%9E)%E3%81%AF%E3%80%81,%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
*7:「神経幹細胞の増殖にも、増殖を停止させて神経細胞に分化させることにも、神経栄養因子は必須の分子である。ひとたび分化した神経細胞はヒトの場合、長ければ100年も生き続ける、非常に長寿の細胞である。(ちなみに血液の細胞はターンオーバーが早く、寿命は赤血球では約120日、血小板では約10日である)。この生き続けるためのサポートも神経栄養因子の重要な役目である。」神経栄養因子の話 新潟大学脳研究所 https://www.bri.niigata-u.ac.jp/research/column/000876.html
*8:「コグニサイズとは国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた、認知症予防を目的とした取り組みの総称を表した造語です。英語のcognition (認知) とexercise (運動) を組み合わせてcognicise(コグニサイズ)と言います。Cognitionは脳に認知的な負荷がかかるような各種の認知課題が該当し、Exerciseは各種の運動課題が該当します。運動の種類によってコグニステップ、コグニダンス、コグニウォーキング、コグニバイクなど、多様な類似語があります。コグニサイズは、これらを含んだ総称としています。」国立研究開発法人 長寿医療研修センター https://www.ncgg.go.jp/hospital/kenshu/kenshu/27-4.html
*9:松本正人:漢方臨床レポート「軽度認知障害の認知機能に対する抑肝散加陳皮半夏長期投与の臨床報告-2~3年経過例での評価(第2報)-」phil漢方 No.75 2019、22~24頁、https://www.philkampo.com/pdf/phil75/phil75-09.pdf
*15:「認知症疾患医療センターは、認知症疾患に関する鑑別診断とその初期対応、身体
合併症の急性期治療を行うほか、退院する患者が必要とする介護サービスの提供、地域における見守り等の日常生活面の支援や、家族を対象とした相談支援等に適切につながるよう、地域包括支援センターや介護支援専門員等への連絡調整を含め、個々の患者に対する相談を行う機能を有しており、地域での認知症医療提供体制の拠点として、地域の関係機関と連携した支援体制の構築を図ることは重要な役割である。」厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000366645.pdf
お住いの都道府県名に「認知症疾患医療センター」を加えて、ネット検索なさってください。お近くのセンターが判ると思います。
以上






