重度認知症デイケアとは?妄想・不安・興奮などBPSDを専門リハビリで改善する方法【第1回】

🔗 認知症リハビリ・重度認知症デイケア 3部作

本シリーズは、妄想・不安・興奮などのBPSDを和らげるための専門的アプローチを3回に分けて解説しています。気になる回からお読みいただけます。

■はじめに

入居先の施設で、暴言・興奮・妄想・徘徊などのBPSDが強くなり、退居を心配しているご家族は少なくありません。

薬だけでの改善がむずかしいケースもありますが、実は
「重度認知症デイケア」で行う“認知症リハビリ”によって状態が改善した例が積み上がりつつあります。

このシリーズでは3回に分けて、

  • 「デイケア」と「デイサービス」の違い

  • 「重度認知症デイケア」とは何か

  • どんなリハビリがBPSD改善につながるのか
    を分かりやすく解説します。


1.「デイケア」と「デイサービス」はまったく目的が違う

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(前編)

(Ralph Klein/Pixabay)

両方とも送迎付きの通所サービスですが、役割が異なります。

●デイサービス

  • 食事、入浴、レクリエーションなど

  • 自宅での生活を支える「介護中心」

●デイケア(通所リハビリテーション)

  • 医師の指示に基づくリハビリ

  • 身体・認知機能の改善を目的

  • 医療職(PT・OT 等)が常駐

  • 医療的ケアも可能 *(補注4)

2021年時点で

  • デイサービス:24,428施設

  • デイケア:8,308施設

圧倒的にデイサービスが多いため、混同されがちです。

●費用はデイケアのほうが高い

地域区分や施設規模で金額が変わります。
詳細は ケアマネジャー役所の介護保険担当窓口で確認できます。


2.BPSDが強い人向けの「重度認知症デイケア」とは

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(前編)

(Frauke Riether/Pixabay)

「デイケア」の中には、
妄想・興奮・不安・幻覚などのBPSDが強い方を専門にケアする通所医療施設があります。

これが **「重度認知症デイケア」**です。

■主な特徴(わかりやすく要点整理)

  1. 精神科のある病院・診療所に設置

  2. 医療保険が基本(介護保険と併用も可)

  3. 精神科医・作業療法士・看護師・心理職などがチームでケア

  4. 全国に 295施設(2020年時点) と非常に少ない

  5. 厚労省は 「精神症状・行動異常が著しい認知症患者」を対象としている
     *(補注10)


3.実際の利用状況(全国アンケートより)

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(前編)

(Peter Herrmann/Pixabay)

尾嵜遠見先生・前田潔先生の全国調査(2015年 *補注5)によると、平均像は次のとおりです。

■施設と利用者のイメージ

  • 運営:精神科病院

  • 1日の利用者:約25人

  • スタッフ:精神科医1、看護師2、OT1~2、精神保健福祉士1、介護職3

  • 利用者登録:平均51人

  • 1日の利用:平均26人

  • 半年で約10人が入れ替わる

  • 女性が2/3、平均80歳前後

  • 利用頻度:週4日、平均2年半通所

  • 自宅から通所:8割

  • 介護度:要介護1~3が7割

病院の外来リハビリとは別物で、「集団+個別ケア」を長期間行うのが特徴です。


4.どんなリハビリが行われている?

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(前編)

(Mircea Iancu/Pixabay)

アンケートでは以下のプログラムが多く実施されていました。

  • 活動療法(75.5%)

  • 音楽療法(56.9%)

  • リアリティ・オリエンテーション(51.0%)

  • 身体機能訓練(40.2%)

  • 学習療法(37.3%)

  • 家族相談(33.3%)

  • ADL訓練(32.4%)

■薬だけより、リハビリを併用した方が効果が続く

抗認知症薬は、投与から5〜6か月後に効果が弱まります。
しかし 薬+リハビリを行うと

  • 効果の持続:半年〜1年

  • 継続すると進行をゆるやかにできる
    と報告されています。(補注12)


5.どんなBPSDに効果が出やすい?

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(前編)

(Jill Wellington/Pixabay)

アンケートでは、利用者の主なBPSDは以下のとおりでした。

  • 妄想:41.1%

  • 不安:41.1%

  • 興奮:37.8%

  • 易怒性:27.8%

  • 幻覚:21.1%

重症度は

  • 中程度:50.5%

  • 重度:31.5%

  • 軽度:18.0%

■もっとも改善した項目(利用開始後)

  • BPSDの改善:46.9%

  • 介護者の負担軽減:32.4%

  • 認知機能の改善:18.7%

症状そのものだけでなく、家族の負担も軽くなる点が大きなメリットです。


6.作業療法士が感じる「改善ポイント」と「悪化要因」

●効果を実感する順

  1. 介護者の負担軽減(38.8%)

  2. BPSDの予防・改善(23.9%)

  3. 認知機能の維持・改善(13.4%)

●悪化させる原因

  1. 介護者の態度(32.8%)

  2. 認知機能の低下

  3. 身体機能の不調

  4. 環境の変化

家族への指導・相談を重視している理由がここにあります。


7.家族が利用を検討すべきケース

認知症の妄想・不安・興奮などが「重度認知症デイケア」なら「認知症リハビリ」で改善できます!(前編)

(Jean Marc Crespo/Pixabay)

  • 施設から「暴れた・暴言がある」と連絡が来る

  • 夜間のせん妄が続き、自宅介護が限界

  • 妄想や不安が強く、家族が疲れ切っている

  • 他の利用者とのトラブルで退居リスクがある

こうした場合、精神科医の診察を受け、「重度認知症デイケア」が適応か確認してみてください。

■さいごに

私自身、夜中の父のせん妄で老人ホームから何度も呼び出され、対応方法も分からず途方に暮れた経験があります。

もしあの時、
専門家が指導してくれる「重度認知症デイケア」を知っていたら…
介護の負担も、父のしんどさも、違ったかもしれません。

次回(第2回、12月20日公開予定)は、
「認知症リハビリとは何か?」を分かりやすく解説します。


■補注

*1:「認知症の BPSD」日本老年医学会雑誌 48巻 3 号(2011:5)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_48_3_195.pdf

*2:「認知症plus院内デイケアー生活機能の維持・回復を目指す」旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕 編集、2019年9月発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN978-4-8180-2210-2、https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713

*3:「「重度認知症患者デイケア」について」受託事業「認知症重症化予防(三次予防)に関する調査研究事業」日本精神科病院協会ホームページ https://www.nisseikyo.or.jp/news/topic/detail.php?@DB_ID@=563

*4:「通所リハビリテーション(デイケア)」介護事業所・生活関連情報検索 厚生労働省 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group8.html

*5:「全国の重度認知症患者デイケアの実態調査 」尾嵜遠見, 前田潔 Dementia Japan 29(4) 605-614 2015年10月  https://dementia-japan.org/wp-content/uploads/2023/11/605-614.pdf

*6:「重度認知症患者デイケア」と「重度認知症デイケア」について

日本精神科病院協会や尾嵜遠見先生の論文では、「重度認知症患者デイケア」と表記されていますが、『おれんじねっと』(https://orangenet.osaka/article/11050)では「重度認知症デイケア」と表記されています。また、論文などでは名称が長いため短縮して「認知症デイケア」とも称しています。

ここでは、医師の視点からの名称ではなく利用者や介護者の立場に近い「重度認知症デイケア」を使っています。

*7:「作業療法士とは」関西福祉科学大学ふっかライブラリー https://www.fuksi-kagk-u.ac.jp/fukkalibrary/article/OT07.html

*8:「精神保健福祉士とは」福祉の資格 社会福祉法人ふれあいネットワーク 全国社会福祉協議会 https://www.shakyo.or.jp/guide/shikaku/setsumei/03.html#:~:text=%E7%B2%BE%E7%A5%9E%E4%BF%9D%E5%81%A5%E7%A6%8F%E7%A5%89%E5%A3%AB%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B&text=%E5%85%B7%E4%BD%93%E7%9A%84%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%80%81%E7%97%85%E9%99%A2,%E6%94%AF%E6%8F%B4%E3%82%92%E8%A1%8C%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82 

*9:「公認心理師とは」福祉・介護 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116049.html

*10:「新たな地域精神保健医療体制の構築に向けた検討チーム第2R (認知症と精神科医療)」平成23年6月15日資料 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001fp2g-att/2r9852000001fp88.pdf

*11「自立生活の指標:日常生活動作(ADL)とは日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作で、「起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容」動作のことです。」健康長寿ネット https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/jiritu.html

*12:「認知症ケアにおけるリハビリテーションの重要性」2~6頁、『認知症plus院内デイケア』編集:旭 俊臣・坂本昌子・賀曽利 裕、2019年発行、日本看護協会出版会、定価2,300円+税、ISBN:978-4-8180-2210-2 https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3713

*13:「易怒性とは:急に怒り出すことが増え、遅れたり待たされたりする状況を受 け入れることが難しくなります。 このように、些細な刺激で不機嫌になっ たり、怒りっぽくなることは、易怒性と呼ばれています。 易怒性は、認知 症の記憶障害や見当識障害、遂行機能障害(実行機能障害)などから二次 的に生じる、行動・心理症状の一つです。」認知症の行動・心理症状とは  https://www.koubundou.co.jp/files/65191.pdf

*14:「QOLとは:QOLは「Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略称で、「キュー・オー・エル」と読みます。
「生活の質」と訳されることが多いですが、「生命の質」や「人生の質」などと訳されることもあります。一般的に、生活や生命、人生における「幸福」「満足」などを意味しています。
かつて医療の分野では治療が重点的に行われ、リハビリテーションや福祉の分野ではADL(日常生活動作)の自立が重視されていました。しかし、現在は治療やADLの自立とともに、QOLも考慮されるようになってきています。」あずみ苑 https://www.azumien.jp/contents/industry/00064.html

以上

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