軽度認知障害(MCI)とわかった今がチャンス!普通の生活に戻るための最新対策【第1回】
●軽度認知障害(MCI)とは?
日常生活には困らないものの、年齢以上に物忘れが進んでいる状態が軽度認知障害(MCI)です。
放置すると 1年で約10〜15%が認知症へ進行。
しかし治療や運動などに取り組めば、1年で16~41%が“年齢相当の状態に戻れる”ことが分かっています (補注1・9)。
今はまだ戻れるチャンスがあります。
1.「MCI」がなぜ起こるのか
MCIの原因は完全には解明されていませんが、
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アミロイドβが脳にたまる
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タウたんぱくが固まり、神経細胞がダメージを受ける
という アルツハイマー病につながる変化が軽い段階で起きていると考えられています (補注2)。
また、MCIと思っていたら
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うつ病
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甲状腺機能低下症
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ビタミンB12欠乏
など他の病気が原因のこともあります (補注3)
2.MCIの検査はどこで受けられる?
検査では「他の病気ではないか」を含めて、総合的にチェックします。
●主に行われる検査
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問診(症状の聞き取り)
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血液検査(甲状腺、ビタミンB12 など)
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CT・MRI(脳出血・萎縮の確認)
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認知機能検査
●検査できる医療機関は2つ
① 認知症疾患医療センター(最も安心)
② もの忘れ外来のある病院
認知症疾患医療センターは、診断から治療相談、介護保険まで一貫して支援してくれる専門機関です (補注15)。
初めての場合は、ここがもっともスムーズです。
3.普通の状態に戻るための対策①
●まずは「治療できる病気」の改善から
MCIの進行をゆるめる、あるいは改善につなげる第一歩は、合併しやすい病気を治療することです。
(1)糖尿病
糖尿病のある人は、アルツハイマー型認知症の発症リスクが2.1倍に上昇。
血糖値が高い状態が続くほど、認知機能の低下が早まる可能性があります。
ゆるやかな血糖管理が推奨されているため、主治医への相談が大切です。
(2)高血圧
40~64歳の高血圧は、その後の認知症リスクを高めます。
65歳以上の方は
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毎日の血圧を知る
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受診して治療する
ことで脳血管性認知症の予防につながります。
(3)65歳以上では「痩せすぎ」に注意
中年期(40~64歳)は肥満が認知症リスクになりますが、
65歳以上では逆に、体重減少(特に2年で5%以上)が危険。
体重減少は
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筋肉量低下
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栄養状態悪化
につながり、認知機能も落ちやすくなります。
(4)脳卒中の既往
脳卒中のあと、10人に1人が1年以内に認知症を発症。
再発した場合は10人に3人に増えます。
喫煙・大量飲酒が脳梗塞リスクを高めるので注意が必要です。
(5)脂質異常症
65歳以上ではコレステロール値と認知症の関連ははっきりしません。
ただし、心臓病や脳血管疾患の予防のために、治療は必須です。
(6)うつ病
50歳以降にうつ病を発症すると、アルツハイマー型認知症のリスクが2.34倍になります (補注4)。
MCIの方の30%以上がうつ状態を併発しているという調査も。
「もの忘れか、うつか分からない」と感じたら、認知症疾患医療センターでの鑑別が安全です。
●第1回はここまで
次回(第2回)では、以下をくわしく解説します。
4.普通に戻るための対策②:喫煙・飲酒・睡眠障害・難聴の改善
5.普通に戻るための対策③:65歳以上の運動が“脳を強くする”理由
認知症は進行性の病気ですが、MCIの段階なら戻れるケースが多くあります。
この「今」が、未来を変える分岐点です。
◆補注
*1 厚生労働省「あたまとからだをげんきにする MCIハンドブック」
https://www.mhlw.go.jp/content/001272358.pdf
*2 理化学研究所「タウタンパク質と脳萎縮」研究成果(2019)
https://www.riken.jp/press/2019/20190604_2/index.html
*3 日本内分泌学会「甲状腺機能低下症とは」
https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=38
*4 「うつ病と認知症の関連」精神神経学雑誌
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1140030276.pdf
*9 松本正人先生 漢方臨床レポート
https://www.philkampo.com/pdf/phil75/phil75-09.pdf
*15 認知症疾患医療センター(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000366645.pdf
以上







