誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』(1443435によるPixabayからの画像)

「また、認知症の本なの?」と思われた方、ごめんなさい。現在も猛威を振るっている新型コロナウイルスが収束した頃に、認知症の発症があちこちで見つかるのでは?と私は密かに恐れています。この不安から、コロナ禍明けに備えて認知症関連の情報の提供に努めています。

今回は、「レビー小体型認知症」を「うつ病」と誤診され、6年間も薬の副作用で体調悪化と認知機能低下に苦しみ、その後正しい診断のお陰で抗認知症薬で治療を開始。2年後には体調も認知機能も改善された樋口直美さんの体験談を紹介します。

『私の脳で起こったこと ー レビー小体型認知症からの復活』樋口直美(ひぐち・なおみ)著、2015年7月発行、発行所:株式会社ブックマン社、定価1,400円+税、ISBN978-4-89308-843-7

この本は、縦が約19㎝、横が約13㎝、厚みが約2㎝で、255ページの闘病日記です。

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』(Hamattiによる写真ACからの画像)

41歳で「うつ病」と誤診され、劇的な体調悪化と認知機能の低下に苦しみ、治療薬の変更も停止も主治医に拒絶され、2012年に幻視体験から他の病気をご自身で疑い始める。2013年、やっと「レビー小体型認知症」と診断され、正しい治療に踏み出し、2年後には認知機能障害と体調の悪化から復活。樋口さんが「うつ病」を疑い始めた2012年の秋・冬から2013~2014年の春夏秋冬の日々が綴られています。

この闘病日記を7時間かけて、一気に読破しました。いえ、樋口直美さんの苦悩が迫ってきて読まずには居られませんでした。読み終えたとき、本には付箋が30枚以上貼られて、イガ栗のような有様でした。30枚の以上のポストイットから選んだ、この本のお勧めポイントは以下の10点です。

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』(灯螺城による写真ACからの画像)

1.参考になる『▼抗うつ剤を飲んでいた約6年間にあった精神的症状』(209~211ページ)

樋口さんが遭遇してしまった誤診の6年間は、苦痛以外の何物でもなかったようです。「効果を感じられない抗うつ剤を止めたいと毎年伝えた」にも関わらず、毎年交代した主治医は最後の先生を除いて、全員拒否なさったそうです。

あの時の症状が抗うつ剤を止めると消えたので、副作用だったと彼女は仰っています。その時の症状が項目別にまとめられています。

2.参考になる『◎レビー小体型認知症の症状の一部(出る症状・程度は人それぞれ)』(230~232ページ)

もしや?と不安を抱いていらっしゃる人が真っ先に欲しい情報だと思います。「薬に過敏」とか「幻視」とか、さらに具体的に詳しく知りたいと思われたら、日記をご覧ください。

3.参考になる『◎私の経過』(233~235ページ)

樋口さんの経過を拝見すれば、「レビー小体型認知症に治療方法はない」と悲観なさっている方の救いとなります。

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』(みいあによる写真ACからの画像)

4.参考になる『◎今の私の症状と(今はない)幻覚』(235~240ページ)

身体の感覚を「体内に飼い虎がいるイメージ」と表現なさっています。レビー小体型認知症の方であれば、共感を抱かれるに違いありません。アルツハイマー型認知症の父も、スイッチが入ったり、切れたりしていたので、私でも部分的に共感します。

5.とても参考になりそうな『◎私の症状を悪化させた/させるもの』(241~242ページ)

わずか5項目ですが、レビー小体型認知症のご本人にも同居のご家族にも参考になると思います。

6.とても参考になりそうな『◎私の症状を改善したもの』(243~245ページ)

こちらも5項目ですが、レビー小体型認知症のご本人にも同居のご家族にも参考になると思います。

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』( YOKO.Mによる写真ACからの画像)

7.とても参考になりそうな『◎介護する方に伝えたいこと』(245~246ページ)

8項目ですが、樋口さんの体験から発せられる切実さがこもっています。介護なさる方は、ぜひご一読くださいませ。

8.とても参考になりそうな『◎同じ病気の方へ伝えたいこと』(246~248ページ)

この項目は、不安で堪らないあなたを勇気づけてくれるでしょう。

9.樋口直美さんが講演した動画もあるサイト「認知症スタジアム」https://www.youtube.com/user/dementialab/videos

このサイトには、認知症に関する豊富な情報が詰まっています。「5分でわかる認知症」から認知症専門医の解説まで揃っているので、きっとあなたのニーズにあう動画を発見できると思います。

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』(飛騨季節料理肴 店主による写真ACからの画像)

10. 2014年8月25日の人生についての記述。40歳頃から始まった長く苦しい闘病生活の中で、樋口さんが見つけたもの。

この時は「レビー小体型認知症」の治療が始まっています。けれど治療が始まっていても10日前には、地名の「新橋」が理解できず、苗字の「伊藤」がしばらく読めず、「(『いふじ?珍しい名前だ』とおもった)と書かれています。このような治療の光明が見えても、認知機能の低下を痛感する日々の中で人生について書かれた8月25日の記述。

この人生への想いは、病気を抱えて不安な全ての方への大きな贈り物だと思います。長い闘病生活の中で、樋口さんはご自身の人生をこう受け止めました。

(前略)子供達と小さい時に読んだ「ランパンパン」の主人公の鳥を思い出した。

幸せな気持ちが、胸一杯に広がる。毎晩、子どもたちと一緒にワクワクドキドキしながら絵本を読んだ。一緒に喜び、一緒に悲しみ、一緒に笑ったあの時間。なんて幸せな、なんて満ち足りた、なんて豊かな時間だったんだろう。

過去になんて興味はなかったのに、思い出に浸る趣味はなかったのに、今、あの豊潤な時間が、私の人生を何ものにも負けない力で肯定する。

私の人生は、素晴らしいものだった、意味のあるものだった、私は幸せな人間だと心の底から思える。』(191~192ページより引用)

全ての方々が、ご自身の人生を肯定し、幸せだったと感じられるよう祈ります。

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』

誤診から身を守る為にも読んでほしい本『私の脳で起こったことーレビー小体型認知症からの復活』(Johnnys_picによるPixabayからの画像)

『私の脳で起こったこと ー レビー小体型認知症からの復活』https://bookman.co.jp/book/b382917.html

「認知症スタジアム」(NPO法人認知症ラボ)https://dementia-stadium.jimdofree.com/

☆NPO法人 健康と病いの語り ディペックス・ジャパン https://www.dipex-j.org/

「健康と病いの語りディペックス・ジャパン」(通称:ディペックス・ジャパン)は、英国オックスフォード大学で作られているDIPEx(Database of Individual Patient Experiences) をモデルに、日本版の「健康と病いの語り」のデータベースを構築し、それを社会資源として活用していくことを目的として作られた特定非営利活動法人(NPO法人)です。患者の語りに耳を傾けるところから「患者主体の医療」の実現を目指します。

以上

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