記憶の塗り替えを利用して、幸せを充電なさいませんか?
『子ども時代の大切な思い出さえ、実は粘土遊びのボールのように作られ、また作り直される可能性がある。』とジュリア・ショウ氏は著書『脳はなぜ都合よく記憶するのか』のなかで述べられています。
ジュリア・ショウ氏は、感情的な出来事を体験したときに起きる記憶エラーを研究する、世界でも数少ない研究者として有名な女性です。
幼年期の記憶の情報源を取り間違える可能性ついて、彼女は高名な「パンチボウル事件」の実験という研究を紹介しています。これは、実験の参加者のご両親から聞いた話として、「あなたは5歳の時に結婚式に参列し、披露宴中に走り回ってパンチボウルのテーブルにぶつかり、事件を起こした」という作り話を聞かせ、短時間のイメージトレーニングを3回、繰り返すそうです。
その結果、参加者の25%は、この作り話を自分の記憶と錯覚しました。さらに、12.5%は、この作り話を部分的な自分の記憶と錯覚したと判定されたそうです。
『これが示しているのは、人は幼年期の記憶の出所を取り違えることがある、つまり自分がイメージしたことを、実際に起こったことと思い込み、人から暗示された情報を自分のものとして取り入れ、自分の過去の一部としてしまうということだ。これは、他者が本人の想像力を利用して生じさせる作話の極端な例だ。』とジュリア・ショウ氏は述べていらっしゃいます。
また、科学雑誌「Newton」の2018年5月号に「偽りの記憶は、なぜ作られるのか」と題した心理学特集が掲載されています。(P.66-79)
この記事の中で、聖心女子大学の高橋雅延博士によれば、私たちが覚えている出来事の記憶を「楽しい出来事」「普通の出来事」「嫌な出来事」に分類すると、どの研究でも記憶の中で占める割合は「楽しい出来事」が約50%、「普通の出来事」が約30%、「嫌な出来事」が約20%だそうです。
『高橋博士は「感情的な記憶はまちがっている確率が高いといえます。これは一般の認識と乖離がある点です」と話します。確かに、楽しかった旅行や、くやしかった失敗は、詳細に覚えているように感じられます。しかしその細部についてはあまり覚えておらず、それを意識できていないだけのようです。』
そして、たとえば楽しい旅行の思い出を何度も思い出す時、その記憶は脳の中で再構成が行われます。「楽しかった」イメージは鮮明でも、「いつ」「どこで」といった情報はあまり注意が向けられません。この「いつ」「どこで」などの情報は、脳の中に雑然と保存されているそうなので、楽しい旅行の思い出を思い出し記憶の再構成を行った時に間違った「いつ」「どこで」と結びついてしまうという訳です。
混乱や物忘れ、暗示などに惑わされて記憶のエラーが起きてしまうわけですが、この作用を利用して、辛い記憶を楽しい記憶に変えることも可能です。
『たとえば、2009年に報告された日本の研究では、大学生46名を参加者として、受験生活の記憶をできるだけ楽しかったものとして語ってもらいました。そして、1週間や1か月など間をあけて、受験生活の本来の記憶について語り直してもらうと、ポジティブな単語がふえて語られるようになったと報告されています。(後略)』
この参加者たちも「パンチボウル事件」実験の参加者と同じように、「できるだけ楽しかった記憶」として語った受験生活が、自分が語った言葉によって再構成されて、ポジティブな単語が増えた、新しい記憶に塗り替えられたのです。
この再構成の力を利用して、あなたの、あるいはお母様の辛い記憶を塗り替えてみませんか?
心にひっかかっている辛い記憶でも、別の視点から振り返ったり、ご自身でポジティブに言い換えて、繰り返し話すことで、記憶を塗り替えることが出来ます。日記やお手紙の形で、塗り替えてみてはいかがでしょうか?
あのジュリア・ショウ氏も著書の中でこう記していらっしゃいます。『なりたい自分にぴったりの記憶を選ぼう』!
絆のワークショップでは、お1人約15分間、インタビュアーがあなたのお話をじっくり伺って、楽しい思い出をもっと楽しい記憶に、辛い思い出をポジティブな記憶に塗り替えています。
ご自身で記憶の塗り替えをするのが難しいのであれば、ぜひ一度、絆のワークショップにご参加ください。お1人が不安な方は、ご姉妹や母娘でのご参加はいかがですか。親しい方とご一緒の参加を、大歓迎しています。
楽しい記憶を増やして、幸せを充電なさいませんか?
『脳はなぜ都合よく記憶するのか』ジュリア・ショウ著、服部由美訳、講談社、2016年刊
「Newton」2018年5月号「偽りの記憶は、なぜ作られるのか」、株式会社ニュートンプレス、2018年