モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』(KoneviによるPixabayからの画像)

4月2日(金)から公開される映画「僕が跳びはねる理由」の原作、『自閉症の僕が跳びはねる理由ー会話のできない中学生がつづる内なる心ー』をご紹介します。

『自閉症の僕が跳びはねる理由ー会話のできない中学生がつづる内なる心ー』東田 直樹(ひがしだ・なおき)著、㈱エスコアール出版部発行、2007年2月発行、定価1,600円+税、ISBN978-4-900851-38-2

内容は、会話が難しい自閉症の東田直樹氏が筆談というコミュニケーション手段を獲得し、ご自身の気持ちや自閉症者の多くの気持ちを綴った本です。この本には、今まで誰も知らなかった自閉症の方々が体験している世界や、彼あるいは彼女たちが味わっている色や音が溢れています!

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』(PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像)

ページは140ページ。五章に分かれ、「第一章 言葉について」では「言葉」を「口から出てくる不思議な音」として捉えている彼の悩みや苦しみが素直に綴られています。

第二章 対人関係について」では、「コミュニケーションをとりたいけれど・・・」と希望があっても実現が難しくて困惑なさっている気持ちが書かれています。「人の声」を見て、言葉を理解しようとなさる東田さんは、誤解されたり、傷ついたり・・・「いつもこの体を持て余まし、気持ちの折り合いの中でもがき苦しんでいるのです。」(P57より引用)と述べていらっしゃいます。

自閉症の方々が、こんなに苦しんでいらっしゃるとは全く知りませんでした。けれど、決して彼・彼女たちは可哀そうなだけの存在ではありません。同時に、自閉症でない私たちには窺い知れない鮮やかで繊細で光に溢れた美しい世界に住み、その美しさを味わっていらっしゃることも東田さんは教えてくださいます。

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』(KanenoriによるPixabayからの画像)

第三章 感覚の違いについて」では、東田さんの「ちょっと不思議な感じ方」について絵本のように描かれています。この本を読んで初めて、感覚があまりにも違うことに驚きました。たとえば、第三章の25跳びはねるのはなぜですか?ではこう書かれています。

僕は跳びはねている時、気持ちは空に向かっています。空に吸い込まれてしまいたい思いが、僕の心を揺さぶるのです。」(P66より引用)

なぜ空に吸い込まれてしまいたいのか、その理由を東田さんは教えてくれます。

何か起こった瞬間、僕は雷に打たれた人のように体が硬直します。硬直は、体が硬くなることではありません。自分の思い通りに動かなくなることです。縛られた縄を振りほどくように、ピョンピョン跳びはねるのです。跳べば、体が軽くなります。空に向かって体が揺れ動くのは、そのまま鳥になって、どこか遠くへ飛んで行きたい気持ちになるからだと思います。

自分に縛られ、他人に縛られ、僕たちは籠の中の鳥のように、ピーピー鳴いてバタバタと跳びはねるしかありません。

どこか遠くの青い空の下で、僕は思いっきり羽ばたきたいのです。」(P66-67より引用)

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』(DanaTentisによるPixabayからの画像)

第四章 興味・関心について」では、東田さんの好きなことや楽しいことが並びます。この表現が美しいんです!彼は、モネの絵のように世界を眺めているに違いないと感じます。

第四章の37手のひらをひらひらさせるのはなぜですか?で、東田さんはこう綴っています。

これは、光を気持ち良く目の中に取り込むためです。

僕たちの見ている光は、月の光のようにやわらかく優しいものです。そのままだと、直線的に光が目の中に飛び込んで来るので、あまりに光の粒が見え過ぎて、目が痛くなるのです。

でも、光を見ないわけにはいきません。光は、僕たちの涙を消してくれるからです。

光を見ていると、僕たちはとても幸せなのです。たぶん、降り注ぐ光の分子が大好きなのでしょう。

分子が僕たちを慰めてくれます。それは、理屈では説明できません。」(P92より引用)

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』(photogrammer7によるPixabayからの画像)

第五章 活動について」では、東田さんが「どうしてそんなことするの?」と周囲から咎められる苦しみや悲しみ、コントロールできない自分の体との戦いについて書いています。第五章の57どうしてパニックになるのですか?で東田さんはこう文章を締めくくっています。

思い通りにならない体、伝えられない気持ちを抱え、いつも僕らはぎりぎりのところで生きているのです。

気が狂いそうになって、苦しくて苦しくてパニックになることもあります。

そんな時は泣かせて下さい。側で優しく見守って下さい。苦しさのあまり自分が分からなくなり、自傷、他傷行為をするのをとめてください。(P138-139より引用)

そして、東田さんは僕は自閉症とはきっと、文明の支配を受けずに、自然のまま生まれてきた人たちなのだと思うのです。(P140より引用)とおっしゃっています。だから、こう結んでいます。

僕たちが存在するおかげで、世の中の人たちが、この地球にとっての大切な何かを思い出してくれたら、僕たちは何となく嬉しいのです。(P140より引用)

モネやドガの絵のように美しくて、苦しくて切ない東田直樹さんのこの本をあなたにお勧めします。

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』

モネの世界と制御しきれない体を併せ持った自閉症が切ない『自閉症の僕が跳びはねる理由』(David MarkによるPixabayからの画像)

《参考》

☆東田直樹オフィシャルサイト https://naoki-higashida.jp/

☆自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心 https://www.escor.co.jp/products/products_item_books_naokisbooks03.html

以上

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