動脈硬化症などの発症・悪化につながる人工型トランス脂肪酸は、マーガリン等に多く含まれるが、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!(Mabel Amber, who will one dayによるPixabayからの画像)

東北大学大学院薬学研究科の平田祐介助教らの研究グループは、5種類のトランス脂肪酸の毒性を比較し、人工型が細胞の自爆(アポトーシス)を強く促進することを発見。さらに、人工型トランス脂肪酸の毒性は、EPAやDHAなどの高度不飽和脂肪酸によって軽減できることも判明。この論文をざっくりと分かりやすく紹介します。

1.アポトーシスとは?

生物の形成や、ウイルスに感染した時などに生体組織をより良い状態に保つことを目的として、細胞にあらかじめ組み込まれている自爆プログラムです。

たとえば、オタマジャクシが蛙になる時不要となった細胞を処理するためにアポトーシスが起こります。また、ウイルスに感染した細胞や癌化した細胞を排除するためにもアポトーシスが起こります。

アポトーシスが働くと、細胞自身の分解酵素が働いて自分自身を分解して、免疫細胞のマクロファージに食べられやすくします。マクロファージに食べられた細菌は、消化・殺菌され、周りの正常な細胞に害を与えることなく速やかに処理されます。

アポトーシスによって、ほとんどの腫瘍の成長は未然に防がれます。ところが、稀にアポトーシスのプログラミングが壊れた細胞が生まれ、この場合は無限に分裂増殖を繰り返し、癌細胞へ変化します。

このように毒にも薬にもなる大切な細胞の自爆機能が、アポトーシスです。

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!(KjellTjetlandによるPixabayからの画像)

2.トランス脂肪酸が持つ毒性作用を研究した背景

主に油脂加工に伴う食品製造過程で副産物として産生され、マーガリンやショートニングなどの加工食品に多く含まれるトランス脂肪酸を人工型トランス脂肪酸と呼びます。

過去の調査から、人工型トランス脂肪酸が、心筋梗塞などの冠動脈疾患や神経変性疾患などのリスク要因となることが示され、欧米諸国ではこれまでに、食品中含有量の制限等の規制も導入されています。

しかし日本では、トランス脂肪酸の摂取量が欧米諸国と比較して少ないことや、循環器系疾患を除いた他の疾患とは明確な因果関係が不明であることから、食品中含有量や摂取量の規制は行われていません。(厚生労働省の「トランス脂肪酸に関するQ&A」では、≪肥満やアレルギー性疾患についても関連が認められています≫と表示されています)

そこで研究グループは、同グループがこれまでに明らかにしてきたトランス脂肪酸の毒性が発生する仕組みを踏まえて、食品中に含まれる5種類の主要なトランス脂肪酸(人工型:2種類、 天然型:3種類)について、毒性の有無や程度を評価しました。

さらに同研究グループは、トランス脂肪酸の毒性が発生する仕組みに着目しEPAやDHAなどの高度不飽和脂肪酸のトランス脂肪酸に対する作用も解析しました。

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!(マサコ アーントによるPixabayからの画像)

3.研究成果

*工業的な食品製造過程で生じる「人工型トランス脂肪酸」は制御・プログラムされた細胞死(アポトーシス)を過剰に促進する毒性がある。

*乳製品や牛肉などに多く含まれる「天然型トランス脂肪酸」にはアポトーシスを促進する毒性は無い。

*人工型トランス脂肪酸による毒性(アポトーシス促進作用)は、EPAやDHAなどの高度不飽和脂肪酸によって効果的に軽減可能である。

*動脈硬化症や神経変性疾患をはじめとしたトランス脂肪酸関連疾患の、画期的な予防・治療戦略の開発につながることが期待できる。

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!(Adam VegaによるPixabayからの画像)

4.この研究の意義と展望

*人工型トランス脂肪酸の食品中含有量や摂取量について引き続き注視していく必要がある。

*各種トランス脂肪酸の実際の摂取量や体内の存在量に基づく有害影響の有無、各種脂肪酸の実際の関連病態への影響、主要な5種類以外のトランス脂肪酸種の毒性の有無などについて、調査を継続する必要がある。

*普段からEPAやDHAなどの高度不飽和脂肪酸を摂取することで、トランス脂肪酸摂取に伴う関連疾患の発症リスクを軽減できることが想定される。

トランス脂肪酸の毒性を軽減させる解毒因子まで解明していただいた、研究グループに感謝です!ということで、マーガリンやショートニングを使用している加工食品を控えて、青魚やマグロをいっぱい食べましょう!(人工型トランス脂肪酸がどのように細胞のアポトーシスを過剰に促進させるかについて知りたい方は、下のアドレスから論文を参照ください)

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!(Denny HellによるPixabayからの画像)

謝辞:東北大学大学院薬学研究科・薬学部 平田祐介助教、柏原直樹大学院生、佐藤恵美子准教授、松沢厚教授らの研究グループの皆さま、ご協力なさったボランティア等全ての皆様に感謝するとともに、この研究の進展・発展を祈念します。

☆東北大学プレスリリース「「人工型」トランス脂肪酸のみが持つ毒性作用と その解毒因子を発見 -動脈硬化症などの関連疾患の発症予防・治療戦略の開発に期待-」chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/http://www.pharm.tohoku.ac.jp/file/information/20230421-2.pdf

☆scientific reports「A comprehensive toxicological analysis of trans-fatty acids (TFAs) reveals a pro-apoptotic action specific to industrial TFAs counteracted by polyunsaturated FAs」https://www.nature.com/articles/s41598-023-32083-9

☆東北大学大学院薬学研究科・薬学部http://www.pharm.tohoku.ac.jp/

☆M-hub 「アポトーシス(apoptosis)とは?ネクローシスとの違いも徹底解説」https://m-hub.jp/biology/4434/321

☆厚生労働省「トランス脂肪酸に関するQ&A」(ただし、情報更新日不明)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091319.html

以上

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!

動脈硬化症などの発症・悪化につながるのは、マーガリン等に多く含まれる人工型トランス脂肪酸で、この毒性をEPAやDHAなどが効果的に軽減できることを発見!(nickhvkによるPixabayからの画像)

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