おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!

おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!

おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(Jill WellingtonによるPixabayからの画像)

TVニュースでおぞましい映像と一緒に話題となるゴミ屋敷!あれの犯人は、病気でした。それも高齢男性の有病率が高く、診察が必要とか。高齢者研究、45年になる専門家の著作から両親や身近の高齢者にこまっていらっしゃるあなたへ参考になる要点を抜き書きで紹介します。

大阪大学名誉教授の佐藤眞一(さとう・しんいち)先生によれば、人は生涯発達する』そうです。老人・シニア・お年寄り等の従来の捉え方と違うので、佐藤先生は『高齢さん』と呼びます。ここではそのまま引用します。

おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!

おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(dae jeung kimによるPixabayからの画像)

1.自分に都合の良いことばかり話すのはなぜ?

高齢さんに近況を尋ねると、自分に都合のよい出来事だけを話す傾向があります。これは『高齢さんはこうしたネガティブな話はしません。わざと話さないのではなく、覚えていないからです。』(P47より引用)

『(前略)高齢さんはポジティブなことに目が向きやすいといわれています。なぜかというと、若い世代はこれからの人生を生き抜くために、危険や恐れなどのネガティブな情報を集め、それに耐える力をつけようとしているからです。その反面、高齢さんは、人生でネガティブなことも経験してきたので、少なくなった記憶の容量をポジティブなことに充てようとしていると思われます。(後略)』(P48より引用)

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おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(Jamie NakamuraによるPixabayからの画像)

『(前略)加齢による影響を受けやすいのは、エピソード記憶です。エピソード記憶はいつ、どこでという時間や場所などの情報を含んだその人の体験の記憶。(中略)物忘れは、エピソード記憶の低下が原因で起こります。

高齢さんは最近の出来事は忘れても、若いころのことはよく覚えています。特に10代後半から30代前半ぐらいのころを思い出し、よく家族や友だちに話して聞かせます。(中略)昔の記憶の内容は常に脳内で更新されていきます。そして、辛い出来事もよい思い出に再構築されるため、昔の思い出話は素晴らしい出来事ばかりになるのです。』(P49~50より引用)

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おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(englishcityceoによるPixabayからの画像)

記憶関連のアドバイス≫(P53~59より引用)

高齢さんが情報を記憶しやすいように、同時に複数の情報を提示しないでください。ひとつずつ、分かりやすく提示します。メモをとってもらうことも有効。

*ワーキングメモリーは加齢とともに低下するので、ひとつの作業と同時に別のことをするのは難しいです。

*身のまわりや世の中の出来事を一般知識として蓄えた記憶(意味記憶)は加齢で衰えるどころか、むしろ増えていきます。

記憶力の衰えから、「ある行動を自分が実際に行ったか、想像しただけかを判断する能力」や「ある情報をどこから入手したか思い出す能力」が低下します。そのため、実際には起きていない事柄を事実と信じたり、事実と異なることを覚える虚記憶が起きやすくなります認知症の「物盗られ妄想」は、この虚記憶で作られます。思い違いをするのはよくあること。頭から否定したり、無理に正そうとしたりしないで、いったんは受け入れるようにしてください。

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おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(HeungSoonによるPixabayからの画像)

2.頑として運転をやめない理由はなに?

高齢さんは、「自分はまだ運転ができる」「運転が上手で無事故無違反の優良ドライバーだ」「自分は有能だ」という自己認識を持っています。『自分のことを客観的に見られずに、自分で自分を高く認識してしまう有能感が強いのです。』(P70~71より引用)

『高齢さんの交通事故は、加齢とともに認知能力の分配や瞬時の判断速度が低下していることが原因です。(中略)年を取ると情報処理のスピードが落ちてきて、一定の時間で処理できる情報の量が減ってしまいます。そのため、さまざまな情報処理を同時進行で行わなければならない運転では、歩行者に気を配ったり、ほかの車に注意を向けたりする余裕がなくなり、交通事故につながってしまうのです。』(P72より引用)

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おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(Jamie NakamuraによるPixabayからの画像)

高齢さんが運転をやめないのには自己効力感(自分の考えたことが思い通りになる感覚)が関係しています。(中略)高齢になると体力が落ちて、外出するのもひと苦労です。その点、移動手段に車を使えば自分の思い通りに運転ができて、どこへでも行けます。車を運転することは、自己効力感を感じられる数少ない機会なのです。そのほかに、自動車は人のサードプレイス、つまり、自宅や職場ではない居心地のいい場所でもある、ということも影響しています。』(P73より引用)

『これらを踏まえたうえで、運転をやめて欲しいと思うなら、例えば家の壁をこすってしまったなど、本人が運転に不安を感じた機会を利用するなどして、家族で話し合うのが効果的です。ただし、その際に家族は本人を責めたり、能力の低下を認めさせるような言動は慎むこと。大切なのは本人が「運転をやめよう」「運転はもうしなくてもいいかな」と自発的に運転をやめる方向に話をもっていくことです。』(P74より引用)

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おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(HeungSoonによるPixabayからの画像)

有能感関連のアドバイス≫(P74~80より引用)

家族が見たら危ない行為も、高齢さんは「自分は大丈夫」と自己評価していることがあります。やめさせたいなら高齢さんの自己評価を下げないような言葉かけを心がけてください。

*自分は特別で価値のある人間だと強く思っている高齢さんに対しては、その自尊感情を損なわないようにしつつ、心の中で「そういう人なのだ」と思うようにすれば高齢さんの言動に振り回されずに済みます。

自己効力感(何かを行なう場合、それを適切に実行できるという自信や確信があること)の高い高齢さんは、例えば減塩指導を受けたときなどに「自分ならできる」と積極的に取り組めます。目標達成に高齢さんの自己効力感を上手に利用しましょう。

*運転をやめる場合、代わりに趣味や自治会活動、ボランティアなど本人の興味を引く活動があれば、それらに自己効力感を持つことができるように上手く導いてあげましょう。

手続き記憶(車の運転やピアノ演奏など、意識しなくてもできる運動に関する記憶)である車の運転は、高齢になっても行えます。が、注意力や身体機能は低下しています。高齢さんにはそれを自覚してもらうことが大事です。

*高齢さんには、長い人生の中で培ってきた得意分野があります。無理のない範囲で高齢さんの得意なことを行なってもらい、生きがいを持ってもらうようにすると良いでしょう。

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おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(AndreasによるPixabayからの画像)

3.ゴミを溜め込んで、自宅をゴミ屋敷にしてしまうのはなぜ?

年を取ると怒りっぽくなると言われますが、理由があります。なかでも多いのは、独居老人の孤独感が怒りに変わる場合です。

人間は社会的な動物なので、社会に所属したい、社会から認められたいという欲求が誰にでもあります。けれど、孤立した高齢さんは社会から受け入れられているという実感を得られず、欲求不満から反社会的傾向が芽生えます

高齢さんに見られる反社会的な行為の典型として挙げられるのが、自宅をゴミ屋敷化して、周囲に迷惑をかけるケースです。なぜ、反社会性を強めた高齢さんが、とくに自宅をゴミ屋敷化してしまうのでしょうか?そこには、現代のゴミの分別の問題が背景としてあります。』(P107より引用)

おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!

おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(Amber StevensによるPixabayからの画像)

視力や注意力がおぼつかなくなってくると、ゴミの分別は面倒で困難な仕事になります。その上、やっと分別して出したゴミが「回収できません」のシール1枚につき返されたら、もう我慢の限界です。

『「誰も助けてはくれない」「自分だけ意地悪されている」と憤り、ますます孤独を募らせることでしょう。「お宅のゴミに迷惑している」とクレームが入っても「いい気味だ、もっと困ればいい」と思うか、「そんなの知ったことか!」と逆ギレするか。結果、「あの人は偏屈で話が通じない」「関わると面倒」と思われ、ますます孤立、孤独を深めていきます。』

『この問題でもうひとつ注意しておきたいのが「ためこみ症」という、脳の機能障害による自宅のゴミ屋敷化です。モノを捨てることを苦痛に感じるため、新聞や雑誌から場合によっては動物まで、何でもかんでもためこんで生活空間を圧迫していきます。また、この状態を見られたくないので、家族や近隣の住人を立ち入らせようとしません。高齢男性の有病率が高く、精神疾患の一種なので医師による診断を受けるよう促す必要があります。』(P108より引用)

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おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(Manfred RichterによるPixabayからの画像)

孤立・孤独関連のアドバイス≫(P110~114より引用)

*高齢さんも悪口を言われれば気づくし、そうでない場合でも悪口を言われたと思ってしまうこともあります。日頃から良好な人間関係を築いておくことが重要です。

偏屈でまわりに迷惑をかける高齢さんの多くは、孤立し、孤独に陥ったためにそのような態度をとります。日頃から孤立させず、孤独を感じさせないようにすることが大切です。

*独り暮らしでも、家族や地域の人とのつながりがあれば社会的孤立状態とは言いません。異変に気づいてくれる人がまわりにいることが認知症への対策や早期発見につながります。

*認知症の高齢さんには、それぞれ特有の表情や性格、好み、言動パターンなどがあります。日頃から接している人たちであれば、それらをうまく察することができます。焦らずじっくり向き合ってくれる人がいれば、高齢さんの自尊心と安心感を高めることができます。

おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!

おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(Jamie NakamuraによるPixabayからの画像)

脳の損傷、脳血管障害の後遺症、認知症、その他の精神疾患などで「ためこみ症」を発症します一般に女性よりも男性のかかる率が高く、年齢も高くなるほど発症しやすいとされます。本人はためこみ行動に悩んでいないで、専門医の診断を受けるように促しましょう。薬物療法や認知行動療法によって日常生活に支障をきたさないように改善できます。

孤独・孤立から引き起こされる高齢さんの反社会的行動としては、ゴミ屋敷化や店員や担当者に怒りをぶつけるモンスタークレーマー等があります。程度の軽い問題行動なら、「ひとりで不自由なさっていませんか?」「お困りのことがありましたら声をかけてください」など、親身になって言葉をかけるだけでも効果を十分に期待できます。

☆『あなたのまわりの「高齢さん」の本 ― 高齢者の心理がわかる112のキーワード』佐藤眞一(さとう・しんいち)著、2022年10月発行、主婦と生活社、定価1400円+税、ISBN978-4-391-15728-4 https://www.shufu.co.jp/bookmook/detail/978-4-391-15728-4/

以上

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おぞましいゴミ屋敷の犯人は、ためこみ症という脳の機能障害で精神疾患の一種でした!(Zhu BingによるPixabayからの画像)

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