愚痴話の正しい聴き方とは?2ー一番楽しかった時代に戻りたい場合と自分を正しく評価して欲しい場合
8月10日のブログ「愚痴話の正しい聴き方とは?」にご意見・ご感想を頂き、ありがとうございます。何度も繰り返されるお母様の愚痴話に悩んでいらっしゃる皆さまへ、愚痴話の正しい聴き方Part2をお届けします。
まず、おさらいから。わたくしは、インタビューや女性史の聞き書き、あるいはゴーストライトなどの経験から、何度も繰り返される女性のお話を3つに大別します。
1.その方の人生で一番楽しかった思い出で、その頃に戻りたいという願望の話
2.その方にとって納得できない、あるいは許せない事柄で、未解決の感情が噴出している話
3.その方の能力や実績などが正しく評価されていないと感じていることによる、承認欲求の話
ただし、2番の未解決の感情が噴出している話と3番の承認欲求の話は、からみあっている場合もあります。この場合は、あまり厳密に判断なさらなくても、お話を聞いているうちに、何度も繰り返して話してしまう原因が見えてきます。
そして8月10日のブログでは、2番の未解決の感情が噴出しているお話の場合、最初はお話に共感を示す。次に、物事の違う視点に気づいて頂けるように、お母様を誘導する聴き方を説明しました。
今回は、1番の場合と3番の場合の、更なる変化を促す聴き方をご紹介します。
お母様の何度も繰り返される昔のお話が、1番の回帰願望のお話の場合、例えばその思い出の地へのご旅行や散策を提案なさってみてはいかがですか?
楽しい思い出がつまった故郷や、青春を彩った女学校、お稽古に通った華道の先生のお宅など、その時代や場所を懐かしんでいらっしゃるだけでなく、その場所を再発見する、新たな段階へ誘導なさってみてはいかがでしょうか?
たとえ、その女学校や華道の先生のお宅がもう存在しないとしても、その付近を歩き回る計画を立てるだけで、好奇心や興味や期待が生まれます。車椅子での外出としても、「何を着ていこうかしら?」「髪をセットしてもらおうかしら?」と外出を楽しむ気持ちが生まれます。
特にお勧めしたいのは、リハビリに取り組んでいらっしゃる場合です。この懐かしの地への再訪を喜んで下されば、リハビリへの意欲と目標が生まれます。
穿った見方かもしれませんが、あまりに過去の楽しい思い出に執着なさるということは、現状を受け入れていらっしゃらない、というサインのような気がします。ご病気やホームへの入居など仕方ないと理解していても、その方にとって好ましくない現実から目を逸らしたいからこそ、過去が100倍も輝いて見えてしまうのかも知れません。
例えば、既に寝たきりでいらっしゃるとすれば、懐かしい昔のお話を傾聴することが最善だと考えます。何度も同じ話を繰り返していることを、忘れてしまっている場合もあります。この場合も、初めて聞くお話のように、何度でも伺うことが最善でしょう。
けれどまだお元気で動ける状態であれば、現状を受け入れ、今の状況を楽しめるように見方を変える一歩を、提案することもできます。その1例として、懐かしんでいらっしゃる地への再訪をご紹介いたしました。
次に3番、承認欲求が満たされていない場合の、新たな聴き方をご紹介します。
まず、お母様ご自身が同じ話を何度も繰り返している事実を自覚していらっしゃるか、いらっしゃらないかによって異なります。
また、お母様のご体調やご環境、あなたとの関係によっても異なります。
これらの前提をご理解いただいた上で、同じ話をついつい繰り返していると自覚なさっていらっしゃるのであれば、お母様の達成感や満足度に貢献できそうな、趣味やサークルなどをお勧めしてはいかがでしょうか?
お年を召された方は、新しい物事に対して否定的な態度をとり勝ちですが、ゆっくり、じんわりとその趣味やサークルの楽しさを伝えてみてください。新しい情報が理解し難い、何度聞いても忘れてしまうという側面もありますから。この趣味やサークル活動へのお勧めと同時に、お母様の有能さを褒めたたえて、心の背中をゆっくりと押してあげてください。
「お母さんは、就職や進学のチャンスを与えられなかったから能力を発揮できなかったけど、〇〇〇については有能で才能があると思うわ。だから◇◇◇は、お母さんに向いていると思うの。やってみたら、楽しいんじゃない?」と。
介護士の方によれば、「高齢の方が何度も話すこと」は「当たり前のこと」なので「
けれど、もう少しお母様がお元気で、何度も繰り返される愚痴話を聞く娘の立場としては、”この愚痴話をなんとか出来ないの?”と思ってしまいます。そのような、あなたのためにご紹介しています。
うんざりするのでなく、お互いが楽しい時間を一緒に過ごせるようになるための、何度も繰り返す原因の分析や対処法です。聞き飽きたお話にうんざりするのではなく、そのお話を繰り返す真意を読み解き、お母様と楽しい時間を少しでも多く共有できれば、と願っています。
では、お母様が同じ話を何度も繰り返していらっしゃる自覚がない場合については、「愚痴話の正しい聴き方とは?Part3」でご紹介いたします。
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