膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!(djedjによるPixabayからの画像)

あなたの身近に、抗癌剤治療や放射線治療による吐き気や食欲不振・全身倦怠感で苦しんでいる方はいますか?今回は、「膀胱癌」や「腎盂・尿管癌」「前立腺癌」などの患者さん162人に漢方薬を投与して、化学療法や放射線治療による食欲不振や全身倦怠感を治療できるか検証した論文を紹介します。

1.この論文の検証対象疾患と患者さんのデータ

⦿対象疾患:膀胱癌および尿管癌 82人

      前立腺癌      43人

      腎癌        20人

      睾丸腫瘍       9人

      その他泌尿器・後腹膜悪性腫瘍 8人

⦿人数:162人(男性131人、女性31人)

⦿年齢:20代   6人 

    30代   4人

    40代   8人

    50代  23人

    60代  43人

    70代  59人

    80代  19人

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!(djedjによるPixabayからの画像)

⦿漢方薬「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」の服用方法

ツムラ補中益気湯エキス顆粒を1日3回服用

⦿服用期間:1-142週間、平均20.1週間

1-4週間服用  65人

5-10週間服用  39人

11-20週間服用 11人

21-50週間服用 19人

51週以上服用  24人

不明       4人

⦿治療効果の判断基準

食欲が改善されたか?

体重は増加したか?

全身状態の指標パフォーマンスステータス(*2)は改善されたか?

睡眠は改善されたか?

患者さんの自覚的快適さは改善されたか? などの項目で判断。

⦿効果の判定方法:担当医が「著しい効果あり」、「効果あり」、「やや効果あり」、「効果なし」の4段階に分けて判断をおこなった。

≪注意≫東洋医学センター玉野雅裕先生がたの症例報告とは時期も専門も検証方法も異なるので、以下の項目は記載がありません。:主な症状・既往歴・家族歴・現病歴・西洋医学的所見・心電図・MRI・レントゲン・漢方医学的所見・治療経過

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介(djedjによるPixabayからの画像)

2.漢方薬「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」の服用効果と副作用

⦿治療効果

「著しい効果あり」 5人(3.1%)

「効果あり」        25人(15.4%)

「やや効果あり」    72人(44.4%)

「効果なし」        57人(35.2%)

効果不明      3人(1.9%)

「著しい効果あり」+「効果あり」+「やや効果あり」で102人(63.0%)に効果がありました。

⦿食欲の改善効果:

食欲不良    85人(55.6%) ⇒46人(30.1%)に減少

食欲ふつう 51人(33.3%) ⇒62人(40.5%)に増加

食欲良好 17人(11.1%)  ⇒45人(29.4%)に増加

食欲の改善についてみると、153人中74人(48.4%)に効果がありました。

⦿自覚的快適さの改善効果

気分が良い  3人(2.7%)  ⇒19人(17.0%)に増加

気分はふつう 58人(51.8%)  ⇒61人(54.5%)に増加

気分が悪い  51人(45.5%)  ⇒32人(28.5%)に減少

自覚的快適さについても、112人中41人(36.6%)の気分が改善しました。

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!(djedjによるPixabayからの画像)

⦿癌のステージ(*3)別治療効果:

前立腺癌 StageA 

「著しい効果あり」  0人 

「効果あり」          1人

「やや効果あり」    3人

「効果なし」          3人

前立腺癌 StageB

「著しい効果あり」  1人 

「効果あり」          1人

「やや効果あり」    1人

「効果なし」         0人

前立腺癌 StageC

「著しい効果あり」  0人 

「効果あり」          2人

「やや効果あり」    5人

「効果なし」         1人

前立腺癌 StageD

「著しい効果あり」  0人 

「効果あり」          6人

「やや効果あり」    11人

「効果なし」         8人

尿路上皮癌(*4) StageA

「著しい効果あり」  0人 

「効果あり」          1人

「やや効果あり」    4人

「効果なし」          1人

尿路上皮癌 StageB

「著しい効果あり」  1人 

「効果あり」           2人

「やや効果あり」     2人

「効果なし」           3人

尿路上皮癌 StageC

「著しい効果あり」  1人 

「効果あり」           3人

「やや効果あり」     5人

「効果なし」           1人

尿路上皮癌 StageD

「著しい効果あり」  0人 

「効果あり」          3人

「やや効果あり」    8人

「効果なし」          12人

『癌の病期(Stage)も癌の悪性度も、ともに治療効果に対して影響を与えていない』と黒田昌男先生は結論付けています。

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!(jacqueline macouによるPixabayからの画像)

⦿漢方薬「補中益気湯」の副作用について

副作用は、162人中12人(7.4%)に認められ、消化器系に関するものが多くみられた。しかし、同時に多くの薬剤を併用している症例が多く、因果関係が判然としないものが多かった非常に重症な副作用は認められなかった。』

*胃痛・みぞおちの痛み  2人

*胸やけ         2人

*おう吐         2人

*口内炎         1人

*食欲不振        1人

*肝機能障害       1人

*発疹          1人

*腰痛          1人

*不安感         1人

結論として、悪性腫瘍患者162人が「補中益気湯」を服用した結果、102人(63.0%)に治療効果がありました。また副作用が12人(7.4%)に現れましたが、命にかかわるような重症な副作用はありませんでした。

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!(djedjによるPixabayからの画像)

3.特に漢方医学による癌治療の副作用緩和を特徴としている医療機関

「試してみたい」「相談したい」と思われた方のために漢方治療も行う医療機関を調べました。インターネットで調べた情報ですので、漏れている医療機関もあるかもしれません。最新情報をご存じの方は、どうかお教えください。

*「大阪大学医学部附属病院 漢方内科」

https://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/departments/c_medicine.html

『当科では、様々な疾患を対象に、患者さんのQOL改善を目指し、診療を行ってまいりましたが、2019年10月より、がん患者さんを中心に診療を展開していくこととなりました。

がん治療に伴う手術、化学療法、放射線治療による身体症状やQOLの低下に対して、漢方治療で対応するだけでなく、当科が日本の基幹病院で初めて臨床研究を開始したがんケトン食療法も加えて、強力ながん支持療法を展開していきたいと思っております。

また、がん患者さんのQOL改善を目指し、新たに、週1回のみ鍼灸治療も、試験的に開始しております。』

神奈川県立がんセンター 漢方サポートセンター」

https://kcch.kanagawa-pho.jp/examination/kanpou.html

『ご挨拶:漢方サポートセンターは2014年4月に開設されました。がんの治療中の方に対して漢方による症状緩和・副作用の軽減を行うことを目的としています。』

*「がん研有明病院 漢方サポート科」

https://www.jfcr.or.jp/hospital/department/clinic/general/herbal_medicine/index.html

『現在、院内の患者さんのみ対象としております。』

*「近畿大学病院 がん患者に東洋医学(漢方治療・鍼灸治療)を応用」

https://www.med.kindai.ac.jp/diseases/dummy4.html

手術や放射線治療、抗がん剤治療、緩和医療など、がん治療のさまざまな場面で、漢方治療の応用が可能です。

 外科や婦人科の開腹手術では、術後に腸の動きが悪くなります。これに対しては、「大建中湯」が使われます。西洋薬と同じような感覚で、いわば腸管運動改善薬として、広く使われています。

 腹部の放射線治療は、腸への障害が避けられず、放射線性腸炎が副作用として起こる場合があります。これに「大建中湯」を応用することで、腸管の血流を改善する作用があり、これによる腸管運動改善、それがよい効果につながっていると考えられます。

 緩和医療では、痛みに対するモルヒネ投与は極めて有効ですが、副作用でひどい便秘の場合があります。このような場合に、通常の便秘薬と「大建中湯」を併用することで、違った作用からの改善が期待できます

 抗がん剤治療に伴う副作用はいろいろありますが、投与に伴う倦怠感や食欲不振に対して、前述の食欲を増す効果がある「六君子湯」を使います。ほかに漢方には「補剤(ほざい)」と呼ばれる胃腸機能を整えて元気にする薬剤が何種類かあり、患者さんの症状に合わせての使い分けをします。

女性の場合は、治療の必要性から、閉経前に卵巣をとったり、薬剤で卵巣機能を止めたり、意図的に閉経したのと同じ状態にする場合があります。更年期障害の治療に使う漢方が応用可能です。

 がん治療の患者さん全般に言えますが、治療や副作用に対する不安、再発への不安など、常に不安と隣り合わせの状態が続きます。そのため、不眠症状が現れる場合も多いのですが、漢方薬にも不安や不眠症状を改善する薬剤が何種類かあります。「抑肝散(よくかんさん)」は、もともと子どもの夜泣きや疳かんの虫に使われた薬剤で、ストレス緩和作用があります。

 なにより、患者さんの細かな症状に寄り添い対応できる漢方治療は、西洋医学だけでは対応しきれないすき間を埋め、患者さんの立場に立った医療を可能にする一番のメリットがあります。』

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!(hiroshi mackによるPixabayからの画像)

*「千葉県がんセンター 漢方外来」

https://www.pref.chiba.lg.jp/gan/shinryoka/kanpo/index.html

『当センターでは、平成21年4月より漢方外来を開設しています。

漢方外来ではこのように、従来の治療法では完全に治療することが難しい症状に対し漢方薬を用いた治療を行い、少しでも楽に過ごせるお手伝いができればと考えております具体的には「食欲がない」「むかむかがとれない」「体が冷えやすい」「体が重い」といった症状は、漢方の得意とする症状です。

漢方診療は、病気への診断や治療の方法が、現代医療とは違うため、現代医療に代わるものではありません。漢方診療は、現代医療を補助し、現代医療だけでは解決しにくい症状を治療することを目的としています。また、がん治療に耐えられるような体力をつけたい、がんと闘う力がほしいといったご希望にもお応えできればと思っております。

現在、千葉県がんセンターの患者さんを対象に、週1回の外来を開いておりますので、漢方薬による治療をご希望の患者さんは、それぞれの主治医にお伝えください。主治医より漢方外来の予約をお取りします。』

*「富山大学附属病院 がん和漢薬治療センター」

http://www.hosp.u-toyama.ac.jp/oncology/clinical/support/wakan/

『当院で行っているがん患者に対する漢方薬治療:

当院では、がんに対して化学療法や放射線治療を行っている患者さんの副作用を軽減し、積極的な治療を完遂することができるように漢方薬を処方しています。

また緩和ケアラウンドに参加して、化学療法や放射線治療目的で入院中の患者さんにも、必要に応じて漢方薬を主治医に提案させていただいています。

今後はこれらのがんの支持療法をより周知することに加え、がんと診断された時点で化学療法などを行う前に、体調のバランスを整えるコンディショニングや手術前後の体調管理、そして再発防止にむけても、積極的に漢方治療の併用を提案させていただきます。

*「名古屋市立大学病院 漢方医学センター」

https://w3hosp.med.nagoya-cu.ac.jp/section/central/kanpouigakucenter/

『令和2年3月1日より漢方医学センターが開設されました。西洋医学を担う大学病院ではゲノム治療や急速に進化する抗癌剤治療が中心であります。しかしご存知の通り未だに完全に治癒させることができる疾病は稀であり治療効果と共に多彩で強い副作用も深刻な問題となっています。

漢方とは古来中国で発生後日本や中国で発展を遂げてきた医学です。独特の伝統的思考過程にて診断、治療をしますが時に西洋医学で効果不十分な時に効果を発揮することも多いです。日本ではほとんどの開業医で採用している漢方ですが大学病院で導入することにより、よりきめ細かな治療と大学病院特有の漢方診療を提供いたします。

既存の治療で中々治療効果が出ない時、現在の西洋医学の範疇では治療法が十分に確立されておらずお困りの時はお気軽にご相談ください。

癌治療をうけていらっしゃるあなたやご家族が、より良い時間を過ごせるように、叶うことなら完治できるように、心からお祈りいたします。

なお来週11月17日のブログでは、日本全国の漢方外来が開設されている大学病院を紹介します。

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!

膀胱癌や前立腺癌などのがん治療で、食欲不振・全身倦怠感に苦しむ102人の患者さんを漢方薬で改善できた実例を紹介!(Y KによるPixabayからの画像)

謝辞:大阪大学医学博士 黒田医院院長の黒田昌男先生をはじめこの研究に携わった先生方、ご協力なさった患者さんや職員の皆さま等全ての皆様に感謝するとともに、漢方薬が高齢者の健康長寿によりいっそう役立ち、癌患者さんや認知症患者さんとご家族のみなさまがより良い時間を過ごせますよう、先生方の益々のご活躍・ご発展を祈念します。

注)

*1:「悪性腫瘍患者の愁訴改善に対する補中益気湯の効果」京都大学学術情報リポジトリ 泌尿紀要31巻1号173-177頁、1985年1月、黒田昌男、古武敏彦、園田孝夫、岡島英五郎、生駒文彦、中村隆幸、矢野久雄、桜井勗、水谷修太郎、線崎敦哉 chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/118372/1/31_173.pdf

*2:「パフォーマンスステータス:全身状態の指標の1つで、患者さんの日常生活の制限の程度を示します。」用語集 国立がん研究センター「がん情報サービス」https://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/modal/Performance_Status.html 

*3:「病期と悪性度:前立腺がんは、「どのくらい進行しているのか」(病期)と「どのくらい悪性であるか」(悪性度)によって分類されます。」前立腺がんWeb https://www.zenritsusengan.sanofi.co.jp/about_stage.html

*4:「尿路上皮がんとは:尿路上皮がんとは、腎臓の一部である腎盂から、尿管、膀胱、尿道へとつながる尿の通り道にできるがんです。」がん免疫.jp  https://www.immunooncology.jp/patient/uc/ch01

☆この論文の先生方の所属病院(1985年1月時点)

*黒田昌男・古武敏彦先生:大阪府立成人病センター泌尿器科

*園田孝夫先生:大阪大学医学部泌尿器科学教室

*前川正信先生:大阪市立大学医学部泌尿器科学教室

*岡島英五郎先生:奈良県立医科大学泌尿器科学教室

*大川順正先生:和歌山県立医科大学泌尿器科学教室

*生駒文彦先生:兵庫医科大学泌尿器科学教室

*栗田孝先生:近畿大学医学部泌尿器科学教室

*中村隆幸先生:大阪船員保険病院泌尿器科

*板谷宏彬先生:住友病院泌尿器科

*矢野久雄先生:大阪警察病院泌尿器科

*桜井勗先生:大阪厚生年金病院泌尿器科

*坂口洋先生:市立堺病院泌尿器科

*水谷修太郎先生:大阪労災病院泌尿器科

*新家俊明先生:和歌山労災病院泌尿器科

*線崎敦哉先生:紀南総合病院泌尿器科

以上

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