元気高齢者に介護助手として介護施設で働いて頂くと、「三方よし」になる結果を紹介します!
三重県では、平成27年度より県内の元気な高齢者に、介護老人保健施設で介護助手として活躍していただく「元気高齢者による介護助手モデル事業」が行われています。東京都健康長寿医療センター研究所の研究グループは、高齢者の介護助手を採用している三重県内の高齢者施設を対象に、高齢者が介護助手として高齢者介護施設で周辺業務を担う影響について調査。その結果、高齢者の介護助手ご自身の健康維持のみならず、介護職員の身体的・精神的負担感の軽減につながる可能性が示されました。これを紹介します。
対象は、2015年から2019年の間に三重県の「元気高齢者による介護助手モデル事業」プロジェクトに参加し、高齢者の介護助手を雇用した44の高齢者介護施設。アンケートを、施設管理者、介護職員(常勤・非常勤職員)、高齢者の介護助手それぞれに送付し、33の高齢者介護施設が調査に回答。施設管理者から30票、介護職員(常勤・非常勤職員)から844票、高齢者の介護助手から62票の質問票が返送されました。
調査の結果
- 非常に多くの介護職員が、高齢者の介護助手の雇用で、作業負荷の改善を実感
B. より多くの高齢者の介護助手が働く介護施設は、介護職員の平均的な感情的倦怠感(バーンアウト感情)*が低いことが判明
C. 高齢者の介護助手は、自分の仕事が施設利用者と介護職員の両方を助けることに貢献していると感じていたが、精神的な負担も感じていた
以上の点が判明しました。(*感情的倦怠感(バーンアウト感情):突然意欲や熱意を失ってしまう燃え尽きたような感情。数値が高いほど、その仕事に対するバーンアウト感情が高いことを示す)
「いくら元気と言っても、高齢者の方々で安全なのでしょうか?」と思われますか?ではこれから、あなたの疑問にお答えしましょう。
1.三重県の「介護助手導入実施マニュアル」から高齢者の介護助手の概要
- 年齢:あくまで元気な60~75歳くらい
- 業務内容:周辺業務のみで、身体介護はさせない、認知症対応もさせない
- 業務程度:無理をさせない、1日3時間程度、1週間に3日程度
2.介護職員が感じる高齢者の介護助手と働くメリット
- 業務量が軽減した 87.7%
- 介護業務の効率性が向上した 71.1%
- 気持ちにゆとりができた 66.7%
- 丁寧な介護ができるようになった 57.1%
- 専門職としての意識が向上 48.6%
- 残業時間が削減した 40.7%
3.介護職員が感じる高齢者の介護助手と働くデメリット
- 事故を起こさないかと気がかり 41.1%
- 業務の非効率が気がかり 18.7%
4.高齢者の介護助手が行った主な業務
- 配膳とテーブルの清掃 54.0%
- 部屋の掃除 50.8%
- ベットメイキング 50.8%
- フロアでの見守り 46.0%
- 利用者の話し相手 41.3%
5.高齢者の介護助手が感じる介護施設で働くメリット
- 施設利用者の役に立っている 96.9%
- 自分の健康増進に役立つ 95.3%
- 介護職員の役に立っている 93.8%
- 生きがいを感じる 90.6%
- 社会との繋がりを感じる 81.3%
- 社会に貢献している 79.7%
6.高齢者の介護助手が感じる介護施設で働くデメリット
- 身体的負担を感じる 32.8%
- 精神的負担を感じる 90.4%
いかがですか?あなたの不安は払拭できましたか?
元気高齢者の介護助手さんが働いてくださるのは、絵に描いたような「三方良し」ではありませんか?介護職員さんは仕事量が減るから大歓迎で、ご高齢の介護助手さんも生きがいややりがいを感じていらっしゃいます。介護職員さんに「気持ちにゆとり」があって、「丁寧な介護」をしてくださるなら、利用者さんも大歓迎のはず! しいて問題点を上げれば、介護助手さんの精神的負担感が強いので今後の対策が必要な点くらいでしょうか。
日本では介護福祉士の65.2%が3年以内に感情的倦怠感(バーンアウト感情)*を感じると言われています。各介護施設の高齢者の介護助手の人数と介護職員の平均倦怠感の比率を散布図で解析した結果、より多くの高齢者の介護助手がいる介護施設は、介護職員の平均の感情的倦怠感が低い傾向を示しました。
*感情的倦怠感(バーンアウト感情):突然意欲や熱意を失ってしまう燃え尽きたような感情。数値が高いほど、その仕事に対するバーンアウト感情が高いことを示す。
高齢者の介護助手のより大きな労働力は、介護職員の感情的倦怠感の低下と関連していることがわかります。この好ましい関連性の1つとして考えられる説明は、全体的な作業負荷の削減であり、作業効率の向上につながる可能性です。
2つめとして、介護職員は高齢者の介護助手から感情的なサポートを受けている可能性があります。高齢者の励ましやいたわりは、他の世代の抑うつ症状を軽減し、自尊心を高めることができます。高齢者の介護助手から受ける称賛や評価の効果が、介護職員の感情的倦怠感の軽減に役立っているのかもしれません。
2025年、団塊の世代が75歳以上になるこの年、推定25万人の介護福祉士が必要です。高齢者介護施設における介護職員の不足は、約34万人と推定されています。今でさえ、介護の現場は人手不足で苦しんでいます。
このような背景があるからこそ、「元気高齢者」の価値と能力が光り輝きます。内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成27年) によれば、「収入を伴う仕事をしたい・続けたい」と考える高齢者も増えています。
- 70-74歳 40.4%
- 75-79歳 26.9%
- 80歳以上 18.8%
また、就労は、身体機能の維持や認知症の予防にプラスになるという研究結果もあり、高齢者の健康づくり、生きがい、社会参加などの機会ともなります。その上、介護職員の燃え尽き症候群を防げたら、なんと素晴らしいことでしょう。
ではご一緒に「元気高齢者」を目指して、運動で健康と体力の維持に努めましょうか?!
☆Older assistant workers in intermediate care facilities, and their influence on the physical and mental burden of elderly care staff (老健施設で働く高齢介護助手が介護スタッフの身体的、精神的負担感に与える影響)https://bmchealthservres.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12913-021-07302-6
☆地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所 https://www.tmghig.jp/research/
☆三重県「介護助手導入支援事業について」https://www.pref.mie.lg.jp/FUKUSHI/HP/000228801.htm
以上