最終目標を考えつつ、介護に役立つ『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』を紹介します

最終目標を考えながらの介護に役立つ『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』を紹介します

最終目標を考えつつ介護に役立つ『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』を紹介します(endro lewaによるPixabayからの画像)

いろいろな介護の本を読んできましたが、医療関係者でない方も対象に、亡くなる前の症状や終末期について解説している本に初めて出合いました。この数ページを読んでおけば、最期の時に向けた心構えが出来そうです。また、どのような最期を迎えることが良いかを家族で話し合うこともできそうです。この本を紹介します。

『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』長尾和弘(ながお・かずひろ)・三好春樹(みよし・はるき)編・著、2022年4月発行、講談社、定価1,800円+税、ISBN978-4-06-514319-3

本の大きさは、縦23㎝、横18.5㎝、厚み1.2㎝。ページ数は、参考文献一覧や索引も含めて167ページです。

内容は、序章も含めて全8章に分かれ、必ずイラストや図表付きで解説されているので、とても分かりやすいです。文字も大きく、見出しや強調部分にオレンジ色が使われて、内容がパッと頭に飛び込んできます。

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最終目標を考えつつ介護に役立つ『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』を紹介します(BairynaによるPixabayからの画像)

例えば、第5章重大な疾患へのアセスメントの項で、パーキンソン病を見開き2ページで解説。右ページにはパーキンソン病の症状が解説され、左ページではパーキンソン病の方への歩行介助の方法がイラスト付きで解説されています。右ページの症状には、立っている姿のイラストが記載されていますが、特徴を良くとらえた姿に思わず、パーキンソン病で他界された恩師を思い出したほどです。

  • 序章 これだけは知っておきたい高齢者医療・・・心身の虚弱化/水分と歩行/普段との違い/救急車のよびかた/ゴールを見定める、等
  • 第1章 高齢者の体と病気の特徴・・・老年症候群/意識レベルの変動/多臓器に病気/合併症/薬の影響/環境の影響、等
  • 第2章 病気にならない生活づくり・・・生活本位/水分と食事/生活リズム/歩行・移動は大切/うつ病・うつ状態への対応、等
  • 第3章 日常の医療との関わりと予防・・・バイタルサイン/清潔の保持/口腔ケア/肺炎は要注意/転倒防止/介護事故の防止、等
  • 第4章 よく起こるトラブルと体調不良への対応法・・・脱水/発熱/嘔吐・下痢/打撲・骨折/便秘・下痢/動悸・息切れ/不眠、等
  • 第5章 重大な疾患へのアセスメント・・・脳血管障害/パーキンソン病/認知症/がん/糖尿病/慢性腎臓病/骨粗鬆症/難聴、等
  • 第6章 高齢者への薬物療法と減薬・・・①薬物療法の注意点(薬の有害事象、いつまで飲む?、慎重に使うべき薬、等)/②よくもらう薬の知識(降圧剤、糖尿病、睡眠薬、便秘薬、鎮痛・鎮静、抗認知症薬、等)
  • 第7章 終末期の入院や延命の判断・・・人はどう亡くなるか/いかに本人の希望に沿うか/知っておきたい選択の基準/延命治療と胃瘻など/在宅での療養と看取り/介護施設での看取り
    最終目標を考えながらの介護に役立つ『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』を紹介します

    最終目標を考えつつ介護に役立つ『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』を紹介します(Yutthana TanapunyoによるPixabayからの画像)

他の介護の本で見たことのなかった第7章 終末期の入院や延命の判断について、詳しくご紹介します。

☆終末期とは? 『多くの高齢者を看取った筆者(長尾和弘医師)の感覚では、突然亡くなる人は5%にすぎず、95%は回復が望めなくなってからも一定期間生き、やがて死に至ります。この期間が終末期です。(第7章 終末期の入院や延命の判断 150ページより引用)

終末期の身体機能と経過時間をグラフにした3パターンが描かれ、特徴が文章でも説明されます。

さらに、次ページでは「亡くなる1週間以内」に出現するおもな症状「亡くなる48時間以内」に出現するおもな症状が、見やすい表で示されます。これを父の最期の時に知っていれば、あんなに慌てなかったと感じます。

27年も在宅医療に取り組んでいらっしゃる長尾先生も記していらっしゃいますが、人が亡くなる様子を見る機会など今の日本人には殆どありません。両親の最期の時に初めて、人が死につつある状況に遭遇し慌てふためかないために、この表はとても役立つと思います。

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最終目標を考えつつ介護に役立つ『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』を紹介します(Rajesh BalouriaによるPixabayからの画像)

☆「平穏死」とは? 『「平穏死」とは、いわゆる延命治療を受けず、自然に穏やかにあの世へ旅立っていくことです末期がん、臓器不全、認知症や老衰の後期は、過剰な医療を行わず、痛みのコントロールさえ行えば平穏死できます』(第7章 終末期の入院や延命の判断 152ページより引用)

この一文が衝撃的でした!

末期がんでも退院し、痛みのコントロールを在宅医療を行っているかかりつけ医と24時間・365日対応の訪問看護ステーションにお願いすれば、自宅での看取りができるなんて知りませんでした。入院したら、自宅ヘは戻れないと考えていました。

あの世に旅立つためなら、痛み以外の医療はもう不要です。管や各種モニターに繋がれた状態でなくても大丈夫。病院の装置を自宅に持ち込めないと考えるから退院なんて考えもしませんが、痛みのコントロール以外の医療が不要と考えれば可能です。

「平穏死」を知らなかったことがとても残念です。父は自宅に帰りたがっていましたから・・・

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最終目標を考えつつ介護に役立つ『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』を紹介します(hartono subagioによるPixabayからの画像)

そして第7章 終末期の入院や延命の判断の156ページからいろいろな判断の基準となる情報が提供されます。

  • 延命治療と胃瘻など・・・代表的な延命治療の紹介と、胃瘻の長所・短所の解説(156~157ページ)
  • 在宅での療養と看取り・・・在宅で看取るために必要な条件についての解説(158~159ページ)
  • 介護施設での看取り・・・入居時のチェック事項と介護施設で「平穏死」を実現するための条件を解説(160~161ページ)

介護施設での看取りの項を読んで初めて知りましたが、「終末期には病院へ送る」と規定している介護施設もあるそうです。このような規定があれば、老衰でも「平穏死」は望めません。つまり、介護施設への入居時には最期の時を考えた施設規約のチェックが必要です。

ですから第7章 終末期の入院や延命の判断(150~161ページ)だけでもご一読をお勧めします。

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最終目標を考えつつ介護に役立つ『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』を紹介します(夏 沐沐によるPixabayからの画像)

☆『完全図解 介護に必要な医療と薬の全知識』https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000275964

☆長尾和弘 オフィシャルサイト http://www.drnagao.com/

☆三好春樹 介護界のシーラカンス。「生活リハビリ講座」など全国のケアの情報を発信をしています。思想的発言などプライベートは「HarukiMiyoshi」のアカウントで。https://www.facebook.com/haruki344

以上

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